市民参加のワークショップについて
よく市民との「協働」だとか行政関係者にはお気軽にその言葉を使用される人がいます。私はなかなか実際にはそうはならないと考える1人です。
昔何かの本で読みましたが、アメリカのある地方都市の都市計画の話でした。市長が地元ケーブルテレビのスタジオに居まして、市の提唱する都市計画や街路整備計画について模型で説明しています。
それを見ていた市民からテレビ局に電話があり、市長と市民との対話が始まります。市長はファイバースコープのようなものを取り出し、模型を撮影します。「あなたの家からはこういう具合に道路は見えるんです。」と。
そのやりとりは1980年代のお話であったようです。ここまでやるのかというのが正直な感想。市民参加が徹底していますね。今日本でも流行している「ワークショップ」。お手軽に市民の意見を集約する手法としてまちづくりのいろんな場所で活躍していますね。
しかし参加メンバーが最初から行政側の都合の良い市民ばかりであったり、計画に反対する市民の参加がなかったりすれば、いくらワークショップをしたところで、「市民参加」とは言えないのです。セラピーか「形式的参加機会増大」の段階でありまやかしです。
ワークショップの元祖はアメリカの環境デザイナーであったローレンス・ハルプリンと言われています。その手法は1960年代後半からアメリカの都市再開発や地域開発に多用されてきました。
アメリカでも最初は都市部のスラム街は「スラム・クリアランス」と言って、スラムの住宅を強引に打ち壊し清潔な公営住宅を建設していました。しかしいくらそれをしてもスラムはなくなりませんでした。
そこでまちづくりのプランナーたちは、英語も話せない、所得水準も低く、教育水準も低い人たちを市民として扱い、市民参加でまちづくりに参加していただくように方針を転換したそうです。そのなかの手法の1つが「ワークショップ」」でありました。
アメリカのボルチモア市で有名な話で「1ドルハウス」があります。市がスラム街に公営住宅を建設し、スラムの住民を低家賃の1ドルで住んでもらうことにしました。その代り住宅を清潔にし,周りの街路も清掃し、清潔にすることを市民と市が何度も話し合い合意したそうです。それで「1ドルハウス」は成功しました。
後にイナハーバーの再開発事例を引き込むことになり、ボルチモア市は世界的に有名になりました。
それにひきかえ高知市の行った「かるぽーと」のワークショップは極めてお粗末なものでした。最初からコンサートなどで興業している興業会社を排除し、文化団体の一部の市民だけで高知市社会教育課が行ったワークショップの結果、巨大な「使い勝手の悪い」文化施設が出来上がりました。
新堀川の道路計画ですが、本当に市民が参加した「ワークショップ」をしたのでしょうか?市民参加は時間がかかり労力も居るものです。しかしひとたび市民と行政が合意形成すれば「1ドルハウス」のように成功するのです。
日本の場合は公共事業は、「単年度型」の「予算消化事業」になりがちです。ですので市民の意見を「聞いたふりをして」強引に事を進め、行政と市民とが深刻な対立をしてしまうのです。
しかし最近国側は市民と直接対話する動きをしています。環境保護や自然工法の採用、事業計画反対派も加えたワークショップの実施まで行っています。ですので、新堀川や「ぷらっとこうち」での高知県庁の対応を観察していますと実に強権的で、市民を軽視しているのか一層わかりますね。
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