都市計画道路「はりまや橋ー一宮線」説明会
7月7日、七夕ですが、午後7時から新堀小学校内の「コミュニティホール」にて、高知県高知駅周辺都市整備事務所主催の都市計画道路「はりまや橋ー一宮線」説明会が行われました。町内の皆さまへというご案内でしたので、周辺の1県民として傍聴に行きました。
事前に該当町内に配布されていました文面では「地域の皆さまとワークショップにより貴重な意見をいただきました。」。専門家で構成する「生態系検討委員会のもと、有識者で構成する検討会で検討を加え計画しております。」とのことでした。
2002年4月(平成14年)に説明会を実施、その内容に基づき工事をしているとと。その後4年経過し、再度道路計画の詳細な説明、関連工事の電柱地中化工事と今後の工事についての説明会でした。
説明会は定刻の午後7時から始まりました。まず驚いたのは市民を対象とした説明会であるのに行政関係者の参加者の多さ。高知県土木部都市計画課荒川辰雄課長(8日付にて国交省都市整備審議官に転勤)、西岡栄喜課長補佐、野々村毅課長補佐など都市計画課の課員の殆どが出席。
工事実務担当である高知駅周辺都市整備事務所横山芳正所長、岩崎昇次長、など多数の所員が来られていました。
高知市側からは都市整備部の高知駅周辺整備の担当課長と、まちづくり推進課の課員が出席されていました。第一コンサルタントの出席者が2名いましたので、市民対象の説明会であるのに行政側関係者が39名いました。
会場前列が荒川都市計画課長と横山高知駅周辺都市整備事務所所長など幹部職員が着席。市民側から見て右側が県関係者とコンサルタント。左側が高知市役所関係者と「コの字」型の机の配置。参加市民はと言いますと十分な告知でもないのに(会場付近の案内図も何もない状態)で50人が集まりました。
説明会は司会を横山芳正高知駅周辺都市整備事務所長がされました。出席者の行政関係者を1人1人紹介していくだけで10分間の時間が経過しました。
次に県道「はりまや町ー一宮線」(はりまや工区)整備計画について、高知駅周辺整備事務所の工事班長坂田章氏が、配布された資料を読み上げて説明しました。説明がひととうり終わるまでに30分が経過していました。
説明が終わるや否や、早速年配の質問者がしどろもどろの口調で質問をしていました。要領を得ず、ただただ時間が空費されます。質問内容が整理されていないから、回答も要領を得ず、時間だけが空費します。
突然「おんちゃんやめや!」との声が。「やかましい!」と応酬。質問者はマイクを離さず「総会屋」状態。茶番のやりとりでしたが、司会者の横山所長は仕切る様子もありません。
ようやくその質問者が30分時間を空費。説明時間と1時間時間が経過していました。
最初は前回の市民を対象にした説明会にはなかった行政側としては「新機軸」である「電柱地中化」工事についての質疑応答時間でした。
説明では地中化の目的は都市景観の向上と、都市災害の防止とされ、地震などの災害時に被害が軽減されるのが電線共同溝の整備だとの説明。
誰もこの件で質問者がいませんでしたので私が質問しました。
「電柱地中化工事が災害に役立つという説明はおかしいのではありませんか?先般の新潟中越地震では電柱地中化した都市では被害が大きく復旧が大幅に遅れたと聞いています。ましてこの地区は軟弱地盤。地震時地面が液状化する可能性もあります。電線共同溝が災害に強いとはいえないのではないのでしょういか?」
(参考)
すると回答がありません。しばらく県側は沈黙してこう言いました。
「一般論では電柱が倒れて道路を塞ぐという危険性が回避されます・」という説明でした。
私は「この地域での電柱地中化工事ですから当然地盤や地震時の液状化の可能性は調査していないのでしょうか?高知県庁に南海地震対策をされている危機管理課がありますが、データは持っていないのでしょうか?」と再度質問しましたが明確な回答はありませんでした。
驚くべくずさんな道路計画
その後「総会屋」状態の年配の質問者を除く質問がいくつか会場から出ました。まず道路計画の根拠となっている交通量のことです。
「調査が平成2年10年と、古い年次であり、道路の完成予定が平成22年。どのように交通量を予測したのか?」という質問がありました。
これに対しても説明は道路交通容量が39200台(1日)と予測されるので、4車線にしないと対応できないとの説明。
しかしこのデータは古いし、根拠不明。イオンも北部環状線もない状態の調査ではないだろうか?その間にとでん西武百貨店も、中心市街地から映画館も撤退し、想定の中心市街地へ郊外からの車の流入量は当然少なくなっていると思います。
次の質問は事業費110億円の内訳です。
「説明では半額が国の補助になりますね。県の予算はどれくらい使用するのでしょうか?」との説明。
何%とかいう抽象的な回答に終始しました。「一体いくらの県予算か具体的な数字を表示していただきたい。」との質問者。
ようやく「県が49億円。高知市が8億円です。」との答えが。
質問者「それは借金で賄うのですね?」「起債です。」との回答。
次の質問者は「この道路の維持費は年間いくらかかるのでしょうか?高知市のかるぽーとは建設費が200億円。年間維持費は4億円と言われています。それに起債の返済がありますね。いくらですか?」
それに対して県側の回答は「今ここにはデータがないとの」こと。
「4車線道路の場合の維持管理費用は1メートルあたり幾らとのデータはあるはずですよ。」と再質問。
県の回答は「各土木事務所にはあるので、いまここでは回答できませんが後日回答します。」と言われていました。
次の質問者は新堀川の歴史資源の質問でした。
「資料では新堀川の階段護岸は由来不詳と書いてあります。またこの階段護岸はどのようにして保存されるのでしょうか?」
それに対して県側の答えはこうでした。
「高知市の教育委員会などに聞きました。階段護岸につきましては、横堀公園付近に移設も考えましたが、子供達の安全も考え断念しました。工事ですが、階段のまま盛り土し、地下に保存します。そして道路の歩道に階段護岸はこうですと書いた立て札を立てます。」
それに対して質問をされた年配の男性はこういわれました。
「由来不詳とは調査不足です。この階段護岸は江戸時代に、物部川上流で伐採した材木を船入川を利用し浦戸湾にいかだで運びました。
そして江ノ口川を経由して新堀川に来まして、材木を荷揚げしました。干潮時でも満潮時でも材木を陸揚げできるように階段護岸をこしらえたのです。そしてその岸は今は新堀小学校になっていますが、大工などが多数住むようになりましたので材木町と言われているのです。
私達の先祖のそうした由来も知らず、道路に埋め込むなど歴史を大事にしていない計画であると思います。必要のない道路であると思います。東京の日本橋は高速道の撤去を計画しています。韓国のソウル市では実際に道路を撤去し川を復元しました。もっと高知も歴史資源を大事にしなければなりません。」との発言でした。
次の発言者は新堀川の自然生態系に関する質問でした。
「最近の新堀川ではアカメの幼魚が発見されています。絶滅危惧種A類の魚で、宮崎と高知県の四万十川が主な生息地と言われていました。そのアカメが浦戸湾最深部、しかも高知市中心街に近い新堀川で生息していました。
アカメは餌になるコアマモがないと生息できません。今まさに工事をしようとしている新堀川にコアマモが多く生息しています。ここはアカメの幼魚たちの保育園なのです。これに工事で蓋をすればコアマモは生息できません。アカメも生息できません。そのあたりはどうなのでしょうか?」
県側の回答です。「工事は慎重に行います。現在コアマモの生息している場所は暗渠になるため、現在高知市が駐車場にしている箇所を開口し、オープンスペースをこしらえ干潟の再構築をします。」との説明でした。
後で会場におられた高知大学理学部の町田吉彦教授に聞きますと「干潟の再構築は不可能。コアマモの移設も難しい。工事が計画どうりに進展しますとアカメもシオマネキも新堀川では生息できません。」と言われました。
事業説明のなかで「専門家の意見を聞きながら検討します」とありました。質問者が「専門家は誰ですか?」と聞きますと、県側は「今の時点ではお答えできません」とのことでした。
そうこうしているうちに予定の2時間が経過してしまいました。司会の横山所長が閉会を宣言しようとしていました。
私は「後日回答されますと言うことですが、具体的な曜日は何時でしょうか?次回説明会の予定を今幹部の皆さんが揃っていますので決めてください。」と申し上げました。
そうしますと「今回の形式の説明会はない。聞きたければ個別に質問に答えます」というのが高知県側の回答でした。
問題点を整理します。
1)事業計画の基本となる交通量調査の根拠が不明であり、とても信頼に値する根拠になっていません。
2)付帯工事である電線共同溝工事の地震時の安全性が疑問です。この地域での地盤のデータを何も調査していない事実が判明しました。」
3)事業予算について。県負担が半分でそれも起債。子孫に借金を残す形に。明確な事業計画の必要性の説明が薄弱。また年間の維持管理費用もこの道路計画では不明と言う考えられない回答には驚きです。
4)ぞんざいな歴史資源の取扱い。新堀川の階段護岸の由来の調査も不十分。であるから平気で「生き埋め」にし、道路の上に説明文を掲示する発想になっています。
5)自然生態系保護と道路計画は共存できません。
4車線の道路はほとんど新堀川の上を暗渠にします。最近絶滅危惧種のアカメやシオマネキの生育が新堀川で確認されるほど生態系が回復しています。
現在の工法での道路工事によりコアマモは絶滅します。移設は困難です。自然生態系を破壊した上に道路が走る形になります。
6)県側の一方的な説明会は今回で終わりのようです。問題点、質問点に関しましては「後日」回答ということで、具体的日時の指定はしませんでした。
住民参加の梯子段では「一方的情報伝達」の段階で極めて低い段階でありました。
荒川辰雄都市計画課長は、来週から霞ヶ関の本庁勤務だそうですが、市民ときちんと向き合って事業計画を説明できるような国家公務員になられていただきたいですね。
聞きたいことも十分に聞けず、積み残した質問項目にも2度と市民説明会を高知県側はしないそうですので、釈然としない説明会でありましたことをご報告申し上げます。
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