焼き跡から生まれた日本国憲法
昨日(2月10日放送)のNHK・ETV特集「焼き跡から生まれた憲法草案」は素晴らしい番組構成でした。なにかと不祥事で批判されているNHKですが、きちんとした番組を作成する能力は極めて高いですね。
従来は日本国憲法はGHQが日本政府の憲法草案を一蹴し、短期間で作成し、日本に結果的に「押し付けた」占領軍憲法である。よって「日本民族の自主憲法を制定しないと国際社会に通用しない、時代に適合していない」と安倍首相を筆頭に改憲勢力は言われている。
(日本国憲法公布式典。皇室をはじめ全国民が祝賀しました)
番組を見ますとなるほど「結果的に」そういう一面も当時の情勢からはあったでしょう。ではなぜGHQが短期間に日本国憲法の草案を作りえていたのかが今までわかりませんでした。
番組では在野の憲法作成グループを丹念に取材されています。その中心は鈴木安蔵氏。ジャーナリストや政党人が党派を超えて憲法を研究されていました。かつては大正デモクラッシーの指導者吉野作造氏との交流もあったそうです。
鈴木氏の取材は高知へも来られ、高齢となった自由民権運動の担い手達から植木枝盛の憲法草案の影響も受けたようです。当時の自由民権運動はスペンサーやルソーなどのイギリスフランスの人権思想に影響されていたようです。アメリカの独立運動思想からも影響をうけていました。
そのあたり番組では郷土史家の公文豪さんが解説されていました。
またグループの森戸辰雄氏は第一次世界大戦敗戦後のドイツに滞在した経験があり、当時最も民主的な憲法といわれていたドイツの「ワイマール憲法」に大変詳しかった人物もおられたことも大きいです。
GHQは敗戦直後の日本にきちんとした人権思想の裏づけと民主主義的思想のもとに作成された憲法草案に驚き、すぐさま取り入れたそうです。官製の日本政府の憲法草案が旧大日本帝国憲法と代わり映えのしない封建的な憲法案だったため、却下し、結果的にGHQ草案の憲法草案を政府に認めさせました。
でもその殆どの日本国憲法草案は日本人が作成したものでした。ようやく疑問が解消しました。日本国憲法26条の「生存権」もあとから国会議員になった森戸辰雄が国会で修正したとの事実も明らかになりました。
新生日本の出発点となった日本国憲法。今年は発布60年。
改憲論の粗雑さもおかしいと思いますね。デマとは言いませんが全部そのあたりの歴史的な事実を伝えるべきです、そのうえでどういう理由で改憲するのかを明示すべきでしょう。
また護憲勢力といわれる一部の政治勢力の粗雑さも嫌ですね。自分達の党派が憲法を守ってきたのだと言います。これもデマではありませんが、歴史的な事実を殆ど伝えない政治的に偏った護憲運動ですので国民的な共感は得られません。国民は馬鹿ではないのです。
日本国憲法を命がけて作成した日本人達がいたことを誇りに思います。
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コメント
ぜんこさんコメントありがとうございます。当時のアメリカの凄いのは民主的な憲法をこしらえるリベラルなスタッフがおると思えば、A級戦犯岸信介氏を工作資金つきで保釈する勢力もいたということです。
吉田茂首相の対抗馬で戦犯岸信介氏を東條英樹氏ら7人のA級戦犯が処刑された翌日に保釈していますから。アメリカは凄い。
それから言いますとイラク戦争など本当に戦略もなく、レベルの低い国にアメリカは成り下がりましたね。
投稿: けんちゃん | 2007.02.11 18:17
憲法を作って日本に与えてくれたアメリカさんに
感謝しないといけないですね。
投稿: ぜんこ | 2007.02.11 17:53