7月6日の記事が入れ替わっていました。
西村 今月のゲストは、このたび旭のマル二敷地内で高知の特産品を販売する店舗を開設された松田高政さんです。松田さんには以前「けんちゃんのどこでもコミュニティ」時代に出演いただきました。当時は地域コンサルタントで各地域の「あるもの探し」をされ、地域を元気にされる活動をされておられました。
現在の松田さんは地域コンサルタント時代に培かられた能力を活かし、店舗販売などを展開されながら高知を元気にされようとしています。こうち暮らしの楽校ブログも開設されています。
今回のテーマは「あるもの探し・あるもの磨きによる地域(まち)づくり」です。
以前にもお聞きしたかもしれませんが、「あるもの探し」とはどういうことなのでしょうか?過疎高齢化、経済の低迷が続きますと「ないものねだり」ばかりするようになるのですが・・・
松田 あるもの探しというのは、活力ある地域づくりのために、地域を調べる手法のことで、基本的には、地元の人が主体となって、地域外の人の視点や助言を得ながら、普段の暮らしのなかにある当たり前にあるものを学びます。
この当たり前にあるものとは、3つの意味合いがあって、まず「ここにしかないもの」、そして、「どこにでもあるもの」、最後に、「困っているもの・余っているもの・捨てているものなど地域のマイナス面」なども調べます。
よく地域資源調査とか宝探しとかと同じにされますが、根本的に違う部分があって、資源や宝というのはすでに調べる前からそのようなフィルターを無意識にかけて地域を見てしまいます。あるもの探しは地域にあるものすべてを対象としていますので、その辺に生えている草や何気ない風景も地域にあるものとして理由やそこにある意味をよく理解しようとして見ます。
ですので、どんなに過疎化・高齢化が進んでいたり、経済が低迷していたとしても、何もないといわれる地域は絶対にないということですし、地域にあるものを活用することで、どんなとこでも必ずお金がかからず地元の人たちですぐにでもできることはいくらでもあるということなのです。
それを頭の中で理解するのではなくて、実際に地域を歩いて見聞きし、体で感じることで地域づくりのアイディアが自然とでてきます。
西村 松田さんは「あるもの探しとは「地元に学ぶ地元学の調査手法」で、地元を調べる第一歩の作業です具体的な事例があればご紹介いただけませんでしょうか?

松田 地域にある食べ物を活かして観光で成功した例は、佐賀町のカツオのたたきづくり体験です。平成12年に県の事業の一環ではじめてお客さんを呼んでやりましたが、一番最初は、この町には新鮮なカツオがあるが、食べる場所がないということで、場所は漁港の広場。食器や道具なども各自家からの持ち寄りで、水道もないのでポリタンクに水を入れて運びいれて手を洗ったりしました。
いままで何もなかった漁港が、地元の人の熱意と地域にあるものを集めることで、なんでもできるということがよくわかりました。
いまでは年間何千人もの修学旅行生や観光客が訪れ、幡多地域の観光にはなくてはならない存在になっています。

西村 高知の地方の地域では情報通信分野でも遅れをとっています。光回線は高知市周辺です。ADSLも県全体を見ますと全域には普及していません。情報化の恩恵を受けていない地域については何か方策はあるのでしょうか?
松田 たしかに、今の時代にネットの環境が整っていないというのは不便ですし、不利な面はありますが、それ以前に「地域の情報を自分たちで発信しているか、また、地域外の情報を本気で取りにいっているか」疑問があります。
これまで、HPやブログなどを通じて積極的に情報を発信していて、次は映像や音を発信したいというレベルにまでいっているのであれば何らか回線を引っ張る方法を考えなければなりませんが、それ以前にネットを使っている人の割合やその度合いも低いのであれば、生活やビジネスで欠かせないツールになるよう使い方の講習など普及・啓発が先だと思います。
私の村はほとんどの人がインターネットを使っていて、今の回線の環境では不便で仕方がないという人が多数を占めているという声を上げれば、行政やNTTもきっと動いてくれるはずです。そのためにはすそ野を広げ、住民の要望として下からの突き上げがやっぱり必要だと思います。
西村 松田さんはあるもの探しの活動のなかで「地元に学び地元を楽しむ人づくりへ」と言うことを提唱されています。この手法はどの地域でも活用できますか?実際に松田さんが行いました手法で実行された事例があればご紹介下さい。

松田 やっぱり、元気な地域には、地元が好きで前向きに暮らしを楽しんでいる人が多いです。ですので、地域のあるもの探しをするときは、マイナス面ばかりに目を向けるのではなくて、地域の良い面を探して自分の住んでいるところを好きになってくださいといつも言っています。
まあ、自分が言わなくても、あるもの探しをすることを通じて、普段話をしない人と触れ合ったり、思わぬ発見もあったりして、気持ちも後ろ向きだった人も前向きになります。
最近の事例では、地域づくりの研修に呼ばれて、香美市土佐山田町にある平山地区を地元の住民と行政職員と一緒になって調べましたが、はじめは地元の人の多くが、過疎化高齢化を理由にとても後ろ向きで、廃校となった小学校の活用についいても消極的でした。
でも、いろんな人が地域を訪れ、おじいちゃん・おばあちゃんがつくっているものを評価してくれたり、実際に小学校を使って研修生を宿泊させ、料理も提供するなどしたら、すっかり自信をつけたみたいで、さっそくその年に必要最小限の改修を済ませ、先日宿泊施設として運営をスタートしました。
いくらその土地に活用できるものがあっても、人の気持ちが後ろ向きであれば、ちっとも前に進みません。ですので、地元を調べることでその土地を好きになり、そこで自分たちの暮らしをどう楽しむのか考えることを通じて、前向きに行動してみようとするきっかけになればと思って活動しています。
西村 地域へ入られる場合反発などはありましたか?「おれたちは地域のことは知り尽くしている。よそ者に何が分かる」とかは言われませんでしたか?
松田 60歳以上はそんな声はちらほら聞こえましたが、50歳代から下になると意外と地元のことは詳しいと言い切れない人がほとんどですね。世代間のコミュニケーションがとれていない証拠です。
ですから、ほとんどの人は意外と地域のことを知らないと、この際だから改めて地域のことを知ろうと意欲を持ってのぞんでくれます。
西村「お金もない」「リーダーもいない」「若い人もいない」「やる気もない」地域が実際の話多いのではないのでしょうか?コンサルタントや行政やNPOの自己満足ではなくて松田さんが考える地域おこしの成功とはどのようなイメージなのでしょうか?

松田「お金もない」「リーダーもいない」「若い人もいない」というのは、山間部に行くと大半ですが、たまに「やる気もない」状態で依頼をしてくる地域もあります。その時は、難しい反面とってもやりがいがある仕事として燃えますね。
ほとんどの場合は地元に熱意があって、それをどう進めるかノウハウがないだけですが、熱意がないとなると困難さは格段にアップします。その時は人の気持ちを変えることに力点を置きますので、やりがいはひとしおです。
2年前に依頼を受けた佐賀町の北部地域はまさにその典型でした。役場の人から、ハード整備しか望んでいない地域なので、ソフト事業は難しい地域ですと。
この地域の人の意識が変われば、他の地域にも口コミで宣伝しますと役場に言われて燃えました。
結果的にその地域の意識は変わり、2カ月に1回の頻度で地域のイベントを行うようになりました。活動としては地味ですが、人の意識や地域としての取り組みが前向きになるという結果はやっていてうれしい限りでです。

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