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2007.09.20

「吉田茂とその時代」を読んで

Yoshidashonmm
 戦後の宰相吉田茂氏の孫である麻生太郎氏が自民党総裁選挙へ出馬しているので、「吉田茂とその時代」(ジョン・ダワー著 大坪憲二訳 TBSブルタ二ア)を読みました。日本文化を研究していた米国人ですが冷静で辛辣に分析していました。

 「とても新生日本を代表する人物ではない。保守的過ぎる。」というのは当時の論評。本来鳩山一郎氏が担うべき役目を67歳の吉田茂氏が「代役」で努めたのが始まりでした。当時吉田茂氏は67歳であり、戦後日本を困難な状況で再建する役目を果たす上では年寄りで保守反動の頑固者という評価であったようです。

 「ナチスやファシズムは下品。あんなのと日本の天皇制が同盟するなど考えられない。品位が落ちてしまう」

「国家の拡張と安全はアジアと太平洋における支配を欧米大国との同盟によって保障されるべき。」

「ドイツは軍事大国といえど1次大戦で海外植民地も失い傷が癒えていない。もし英米と戦争したら必ず負けるだろう。日本が同盟するなら英米である。それが日本の国益だ」

 戦前と戦争中、吉田茂はそう発言し、結局憲兵隊に逮捕され45日間拘置されました。その「反戦」経歴が保守反動派にもかかわらず終戦後の日本の1番大事な時期に、そのキャリアが活用されました。

 筆者は言っています。「吉田モデルは、昔はロシアを想定した日英同盟。戦後はソ連を想定した日米同盟の2国間同盟が主体である。」

「吉田は反共主義者。治安維持法の廃止に反対してGHQのひんしゅくもかっていた。」

 吉田茂の時代は「経済の非軍事化と社会の民主化」から「日米経済協力からアメリカ経済と東南アジア経済との統合」されていく時代であり、日本が経済発展していく基礎をこしらえました。

 尊皇主義者で反共主義者。日本の覇権は英米国との同盟でというのが吉田茂の信条。決して民主的で人権主義者でリベラルな人物ではないようです。

 吉田茂の真骨頂は「再軍備問題」でした。当初アメリカは日本を非軍事国家にするため旧日本軍組織を解体戦犯追及を行っていました。しかし1949年の中国革命、1950年の朝鮮戦争の勃発で方針を転換。日本を反共防波堤にすべく「日本を再軍備」化を吉田に強要します。

 吉田はとりあえず7万5千人規模の警察予備隊をこしらえます。当時アメリカの要求は30万規模の陸軍の再編でした。「人だけ集めればよいのだ。武器は全部アメリカが供与するから」というアメリカの強固な要求。

 吉田茂は、それでは旧軍が復活してしまうし、30万も軍隊を作れば、武器はアメリカが供与するにしても朝鮮戦争に10万人派兵される。そうなると近隣アジア諸国はいくら国連軍の要望とはいえ日本軍が復活したと恐怖心が再発するそれは駄目だ。

 せっかく講和条約を締結しようとして国際社会へ復帰している最中だし。中国革命で中国市場を日本は失った。東南アジアの市場を確保するには、軍事力の膨張はいくらアメリカの要望でも駄目だ。まずは経済の再建が第1。その代り占領後もアメリカには駐留してもらう。

 当時の首相が小泉純一郎や安倍晋三であればアメリカのいいなりになり、30万人自衛隊をこしらえたことでしょう。でもそうすれば国内の左翼勢力が増長し、日本は分裂気味になること、また旧軍人勢力が巻き返し治安が不安定になることを一番吉田茂は心配していたようです。

 サンフランシスコ講和条約と日米安全保障条約はこういう事情で吉田茂により締結されました。吉田は日本国憲法を「活用」し、「日本は交戦権を放棄している」とアメリカに説明し、冷戦戦略に日本を組み込もうとする軍事優先主義者のアメリカ政府閣僚をしぶしぶ納得させたとか。

 歴史は吉田茂の言うとうりになりました。吉田の優秀な弟子の池田勇人首相、佐藤栄作首相も、吉田の「戦略を」踏襲し経済優先の日本外交を貫き、高度経済成長を経て日本は経済大国になりました。東京五輪も大阪万博も大成功したこともありますし。軽軍備・経済優先政策の大成功事例でした。

 シビアなアメリカ人の目によって吉田政治の本質が理解できたように思います。
安倍前総理の言うように「戦後レジーム」はまさに吉田茂氏によってつくられました。安倍晋三氏ごときが、壊せるほどやわなものではありません。安倍氏は結局「言葉の遊びで」自滅しましたし。恐るべき吉田茂ですね。

Yoshidaasouhon
 麻生氏はちゃんとそのことを祖父から学んでいるのでしょうか。言動や著作を読みましてもあまりに「軽すぎる」」とは思いますが・・・サブカルチャーに理解を示す老獪な政治屋だけでは祖父には追いつきません。

(サンフランシスコ講和条約締結前後のシビアな状況は老獪な吉田茂氏だからやりきれたのでしょう。安倍晋三氏では到底無理だったと思いますね。日本の戦後の経済成長と平和はなんだかんだいっても吉田茂の功績は大ですね。)

Skowazixyooyaku

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