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2007.09.16

ごめん・なはり線の土佐電鉄直通運転のメリットは

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西村 今月のゲストは筑波大学大学院生の野本靖さんです。野本さんは香南市夜須町の出身です。大学では都市計画を勉強され、漁村の研究もされています。鉄道や自転車に興味をもたれています。
 ブログ「今日も自転車は走る」やサイト「土佐の高知の鉄道」なども開設されています。自転車の効用や鉄道や路面電車に大変興味を持たれています。

 今回のテーマは「ごめん・なはり線の土佐電鉄直通運転のメリットは」ということでお話を伺います。

 現在は、高知市から奈半利へ行く場合は、JR高知駅まで行き、JR四国経由でごめんまで行き、そこから先はとさくろしお鉄道で奈半利まで行くことになります。直通運転されています。野本さんは高知市街を走る土佐電鉄の路面電車がそのまま奈半利まで行く。奈半利から高知市街の路面電車へ走れば良いと言われています。
どのようなメリットがありますか?
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(ごめんなはり線 やす駅付近)

野本 まず最初に、乗り換えなしで高知の中心市街地とを結べることです。現在では、土讃線高知駅まで乗り入れていますが、そこから中心市街地に行く場合、路面電車に乗り換えるか徒歩で行くかでやや不便です。県庁方面に行く場合は、高知駅―枡形便があるものの本数が少ないので、はりまや橋で乗り換える必要があります。運賃も高知駅までの運賃と路面電車の市内区間190円が加わり割高につきます。

 それが、後免町から土佐電鉄線に直通となると乗り換えなしで中心市街地に行けます。市街地では、こまめに停まるので、降りたら目的地は目の前と、大変利便性は上がります。知寄町から鏡川橋までは、各駅にとまるわけですから電停を下りたら目的のお店はすぐ目の前ということを実現できます。

 2番目にごめんなはり線沿線から高知市街への到達時間も短縮します。現在、後免駅から高知駅までは、普通列車で最低でも17分、行き違い待ちがあると25分程度はかかります。そこから路面電車に乗り換えると、はりまや橋まで最低でも10分程度はかかります。そうすると、後免からはりまや橋まで約35分ということになります。一方、土電電車は現行でも、後免町~はりまや橋を35分で結んでいます。
知寄町以東の郊外区間を高速化改良したりして急行運転ができるようにすれば、15~20分で結ぶことが可能になります。およそ15分の短縮となります。

 次に、ごめんなはり線の運行本数を増やすことが、可能にできるでしょう。現在の、土讃線直通は、土讃線も単線で特急列車も走っており、線路容量は限界に近いです。そのため、なはり線から土讃線にすべての列車が直通しているわけではありません。
一方、土佐電鉄は、後免町から複線です。すべての車両を繁華街まで問題なく直通が可能になります。
 ごめんなはり線内の現在のダイヤは、一時間に1~2本ですが、これを4~5本に増発して、一挙に利便性を向上させるべきだと
考えています。

そして、土佐電鉄線、ごめんなはり線とも路線の活性化を図れるというメリットがあります。逆に、JR土讃線が寂れるというかもしれませんが、これは公共交通利用のパイ自体を増加させることにより解決すべきでしょう。

 これが最も大事なことですが、クルマ依存社会からの脱出を図るために都市計画や交通計画との関連を明確化する必要があることです。
 そのためには、路面電車、鉄道、バスなどの各種交通機関の役割分担をはっきりさせなければなりません。バラバラに機能している交通機関を再構築し総体的なシステムとして機能させる。これができてこそ初めてLRTの称号を与えられるといってよいでしょう。

 土佐電鉄を介してごめんなはり線とJR土讃線をまず、高知都市圏の基幹交通として位置づける。そしてバス路線のネットワークを相互補完する形で、構成するというふうにしたらよいと思います。西方面も朝倉あたりからJR土讃線にも直通運転を検討すべきでしょう。また、中心市街地活性化の手段としても有効に機能します。なるべくクルマを使わない高知メトロポリタンエリア」を目指す上で、もっとも核となるプロジェクトになるでしょう。
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(ごめんなはり線 西分駅)

西村 奈半利から高知市街まで直通運転と言うことになりりますと、ディゼルカーではなく電化しないといけないと思います。電化した場合の費用はどの程度かかるでしょうか?

野本 当然、電化は必要だと思います。専用のディーゼルカーやハイブリット車両を造るという選択肢もないわけではないですが、
市街地で排気ガスを出すとなると、評判が悪いですし、性能や乗り心地も電車にはかないません。
電化する方がベターです。電化の費用ですが、だいたい1km1億円といわれています。なはり線は42kmですので、40~50億円くらいはかかるでしょう。
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(土佐電鉄安芸線。写真は野本靖さん提供)

西村 今から30年ほど前までは、土佐電鉄が高知市から南国市ご免を経て、夜須から安芸市まで運転していました。
安芸市から通勤通学の人達が高知へ来ていました。それを今の時代に再現するのでしょうか?

野本 その通りです。かつての安芸線では、市内から手結や安芸まで路面電車が直通便していました。市街地のみを走る運行にとどまらず、高知の市街地から40km近く先の安芸までを乗り換えなしに結んでいました。
 この取組みは、現在注目を浴びているLRTに通ずるものがあったと思います。郊外でのスピーディーな運行、連結運転による柔軟な需要への対応、当時は極めて斬新だった直通用車両のスタイルといい極めて先進的な取りくみでした。
 それを、この現代にグレードアップした形で復活させるということです。
速度や車両のみならず、バスとの連携、運賃面や情報提供面で、安芸線時代よりはとことん使いやすい鉄道、
使いたくなる鉄道を目指すべきです。また、東京などでの地下鉄と郊外私鉄の乗り入れが盛んですが、その路面電車バージョンと考えることもできます。

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西村 朝夕のラッシュ時に知寄町あたりで見ていますと、自動車は1人で約7メートルの道路スペースを専用します。
100台で700メートルの渋滞です。路面電車なら1両で60人は運送可能です。2両の路面電車で100人は運べます。交通渋滞の緩和と,廃熱防止になるし、環境対策にもなりますね。パーク&ライドも必要であると思われますが。

 その通りです、道路では、自動車があまりにも偉そうにしています。自転車を歩道に追いやり、歩行者に平気でクラクションを鳴らす・・・。
公共交通を活用するということは、自動車利用を最小限にする有効な手段ですね。
それは、渋滞緩和、大気汚染や騒音の減少など様々なメリットをもたらします。
パークアンドライドは、公共交通と自動車の双方の利点を生かした施策でもっと拡充してもいいと思います。

西村 直通運転の場合、現在の車両でいけるのでしょうか?特別車両ということになると地方の鉄道会社には余力はないとは思いますが?
運転手の技量などもあり対応はすぐにできるのでしょうか?

野本 まず、JRやごめんなはり線で使用している大型の車両を、市内に直通させるのは無理です。一方、現行の路面電車では小さすぎて用事にならないでしょう。中間サイズで、鉄道車両と同等の性能を持つ、専用車両が求められます。
当然ながら、カツカツで経営している事業者単独での導入は、不可能です。ハートラムも事業者の負担がままならないので試しに導入した1編成で止まっています。
公的負担は避けられないでしょうが、行政や市民の合意を得ることがあれば実現できるかと思います。

 事故を起こして突如運休になった京福電鉄ですが、運休により渋滞が激しくなるなど、鉄道の重要性に住民が気づかされ2年後にえちぜん鉄道として再出発しました。そこに公的資金が100億円投入されていますが、地域住民の合意がなされた
結果です。また、直通運転にあたって保安装置や運転士の訓練、法律の問題などクリアすべきハードルはいくつも存在します。
 それらをあきらめずに一つずつ解決していってこそ直通運転は実現します。

西村 高知県庁に「交通局」をこしらえぐらいの気構えがないと運営はできないと思います。高知県庁などと接触してみた様子はいかがでしたでしょうか?

野本 運賃体系の統合や共通のパスを発行するとなれば、それらを一元化する組織を構築しなければなりません。
異なる路線、事業者、モード同士でもあたかも一つの路線であるかのようにするには、それらを統合する交通局の存在は必須です。ドイツなどでは、各都市圏で交通連盟が結成され、ドイツ鉄道、トラム、バス、地下鉄などで共通したしくみで利用できるようになっている都市が数多くあります。

西村 県内メディアの反応はいかがでしょうか?打診はされたのでしょうか?興味をもつ記者はいましたか?。

野本 これは、よくわかりません。メディアとの接触はまだですし。

*野本靖さんが作成されました「直通運転」の「路線図」をPDFファイルにしました。

「network.pdf」をダウンロード

http://tosarailway.up.seesaa.net/image/1Al1Ab1Ag1A1A1A5B1AN.JPG

(参考) 野本靖さんより以下の都市の事例についてのホームページ記事の紹介がありましたので、掲示させていただきます。

さらに参考サイトを少し追加します。
まずは、前回のコメントで、リンクが上手くいかなかった部分から。

<ポートランド市公式サイト>
http://www.travelportland.com/index.html

http://www.travelportland.com/japanese/home.htm
(日本語サイト)

<「高速道路無料化案」では、日本はかえって悪くなる>
湯川真一さんの評論ですが、高速道路無料化は、完全に時代錯誤であり、地球温暖化防止という観点からも逆行する。世界の交通政策は新たな次元に突入しており、鉄道などの公共交通機関の利便性向上を図っている。と説明されています。最後に、ポートランドやサンフランシスコの道路計画を変革させた住民運動について述べられています。
今、高知でも新堀川がクローズアップされています。高知で脱クルマ社会を推進していくならば、新堀川の暗渠化を中止に追い込むことがまず最初に突破すべき関門であるのは間違いないでしょう。都市のアメニティや景観保全を重視する都市計画へのパラダイムシフトの観点からも見逃せません。

ポートランドの自転車事情については以下のサイトが詳しいです。
(自転車交通のNPO)
(公的な市民参加機関)

(ポートランドのなぞ)

(公共交通の活用事例:ポートランド編)

富山で昨年新規開業した富山ライトレールの写真がございます。

カールスルーエに関しては、以下のサイトが写真も説明も豊富で大変分かりやすいです。

<独墺四都市紀行>

http://www16.plala.or.jp/caw99100/europa/2/index.html

http://www16.plala.or.jp/caw99100/europa/3/index.html

http://www16.plala.or.jp/caw99100/europa/3/karlsruhe.html

ポートランドについても、参考サイトをリンクしておきます。

<ポートランド市公式サイト>

(日本語サイト)

<Tri-Met Officall page>

ライトレールやバスの運営組織であるトライメットのオフシャルページです。

http://www.trimet.org/index.shtml

ライトレールの写真多数あり。

http://world.nycsubway.org/us/portland/max.html

http://trolley.net/annex/trimet.html

http://usarail.hmc5.com/city_portlandor_jp.htm

http://www.jterc.or.jp/koku/ht-report/or-st/oregon.htm

個人ページなどのリンク。

<持続可能なアーバンライフ>ポートランドより発信

<シアトルウオーカー:サンディがお届けするホットなシアトル情報>


<渡辺葉さんが語る「木漏れ日、炭火焼のピッツァ、魔法の森のポートランド」>

<渡辺葉のポートランド通信>


カールスルーエやポートランドについては、以下のページをリンクしておきます。
写真などもあり、いろいろと参考になるかと思います。

<わだらんの欧州旅行記>

<トラムと車が共存する未来>

<路面電車の課題と海外の事例>

<you tube映像>

http://jp.youtube.com/watch?v=H3tP0nsyW1c

http://jp.youtube.com/watch?v=GwBlF75Xtjo

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コメント

こちらで写真の追加、色分けでより分かりやすく紹介しています。

「土佐の高知の鉄道ブログ」
http://tosarailway.seesaa.net/

投稿: やっしー | 2007.09.18 15:17

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