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2007.12.22

「人間都市クリチバ」を読んで

Kuruchibahon1_r

帰省中のヤ・シーさんに「クリチバの針治療」に続いて「人間都市クリチバ 環境・交通・福祉・土地利用を統合したまちづくり」(服部圭郎著 学芸出版社)を貸していただきました。師走のなにかとせわしいなか読者する時間があるのなかな。難しい本は嫌だなと思いましたが、興味深く一気に読んでしましました。

 こういう都市計画系の書籍は専門書扱いになるのでしょうか、一般書店(ブック・オフ)などには見かけないですね。198Pで2310円もするのですし。でもアマゾンなどで入手できる時代ですので、読むことを御奨めします。

 開発途上国であり経済成長著しいブラジル。その1地方都市であるクルチバ市が世界の都市計画の先進例として注目されているのは何故か?読むまでは今ひとつわかりませんでした。

 一読しますとその理由は理解できました。著者の服部圭郎氏は的確にまとめています。

「確固とした将来ビジョンを有したリーダーの存在」レイネル市長の存在。

「しっかりした将来像を描いた都市計画の持つ力」

「イブキ(政策のしっかりしたシンクタンク)のような実行組織の必要性」

「包括的なアプローチの必要性」

「将来を構想するイマジネーションの重要性」

「市民との責任の共有化を図る」

「人に対する優しい姿勢」

 服部氏は著作の中で「都市計画不在の日本」とはまるで反対の日本の都市の荒廃と現状に警鐘を鳴らしています。

「人々が集い、都市で生活する楽しみを満喫できるような空間がいかに少ないか」

「あったとしても、それは民間企業が消費空間として開発した場所がほとんどである
。六本木ヒルズや丸ビルが開業しただけで、多くの人が殺到するという現象は、それだけ公共空間が貧相であるということの証左でもある。」

「我々はひじょうに貧しい都市空間で生活することを余儀なくされている。」

 「都市開発の成果のみすぼらしさ。幕張新都心にしろ、臨海新都心にしろ、そこに人々が豊かさを感じるようなアメニティが欠如している。」

「臨海副都心のテレコムセンターの周辺は、大江戸温泉村を除けば、何を目的にして開発されようとしたのか、その構想が見えてこない。しっかりとしたビジョンがないために事業性という怪物に振り回されている。このような事態は名古屋、大阪、神戸などどこでも見られる現象である。」

 服部氏は日本の都市環境は大きな投資がおこなわれているにも関わらず、生活環境は改善されず、むしろ悪化していると指摘されています。生活に潤いをもたらしている樹木や緑が次々と消滅していき、変わりにアスファルトやコンクリートで覆われていく。

 高知市でも歴史的資源と浦戸湾最深部のビオトープである新堀川は。高知県庁土木部高知駅整備事務所の無意味な自動車道路工事によって破壊され、埋めたてられました。見るも無残な姿を見せています

 高層マンションが建設され、京都などでも日本文化の伝統は保存したいという米軍の配慮で空爆されませんでしたが、日本人の一部の金儲け主義者が京都の景観を破壊しています。

 なぜクルチバはうまくいき、日本はうまくいかなかったのか?服部氏は以下のように記述しています。

 「都市計画をしっかりとした将来ビジョンを持たずにつくってしまうこと。」

「それをもたずにつくってしまうこと」

「それを実践する仕組みが存在しないこと」

「課題を克服しようとする意志を結集できないこと」

「市民が行政と責任感を共有するという状態に移行できていないこと」

「都市計画という手法に問題があるのではなく、その手法をうまく使いこなせない人と、行政システムのほうにある。」

 高知の都市開発を考える上でたいへん参考になりました。同じ地球にこうした都市が存在していることは素晴らしいことであると思いました。
Shinborihakai
(進行する新堀川の破壊活動。石垣のなかに小生物がいました。かになどです。つるつるのコンクリート護岸にされますと生き物は生息できません。多額の税金で、せっかく生態系が回復してきた浦戸湾最深部のビオトープを破壊し、どぶ川をこしらえているのです。)

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