「都市の針治療」を読んで
9日に夜須でヨットをしたおり、地元のヤ・シーさんが自転車でハーバーに現れ「都市の針治療」という本を貸してくれました。クリチバ市というブラジルのある都市の元市長の手記です。都市のあり方、都市のあるべき姿を市長として都市づくりに関わった体験記を語られています。
「針治療」というネーミングも良いようですね。私はまた「チャングムの誓い・完全版」をしつこくまた見ておりますが、脈診して針治療というのが東洋医学の極意。ブラジル人市長が針治療を知っていることが凄いなとも思いました。
この市長は世界各地の都市の事例を知っているようです。街頭の物売りも取り締まるのではなく、「都市の元気の源」という着眼点で生かそうとしています。
バロセロナの街並み(写真は中平順子さん提供)
街路樹や歴史的資源、河川なども最大活用する工夫を常にしている市長です。記述は短くコンパクトではありますが、文章が短く簡潔過ぎるために「どうしてなのか?」が今ひとつわからないところはありますね。
そのなかでも「都市のコレステロール」(P66)という記述は的を得ています。
(バロセロナの大道芸人。いたるところにいるそうです。写真は中平順子さん提供)
「都市のコレステロールは我々の血管、交通路や幹線道路の流れを遮断させる大量の自動車という不要物である。それは、身体だけでなく人々の心までも侵す。」
「そして、それほど時間が経たないうちに、人々は自動車が全てを解決してくれると考え始める。こうして人々は自動車のためだけの都市をつくり始めるのだ。
高架道路、自動車専用道路、そして排気ガス。」
「自動車を中心に都市を計画すると多くの弊害が生じる始める。例えば郊外のショッピング・モール。これは運動不足をひき起こし。人々が街を歩くことを阻止してしまう。」
「さらに都市を機能分化してしまう。すなわち住む場所、働く場所、そしてレジャーを楽しむ場所が離れてしまうのいだ。これはエネルギーを無駄に消費することにつながる。その結果血圧は上昇するのだ。
交通渋滞、無駄な時間、大気汚染、そしてストレスによって!」
「いく度となく、2台の車を駐車させることによって、あなたは子供達から遊ぶ空間を奪い取ってきたのではないだろうか。」
「良いコレステロールは、しっかり管理された自動車利用とも言い変えることができる。そして効果ある針治療とは、自動車の鍵を数時間手放すということなのだ。」
(「都市の針治療 元クリチバ市長の都市再生術」ジャイメ・レルネル著。中村人氏・服部圭郎訳。丸善)
(破壊される高知市の新堀川。単なる自動車道路で貴重な都心部のビオトープが潰され、歴史的資源がないがしろにされています。税金を使用した「まちこわし」を高知県は実行しています。
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コメント
実に奥が深い書籍でした。
都市計画とはこうあるべきだ。とそう思いました。それは筆者の奥深い知識を表現力、なにより学者と違うのは実際に実現したこと。
短い文章の奥が深いので、理解するにはとても時間がかかります。
投稿: けんちゃん | 2007.12.14 08:48
この本は、記述は簡潔ですが、その奥に広がっているレルネル氏の哲学はすごく深いものがあります。
そのためか「この本を捨てないことはすごく重要なこと」という冗談まじりの記述も見られます。
私も一通り読んだのはまだ一度だけですが、この本は都市政策のバイブル的な存在と言っても過言ではないと思います。
投稿: やっしー | 2007.12.14 08:05