地球時代のリーダーとは 9月25日(木)
西村 今月のゲストは前高知県知事の橋本大二郎さんです。橋本さんは4期16年勤められた高知県知事を昨年12月6日に退任されました。そして今年4月2日に国政へ挑戦されると表明されました。
知事時代と同様に政党関係の支持を獲得せず無所属で挑戦されます。
今回のテーマは「地球時代のリーダーとは」でお話をお聞きします。
橋本さんは「産業政策でも中央集権型で各省庁が、縦割りの事業を全国に一律に進めていたのでは高知県のように地理的に不利な条件を抱えた県は、いつまでも相対的な不利を解決できません。」と言われています。
産業政策の分野でも中央主導の産業振興を転換させるということなのでしょうか?
橋本 そりゃそうですね。産業政策でも補助金政策で、産業政策を進めようとすれば、中央の関係の省庁がつくった補助金を全国に配分する。そうすればそれぞれの県に全然違うような形でということにはなりません。
やはり一律的な補助金を配分していく。ということになります。特に高知県のように産業面で遅れた県にとってみれば、税金やなんかをドラスチックに変えていく、その仕組みを変えていくということができれば、それはそれで「誘導策」として企業を呼び込むとか育てるとかということができます。
そういうことができなくて、一律的な補助金を受けるということであれば、後進性、後発性というものを乗り越えるということは出来なくなってしまう。ということになります。
ですからこういうような中央集権のなかでの産業振興というのは、今の時代に殆ど意味をなさないのではないか。国はもっと技術開発だとか、違うことにお金をつぎ込んでいくべきです。
西村 食料生産について。日本はカロリーベースで食料自給率が50%ありません。
西村 遠い外国から食料を輸入しています。そのことが物凄くCO2を排出していることにもなります。
農業政策で自給率を上げて、国際公約にもなることは可能なのでしょうか?
7月30日には世界貿易機関(WTO)新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)が決裂しました。解決策はあると思いますか?
橋本 いくつかの問題が絡んでいます。というか複雑に入っていますね。
そうした問題とまとめて言われましても答えようがありません。
私は農業ということはこれからの国の基本に据えて取り組んでいかないといけない。と大二郎の旗で言っています。
そのためにもこれも同じ話の繰り返しになりますが、農林水産省が補助金という形で全国に配分していく。また公共事業中心の農業政策を進めていく。そういうようなやり方は辞めるべきだと思います。
一方で食糧危機だ。お米をもっと増産をしないといけない。自給率も上げないといけないと言いながら、減反政策を進めるなんて、全くナンセンスなことを平気でしています。それを自民党の農水族と一緒になってやるなんていうことは、言語道断だとわたしは思います。
こういうような農業政策は基本的に改めなければいけない。ということを思います。そのための手法はいろいろありますけれども、短い時間でなかなかお話をしにくいのですが、企業の参入もあります。そのことにいろんな問題点を指摘される方もおられます。わからないのではありません。
どこか一箇所だけに企業の参入をしてやろうとしても、農業は天候に左右され、収益性の見通しのつかないので、なかなか企業経営という考え方と、合わない。
それぞれの地域で農業者、お百姓さんを給料でお雇いをする。しかもそれぞれの地域で年によって、出来高のいいもの悪いものがあります。
全国で考えればリスク分散になってポートフォリオと言いますけれども、それによって収益をあげることができる。というような。年間100億円ぐらいの収益をあげる企業が出てきています。
こういうようなやりかたの農業というものをもう少し真剣にわたしは考えていくべきだ。と思います。そういうものが次々と企業体として出てきたときに、今日本には1500兆円の個人資産があります。それを投資する場がない。お金が死んでしまっています。お金がまわらない状況になっています。
申し上げた新しい形の農業をきちんとした産業にして育て、それをみんながもっている個人資産の投資先としてつかっていく。農業だけでありませんけれども、教育であるとか、エコ・エネルギーの新しい事業だとか、言うものをいくつか立ち上げていってそこに個人資産を投資をしていくと言う形で日本人の持っている資産をもっと日本の国内でまわしていく。
このことが私は日本全体、地域も含めた経済の活性化に間違いなくつながっていけるのではないのかなと思います。そのビジネスモデルをもう少し細かく書き上げて、お示しをしていきたいと思っています。
西村 エネルギー政策についてお聞きします。ドイツなどでは国策で太陽光や風力発電など自然エネルギーの活用を提唱し実行しています。石炭や原子力の利用を極力抑えようとしています。
そのあたり日本のエネルギー政策はどうあるべきですようか?
また橋本さんは原子力発電についてはどう考えられていますか?
橋本 まず原子力発電については、今の発電の30%を担っています。そのことを無視してはいけないと思います。
わが県の東洋町でも高レベル放射性廃棄物最終処分場の問題がありました。これは私は高レベル放射性廃棄物を日本の国内で処理することにまっこうから反対していることではなく、ああいうやりかたでは絶対にどの地域にもできない。やはり地域の住民の理解を得られる手法を考えないといけない。という趣旨でわたしは反対の立場を貫きました。
原子力発電というものも冒頭からバランスということを言っていますが、いくつかのエネルギーのリスク分散のなかで、バランスとしては日本では当然考えなければいけない。1つの手法だと思います。
太陽光だとか風力とかエネルギーの政策に関しては、わたしは国として1つの方向を出していくことは大切です。これも地域自立型の国家構造ができていけば、高知県はエコ・エネルギーでいきましょうと。もっと明確に打ち出していけます。
国から補助金をもらって太陽光や風力なんかをやっていくのではなく、高知県の政策として、四国州の政策としてそういうものを打ち出していく。まさに高知県なんかはそういうことにふさわしい。県であると思います。
自然エネルギーなどを「県づくり」。地域自立型の国家構造になっていけば、明確に打ち出して県の特長にしていく。そういうことを、そういう国づくり、県づくりにつなげていきたい。とわたしは思います。
西村 原子力発電に関しては、橋本さんは否定的ではないのでしょうか?
橋本 否定的ではありません。
西村 使えるものは使おうと言うことですか?
橋本 使うべきだと思います。
西村 しかし原子力は廃棄物の問題とかあります。また日本は世界の地震大国でもあります。狭い日本の国土ですが、全世界の地震の10%は日本で起こっています。震度5以上であれば25%が日本で起きています。
橋本 それだったらそれで原子力発電を全部やめてどうするんでしょうか?
西村 すぐにはできないとは思いますが・・
橋本 すぐにはできないということでは、いけないわけですね。エネルギーというものは。1年止まったらそれは心臓にペースメーカーをつけたりしている人達が生きていけないとか。寒い中で生きていけない。そんな問題が出てきます。
ですから現実のなかでのバランスでウエイトを上げるか下げるかを今後考えていかなければならないといけません。全否定してすむ問題ではないとわたしは思います。
西村 原子力発電は全否定はしないと言うことですか?
橋本 そうです。冒頭からそう申し上げています。
西村 青少年育成についてお聞きします。
最近、無関係の人を殺害する通り魔事件が多発しています。
橋本さんは知事時代に成人式で騒がしい新成人を一喝したことがありました。
青少年育成のためのアイデアなどありますか?
橋本 青少年育成のためのアイデアということですが、私は小学校の教育体系を抜本的に改めるべきだと思います。
よく「知・情、意」ということを言います。知性と感情と意志ということです。そのなかでも日本は知性よりも知識だけを重んじた教育をずっと続けて来ました。
小学校に入った段階からそういう教育をしています。それを根本からあらためて,感性、感情と意志ということを重要な1つの教育材料として教えて行く。スポーツだとか芸術だとか言うことを中心に私は小学校教育というものを組み立てていく。
知識やなんかのことを後から、中学へ入ってからでも間に合うと思います。そのためには東京大学を頂点にしている大学の受験体制、ピラミット体制と言うものを変えていく。受験のありかたも一緒に変えていく。そして小学校の段階から教育の仕組みを変えていくことが私は1番大切なことであると思います。
西村 地球環境を守るために「大二郎マニフェスト」はありますか?
あたためているアイデアや政策などがありましたら、おかまいない範囲でご披露下さい。
橋本 突然で全く違った話しになったもんで・・どういう意味ですか・
西村 さきほどの教育の話から飛んでしまいましたが、環境を守るために日本が果たす役割はあろうかと思います。日本の得意分野もいくつかあると思います。
地域でやれる部分。国全体でやらなければならない部分。さきほど原子力発電の話にもあったんですが、たちまち止めたら困るというお立場であるということが初めて知りました。
それ以外の方法。原子力以外の方法とか。あるいは共存型社会をつくる。。・
橋本 何と何をつくる?
西村 環境保全型ですね。そういう意味においてです。たとえば廃棄物を出さない。処理に困るようなものをつくらないとか。そういう意味においてです。循環型社会というのであれば、捨てる場所に困るようなものをこしらえない。すべきではないのかと私は個人的には思っています。それは原子力も含めてです。
生産物。製品。農業でもそうでしょう。それをしていく循環型社会に転換していく役割を果たすべきであると思います。そのあたりを橋本さんがお考えになっていること。
橋本 お考えになっているという意味が余にも具体性を欠くので・・。わからないんですが・・・
わたしは地球環境というのであれば高知県は80数パーセントが森林で全国1の森林の比率の高い県です。森林の整備の大切さを地球環境の1つとして訴えてきました。
森林環境税もそうですし、企業との協働の森の動きもそうです。このなかでCO2の吸収証書を出したり、削減証書を出したりと言うことをきちっとしたPCCのガイドラインの計算式でしてきました。
わたしは日本全体の今後の排出量取引なんかで具体化をしてくる時の大きなテーマになってくる。またそのモデルとして活用していただけるだろう。と思います。
やはり日本というのは緑・森林というものを大切な資源とする国です。こういうことを高知県からせっかく発信したものを全国に広げ、全国的な運動の取り組みとして行くということをやっていかなければいけない。と思います。
世界ということでしたら公害の問題。水の問題。今申し上げた地球環境の問題などは日本はひじょうに多くのノウハウをもつ国です。これを世界貢献の1つの材料として使っていく。そういうことが日本の国家戦略として大切ですし、そういうプロジェクトをやはり日本はアジアの国ですから1つ中心にして、いくつかのプロジェクトを国として明確に立ち上げてそこに若い人、または私たちのような団塊の世代を含めていろんな人たちに参加をしてもらう。
それを若い人達が日本を誇りにし、日本という国をベースに世界貢献していくベースにする。ようなことも国の力を強めることになります。
西村 防災対策なども日本は進んでいると思います。そのノウハウを伝授するということにもなると思います。
橋本 突然防災対策になりましたが・・そういうことでいえば防災もそうです。それから食糧危機に関して農業技術もひじょうに進んでいる県ですし。
水不足の問題も世界中で起こっています。水供給の問題でも日本は技術が進んでいます。
様々な分野で世界に貢献できます。世界1の長寿国でもあります。保健医療の問題でもそうです。教育を受けられない子供達に教育のチャンスを与える。様々な分野で国際貢献のプロジェクトをつくっていける。
そこに若い人達が、どんどん参加をして日本という国、国力というものに強い意識を持ってもらう。そんな国にしてもらえばと思います。
西村 日本は衰えるばかりという印象をもっていましたらが・・
橋本 今のままならそうなります。
西村 国の形、ありかたを変えなければいけないということですね。
橋本 国の形を変えれば日本は間違いなく元気になります。それから1500兆円の眠っている個人資産をみんなが使っていける。投資をしていけるような形に変えていく。そういうことが出来れば、日本は底力は強いものがありますので、元気な国になるのか間違いないと思います。そういう国に是非していきたいと思います。
西村 今なら未だ間に合うのだと。
橋本 まだ間に合います。
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