「悩む力」を読んで
姜尚中(かんさんじゅん)氏の著作「悩む力・集英社新書・714円」を読みました。この人最近テレビで見かける。バラエティ番組にも出演していて久米宏の番組「テレビって言う奴は」の準レギュラーでもありますし。
はしゃいでいるタレントの中ではぼそぼそとしか話さないし、テンションは高くはない。それでいて存在感がある人。在日という存在もあるのでしょうか。お堅い政治学者であるのに。
本の中では夏目漱石とマックス・ウェーバーを同世代に生きた人物として論じています
。「漱石とウェーバーが100年前に書いたものを改めて見直すと、今を生きるわれわれの悩みへの手がかりとなしそうなことにしばしば出くわします。」(21P)とあります。
「個人の苦しみの大本となる「自我」というものについても教えてくれます。個人に大きくからむ「自由」という問題についても考えさせてくれます。」
「資本主義の変容と、「マネー(金)の問題についても注目すべきものがあります。そこから敷衍して、人が「働く」とはどういうことなのかといったことについても、目を見開かされるものがあります。」
「また、人間の「知性」とは本来どうあるべきで、いまこのような時代の中でわれわれは何を知るべきなのか、何を信じるべきなのかといったことに対するヒントもあります。
そして信じることによって、人は何を得ることができ、何を失うことになるかについても考えさせてくれます。」
「それだけではありません、生きることの意味、人生の意味。死ぬことの意味、愛することの意味・・・。じつにさまざまな普遍的な問いかけが、彼らの書き残したものの中にあるのです。だから、彼らが100年前に抱き、悩んだ問いを、いまもう一度考える意味は大いにあるのではないかと思います。」(22P)
「ちなみに、漱石やウェーバーのころ、こうした問いかけは「知識人の特権」のような悩みでした。しかし、いまやすべての人に情報や知識が開かれているのですから、悩みもより普遍化していると言えるかもしれません。さらに自由化やぐろーバリぜーションに伴う変化の中で「個人」の痛みはもっと苛烈になっているはずです。」(23P)
という書き出して姜尚中氏は9つのテーマを書いています。
「私」とは何者か
世の中すべて「金」なのか
「知っているつもり」じゃないか
「青春」は美しいか
「信じる者」は救われるか
何のために「働く」か
「変らぬ愛」はあるか
なぜ死んではいけないか
老いて「最強」たれ
とあります。
寡黙で黙々と語る印象の強い姜尚中氏ですが、なかなか熱いところもあるようです。
大型2輪の免許を取り、ハーレーダビットソンに乗り、日本縦断の旅をすること。朝鮮半島へも行く。それはイージーライダーに憧れていて、ハーレーにまたがると横着な姿勢になること。「Born to be wild」というステッペンウルフの主題歌は「ワイルドでいこう」は「横着者でいこうでは」ないかと言っています。
「髑髏(どくろ)のアイコンのついた革ジャンを着て、横着にハーレーにまたがって、横着な態度で金正日の頭でもコツンと叩いてみせる。そのくらいのことを考えたっていいのではないでしょうか。
百年前と違って高齢者の撹乱(かくらん)する力が幅を利かせる中で、漱石がなりたくてもなれなかったものになってみせるのです。(終章 老いて「最強」たれ 177P)
こうも言っています。プチなんとかとか「ちょい悪おやじ」なんてやめちまえ。
姜尚中氏はこう言い切ります。「若い人には大いに悩んでほしいと思います。そして悩み続けて、悩みの果てに突き抜けたら、横着になってほしい。そんな新しい破壊力がないといまの日本は変らないし、未来も明るくない、と思うのです。」(177P)
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