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2009.01.05

ETV特集「吉本隆明 語る~沈黙から芸術まで~」を見て

  NHK教育「ETV特集「吉本隆明 語る~沈黙から芸術まで~」を見ました。

 この人には学生時代に影響を受け、当時高価でありました「吉本隆明全集」も買い揃えましたし。実際の姿は1976年だか共産主義者同盟叛旗派解体集会で見ました。その後時折メディアに出ていましたが「今の時代はわからない。反核運動なんかくそくらえだ」とか言っているおっさんでしたし。

 10年ほど前に避暑先の伊豆で水泳中に溺れ、臨死体験をしたそうです。うちの母と同年齢の84歳の吉本隆明氏です。

テレビに登場した吉本氏は、糸井重里氏の介助で車椅子でしたが元気そうでした。しかも相変わらず「わけのわからないこと」を言い続けていました。講演会には2000人の聴衆が来ていたといいます。

「軍国少年だったので、玉音放送ではわけがわからなかった。1人宿舎へ戻り部屋にこもって泣いていた。忠君愛国を言っていた文化人や教師が、敗戦後は民主主義の擁護者面することには我慢できなかった。」

「精神と生活のどん底のなかで世界を知る勉強を5~6年しました。アダムスミスからマルクスまで。大真面目に検証しながら読む作業をしました。」

「アダムスミスは平易な言葉で経済学を語っている。ある人がりんごの木に登ってりんごの実をとりました。そして降りてきてもとの位置に戻る。りんごの実の価値はのぼって、とって、おりてくる作業と等しい。その作業(労働)が労働価値説になる。」

 スミス、リカード、マルサス、マスクスと読み込んで独自の「吉本理論」を構築して行きました。

 講演の話は突然「芸術論」になります。

 「言語芸術論」を自分で考え、こしらえた話をしていました。

「私の言葉では「自己表出」と「指示表出」がある。言語はコミュニケーションと、精神構造とコミュニケーションではないところがある。」

「芸術は経済的価値とは無関係。芸術はきの幹。枝や葉や実がその先にある。」

「文明が進み、社会が便利になったからといって、芸術が発展したかと言えばそうではない。むしろ未開の人たちが、少ない情報のなかから生活の中で搾り出した表現が、すぐに歌になるのかもしれないが、芸術的価値はあると思う。」

 講演は夏目漱石、森鴎外、桑原武雄、小林秀雄、松尾芭蕉、ドスト江スキー、ポール・バレリーなどに言及していましたが、話が飛んでいき、こちらの理解度を超えておりました。

 NHKが特集するということは「死期」が近いのかもしれません。あわてて録画しました。赤塚不二夫さんも特集が組まれた後に逝去されましたし。

 しばらく読んでいない吉本隆明全集や、「共同幻想論」「言語にとって美とはなにか」「最後の親鸞」なども読んでみますか。

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» 自分の仕事に迷った時に。 [右近の日々是好日。]
 人間が、働くためには役に立たない「芸術」を求めるのは、なぜだろうか。  先日放送された「ETV特集 吉本隆明語る〜沈黙から芸術まで〜」を観て、私は考えた。  敗戦時に文学少年であり軍国少年であった吉本氏は、敗戦という世界の大きな転換期に、どうすれば自分が生きている世界を把握できるのかと模索した。模索し続けた結果、経済学による世界認識と文学による世界認識を、自分なりにつなげることができれば自分は未来に向けて生きていけると、吉本氏は考えた。  アダム・スミスやリカード、マルクスといった古典経済学者に学... [続きを読む]

受信: 2009.01.16 13:46

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