ETV特集「吉本隆明 語る~沈黙から芸術まで~」を見て
NHK教育「ETV特集「吉本隆明 語る~沈黙から芸術まで~」を見ました。
この人には学生時代に影響を受け、当時高価でありました「吉本隆明全集」も買い揃えましたし。実際の姿は1976年だか共産主義者同盟叛旗派解体集会で見ました。その後時折メディアに出ていましたが「今の時代はわからない。反核運動なんかくそくらえだ」とか言っているおっさんでしたし。
10年ほど前に避暑先の伊豆で水泳中に溺れ、臨死体験をしたそうです。うちの母と同年齢の84歳の吉本隆明氏です。
テレビに登場した吉本氏は、糸井重里氏の介助で車椅子でしたが元気そうでした。しかも相変わらず「わけのわからないこと」を言い続けていました。講演会には2000人の聴衆が来ていたといいます。
「軍国少年だったので、玉音放送ではわけがわからなかった。1人宿舎へ戻り部屋にこもって泣いていた。忠君愛国を言っていた文化人や教師が、敗戦後は民主主義の擁護者面することには我慢できなかった。」
「精神と生活のどん底のなかで世界を知る勉強を5~6年しました。アダムスミスからマルクスまで。大真面目に検証しながら読む作業をしました。」
「アダムスミスは平易な言葉で経済学を語っている。ある人がりんごの木に登ってりんごの実をとりました。そして降りてきてもとの位置に戻る。りんごの実の価値はのぼって、とって、おりてくる作業と等しい。その作業(労働)が労働価値説になる。」
スミス、リカード、マルサス、マスクスと読み込んで独自の「吉本理論」を構築して行きました。
講演の話は突然「芸術論」になります。
「言語芸術論」を自分で考え、こしらえた話をしていました。
「私の言葉では「自己表出」と「指示表出」がある。言語はコミュニケーションと、精神構造とコミュニケーションではないところがある。」
「芸術は経済的価値とは無関係。芸術はきの幹。枝や葉や実がその先にある。」
「文明が進み、社会が便利になったからといって、芸術が発展したかと言えばそうではない。むしろ未開の人たちが、少ない情報のなかから生活の中で搾り出した表現が、すぐに歌になるのかもしれないが、芸術的価値はあると思う。」
講演は夏目漱石、森鴎外、桑原武雄、小林秀雄、松尾芭蕉、ドスト江スキー、ポール・バレリーなどに言及していましたが、話が飛んでいき、こちらの理解度を超えておりました。
NHKが特集するということは「死期」が近いのかもしれません。あわてて録画しました。赤塚不二夫さんも特集が組まれた後に逝去されましたし。
しばらく読んでいない吉本隆明全集や、「共同幻想論」「言語にとって美とはなにか」「最後の親鸞」なども読んでみますか。
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