高知の環境を活用した産業育成を
高知新聞2月9日夕刊の記事「どう稼ぎますか」シリーズの取材者は高知県工業会会長の北村靖男氏(技研製作所代表取締役)のコメントは、久しぶりに的確な高知新聞の記事でした。深く印象に残ったため、引用し、画像でも紹介したいです。
「北村レポート」として高知県産業振興計画に提言されたらしい。北村氏は随所で高知県の産業の特色について述べています。
「工業出荷額の拡大を目指すことはない。最下位でよい。全国46位ですが、45位の鳥取県のほぼ半分。台風は来る。土地はない。高い。(工業の)文化がない。文化のない所では育ちません。」
「自動車は売れんのではなくて、これ以上いらんのです。」
また北村氏は従来から県がやっている企業誘致へ真っ向から反対しています。
「大手の工場が来てもよくならない。下請けには県外を使う。金が回らん。利益は取っていく。雇用の創出がありましたよ。安い給料のとこで人使いゆうだけ。
行政は地元企業より土地代やら優遇する。県は企業誘致より、企業進出に力とお金を使うたらえいやないか。それならお金を取ってこれるわけやから。
大手量販店も安い給料で(多くはパート雇用)で人使うて外国の商品売って、利益は県外へ。高知がようなるはずがない。」
(ハゲタカ量販店イオン高知)
「行政への注文は。」という記者の質問に北村氏はこう答えています。
「循環させな。公共工事も県外大手に出しっぱなし。工業で1番いいのは発明ですいうち(技研製作所)もそれで伸びた。財産や幸せの創出、発明の機会をつくってやらな。
県工業会は従業員4-9人の会社が47%ですが、いろんな技術がある。実績がない言うて公共で採用せんなら、何も生まれん。公共事業のこの部分で新技術を試してみてください。失敗してもえいやないですか。失敗という経験が残る。」
また「北村レポート」ではこうも言われています。高知の地勢や環境、歴史にも言及した含蓄ある言葉なので、そのまま引用したい。
「県の工業は背後に四国山地を背負い、前面に太平洋を望むロケーションの中に発達した。
県土の84%を占める山林は他県に勝る「林業の優位性」の条件。そこで生まれたナタやオノなどは土佐刃物の発達の基であり、製材機などの機械へとつながった。」
「また、土佐の山野に生育する良質のコウゾやミツマタを原料に製紙業が起き、家庭紙から最先端の特殊工業紙まで扱う産業へ発展している。」
「少ない耕地だが、温暖多湿と四季の変化、きれいな水と太陽、さわやかな風と空気は「農業の優位性」。そこから生まれるたクワや脱穀機などは工業製品へ発展してきた。」
「太平洋に面し、「漁業の優位性」の条件にも恵まれた。包丁や釣り針、捕鯨銃や魚巻上機など、世界に通用する製品の数々が生み出された。」
「こうみると必然の流れで、「モノ」が創造され発展してきた。一次産業の発展とともに歩んできた工業界は、土佐の地の利に根付いている。」(高知県と工業 全文引用)
北村氏は「地域的優位性」と「地域文化」の大切さを語り、それに高知の企業が沿っているのか、いないのかで発展が決まると言い切っています。この観点は従来の高知県庁のレポートや分析にはない視点であり、現実の製造業のなかで奮闘され、実践されている経営者の言葉だけに大変重みがあります。
「自社の根幹部が原理的に県の環境とマッチしているか。各企業はあらためて精査すべきだ。」
「地域学的優位性に準じていれば、必然的に事業運営は優位に運び、苦労も報われる。不利性を内包する企業は相当な努力で不利性をふっしょくしなくてはならない。
高知でなくてもできる仕事は競争を避けては通れず、価格以外で優位性を発揮するのは難しい。低価格で事業が続き、大きな発展は望めない。」(地域学的優位性)
「モノが育つには、地域の土地柄が影響する。文化のないところに芸術も産業も発展しない。人間も持って生まれた天性天分を生かして大きく成長する可能性がある。
不利な環境下にいたり、不得意なものを主力にする事業者に成功の可能性は皆無と言ってもいい。
「県の地域文化」を県民でもう一度認識し、新しい次なる発展に向けて力を結集すべきだ。」(地域的優位性)
北村氏は「北村レポート」のなかで、「一次産業との接点」「企業誘致の疑問」「産業創出」「企業の外部進出」と持論を展開されています。どれも自らの企業での実践の裏づけがあり傾聴すべきでしょう。
「製品出荷額は全国最下位でもよい。本県は「全国1の環境優良製品産出県」であり、「全国1の環境配慮型生産方式」を実践していると誇れる工業会をつくりたい。
「政治は経済」であり、経済効果のない政治活動や行政改革など、”絵空事”である。
地に足が着いた成功理論を十分検討すべきだ。」
なかなか「強烈」な提言であると思いました。高知にも「本田宗一郎」のような人が現存していたことに驚きです。
今日のブログ記事のかなりの部分は高知新聞2009年2月9日夕刊記事を引用させていただきました。この記事は読んで捨てられるのではなく、県民各位は残してスクラップし、自分の会社や職場が「高知県の特性」の合致しているかどうか点検し、していなければ合致した方針を打ち立てるべきである。そう思ったからです。わたしも貴重な「記録」として残したい。また後で検証したいのでブログ(weblog)にしました。
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