盧武鉉の夢を読んで
高知市の放漫経営による財政危機のおかげで、当分改築されない下知図書館で借りて読みました。先日釜山の自宅裏山で自殺した盧武鉉(ノムヒョン)前大統領。どんな人であったのかに興味がありました。
著作者は盧武鉉氏本人と息子さんや支援者です。日本語訳は青柳純一氏。2003年1月の発刊。韓国大統領になる直前の著作です。
一読して盧武鉉氏は、本当に市井の人であり、社会運動、市民運動、政治活動でもそれを貫いた人であると思いました。それは父親もそうであり、軍事政権下に弱者の味方としての生き方に盧武鉉氏も強い影響を受けていました。
家がそんな事情で貧しかったので大学進学できず、独学で司法試験に合格しました。独学の合格は本当に数少ないとか。兵役を終え、弁護士業務をされていましたが、軍事政権に反対する活動家を弁護するようになってから、「人権派弁護士」となり生活に追われながら活動するようになりました。
1980年代の韓国の学生運動、民主化運動の影響を受けていました。そのなかで盧武鉉氏は「韓国政治を変えなければいけない」との信念で、地域対立を克服しようとして政治活動をしますが、落選の連続。韓国では慶州地域と光州地域の対立が根深く、歴代大統領は慶州地域の出身。金大中氏は光州出身。それで慶州の釜山で地域間対立の克服と民主化を掲げて国会議員に立候補しますが、落選の連続でした。
注目すべきは、「ノサモ」(盧武鉉氏を支援する市民の会)でしょう。2000年の国会議員選挙で落選した盧武鉉でしたが、その政治姿勢に共感した市民が勝手連的に集い、ネット上で掲示板を立ち上げ、サーバーを提供し、資金を集め盧武鉉氏を積極的に支援、、その数は5万人を超えたそうです。
ネチズンという行動的なネット市民が熱狂的に盧武鉉氏を支援し、2003年の大統領選挙勝利の原動力になりました。オバマ大統領より先に市民参加の大統領候補になっています。本では野党候補になるまでが、書かれていました。
盧武鉉氏がモデルとし、尊敬していたのはリンカーン。国の分裂を断固として阻止した人物として評価していました。金大中大統領の北朝鮮融和政策を継承したのもその表れでしょう。
「人生はシジフォスの神話」
「無謀という世評を超えて」
「いつも原則に忠実なだけなのに」
「常識が原則と所信を生む」
「韓国統合の道」
「葛藤こそ政治の道」
「友達のようなリーダーを目指して」
韓国では珍しい市井の市民の中からの大統領でした。しかし大統領の後半、失政が続き経済も失速したことから、偏狭な民族主義に依存し、日本批判を繰り返しました。もっとも相手が小泉純一郎氏や安部晋三氏などの「対米従属・ファシスト」首相と対談したからそれは仕方がありません。日韓双方で不幸でした。
市民の海のなかで生きる。という政治信条であった盧武鉉氏。巨額の不正献金は身内のものが受領したこと事態が許せないことであり、お金で動いた自分も許せなかったと思います。
でも市井の大統領であった業績は変わりません。
趣味はヨットだそうです。レースのために日本へ来られ、琵琶湖でセーリングされたとか。そういう意味でも逝去は残念ですね。
心よりご冥福を申し上げます。
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