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2009.06.08

「ウェブはバカと暇人のもの」を読んで

Webbakahimahon
 中川淳一・著「ウェブはバカと暇人のもの」(光文社新書)を読みました。筆者は一橋大学を卒業後、博報堂に勤務、後に退職。テレビ局勤務や無職も体験。後にWEBでのニュースサイトの編集者に。いわば現在のWEB事情に詳しい1人でしょう。

 グーグルの躍進や、WEB2・0時代であるとか希望に満ちた「新大陸」のようにWEBの世界は語られます。しかし中川氏は否定的な見解。

「インターネット万能論を多くの人が唱えています。はっきり言います。それは夢物語です。ウソと言ってもいい。」

「通常ネットの1部で話題になっているだけでは世間的な影響はありません。」(P15)

 中川氏はWEBの世界に出入りする人を「頭の良い人」「普通の人」「バカ」に分類します。頭の良い人たちはITコンサルや評論家。「ウェブ進化論」(梅田望夫)「グーグル」(佐々木俊尚)のような人たち。自分は運営側の人間であると。

 「ネットには怒りたい人、吊るし上げる対象を血眼で捜す人が多い。あまりネットの住民が善意にあふれていると思わないほうがいい。」(P40)

「人々はただただいじめが大好きなのである。ただし自分が逆襲されないかたちでの(」P48)

「ブログやSNSの内容は一般人のどうでもよい日常」(P68)

 中川氏は「ネットで受けるネタ」(P105)を次に上げています。

1)話題にしたい部分があるもの。突っ込みどころがあるもの。

2)身近であるもの(含む。B級感があるもの)

3)非常に意見が鋭いもの

4)テレビで一度紹介されているもの。テレビで人気があるもの。ヤフートピックスが選ぶもの。

5)モラルを問うもの。

6)芸能人関係のもの。

7)エロ

8)美人

9)時事性があるもの

 WEB編集者の仕事で得られた教訓であるようです。なかなか鋭いとは思いますね。

 ネットの現在の世界が希望に満ちていないのは以下の指摘を筆者はしています。

ネットに煩雑に書き込むヘビーユーザーはテレビを見ても、わざわざカネを払ってまで雑誌や新聞を買わないからだ。そして雑誌や新聞を買ってまで情報を得ようという忙しい人は、そのネタをわざわざ親切にネットに書き込むことをしない。」(P132)

 ネットはマイナーな世界であり、ニッチであると中川氏は言います。その点、テレビは凄いとも。世帯普及率が100%。放送作家が番組を作成して、芸能人に言わせるし。

「これからも人々は大河ドラマと紅白歌合戦を見続け、のど自慢に出演する。」

「ネットは便利である、だが電話ほどの画期性はない。」(P150)

 そして中川氏はこう結論する。

「人間が使っている以上、ネットはこれ以上進化しない。十分、我々は進化させた。電話やFAXにそれ以上のものを求めず、便利な道具として今でも重宝していると同様に、ネットにもそれぐらいの期待値で接していこうよ。」

ネットはもう進化しないし、ネットはあなたの人生を変えないから。ネット敗北宣言

 ネット業界の最前線で活動された人だけに説得力がありますね。表題の「ウェブはバカと暇人のもの」というのも、「さお竹屋はなぜつぶれないか」と同様の「コピーの勝利」であると思います。
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 確かにわたしの日常でもネットで確かに変化はありました。2001年からホームページを勉強し、2002年から自作できるようになりました。当時関わっていたコミュニティFMの番組とコラボを意識し、作成した番組をサイトにアップしました。膨大な労力を費やしましたが、それほど世の中変わりませんでした。自己満足的な「千日行」であったかもしれません。

 2004年からブログも始めました。これも毎日更新しています。これはWEB LOGであり、日誌であり記録です。知人達が「あいつも元気でやっている」という生存確認記録なのです。其の程度のもの。ブログは。

 ネットやブログで全然知らない人との交流も生まれました。でもそれはネットのない時代にもありました。確かに筆者の言うようにネットに過度の期待をせず「便利な道具のひとつ」として活用すればそれは活用のしがいがあるというものです。

 「便利な記憶媒体」として今後も活用していきたいと思います。ネットの世界の現実の一端を知る書籍としては秀でていました。立ち読みではなく一読をお奨めします。

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