活用されなかった5年前の「教訓」
平成15年6月に高知市財政問題検討懇話会は、今日の財政破綻状況を正確に予見し、適切な提言を行っています。
最近「財政再建に関する地域説明会」で岡崎誠也高知市長が、市民に問題提起{解決策として固定資産税の増税・ごみ有料化)しています。しかし既に5年前にきちんとした「処方箋」は答申されていました。
なぜ実行できなかったのか?高知市当局は市民にきちんと説明する責任がありますね。
出来なかった市民参加
また懇話会ではこうした問題を市民参加で進めるべきであるとも書いています。
<市における取り組み体制>
財政非常事態に対する緊急の取り組みを進めるためには、企画財政部において緊急のプロジェクトチームをつくることが望ましい。プロジェクトチームには各部門の事情に詳しい職員をスタッフに加え、各部局に対する
事業見直しの提案を行う。具体化にあたっては、全員参加の経費削減運動など全庁挙げての取組みが必要である。また、プロジェクトチームにおける取り組みの過程はすべてオープンにし、市民の目の前で改革を進める。これによって事業の継続においても見直しにおいても市民への説明責任が明確となる。
果たしてどうであったのでしょうか?
文字ベースで辛いのでありますが、大変大事な問題が記述されている。この財政問題懇話会の提言が実行されておれば、現在市内各地でされている「財政再建に関する地域説明会」は必要ありませんでした。
この検討懇話会の存在は、高知市政に関心の高いある知人が高知市を訪ね資料のありかを教えていただいたからです。
すべては下記PDFファイルに収蔵されています。
タイトルは
高知市財政問題検討懇話会
平成16年3月
と書かれてあります。
<何を教訓とすべきか>
第一に、従来型の行財政運営の限界が明らかになったことである。特に、消費的経費、過去の政策的経費の内容に問題があり、この機会に、全ての事務事業、施策について再評価し、明確な方針を定め、改革すべきものについては、市民に選択肢を提示し、議論を尽くし、一つ一つ見直して行くことが求められる。
第二に、これからも都市施設の整備にあたって市債を起こす場合、過度の投資、ならびに完成後の維持管理費が後年度の財政圧迫の原因とならないよう留意して、起債を絞っていくべきである。特にハコ物中心の投資的経費は路整備等の基盤整備と異なり、短期的には地域経済を支える効果があるとしても、一時的な効果しかなく、整備された公共施設自体は利益を生み出すことを目的としたものではない。
むしろ、施設の維持管理費が長期にわたってのしかかるのであり、公共施設の整備にあたっては将来発生するコストも試算した上で選択しなければならない。また、21 世紀の社会資本整備については、環境面、社会面、経済面での「持続可能性」を総合的に検討のうえ進めるべきである。
(清掃工場335億円・体育施設328億円・かるぽーと196億円{維持費が年間2億円強)・土地区画整理事業(やえもん・潮江。こうち駅北)976億円)
{高知市文化プラザかるぽーと。建設費だけでなく維持管理費用が問題)
第三に、財政推計のあり方については、現在の社会経済状況から、今までの様な実績や全国的な推計を参考に、単純に歳入を推計する方法では、これからは対応できない。国の三位一体改革の動向、人口構造の変化、高齢化の進展に伴う年金・医療・介護等費用の増大、地域経済の動向と税収・雇用・生活保護等諸要素を分析し、歳入、歳出を関連させながら独自に推計する方法が求められている。大学等との連携により、早期に研究を深め、変化に対応できる財政推計の方法を確立すべきである。
第四に、財政状況に関する情報の市役所内、および市民との共有が、きわめて乏しかったという問題である。情報共有がなされていないところでは理解も得られないし、ましてや参加も得られないのではないか。
第五に、そうした情報共有が不十分な状況下、市民サイドにも、行政コストへの関心が希薄化するといった問題点もあったと思われる。その結果、一部の行政サービスが既得権益化し、さらには、行政施策における悪平等主義の蔓延、手厚い弱者対策がモラル・ハザードを助長した可能性がある。
今日の財政危機への処方箋は5年前の懇話会答申にすべて現れています。
(2)-2 財政運営上・政策上の要因
政策的要因としては、国の経済対策や財政誘導に乗った過大な投資が最大の問題である。高知市の普通建設事業費は平成元年度の293 億円から平成13 年度の567 億円に、市債発行額は平成元年度の129 億円から平成13 年度の427 億円に大幅に拡大し、その結果、公債費が平成元年度の109 億円から平成13 年度の209 億円に、市債残高が平成元年度の1,024 億円から平成13 年度の2,487 億円へと増大した。
一般会計歳入・歳出規模の2 倍近い市債残高を抱えるという状態は、他の中核市・県庁所在都市と比べても異常である。こうした過大な投資は後年度の公債費負担増となり、高知市財政を構造的に圧迫することになる。市の公債費は平成12 年度においては189 億円であったが、平成18 年度には284 億円に増大する。約100 億円の公債費負担増が財政収支悪化の最大の要因であることは明らかである。
(左から高松市、松山市、徳島市、高知市の順番です。高知市{右端)が断然借金が多い。)
高知市の財政悪化への対応が後手に回ったことも財政危機が深まった要因として挙げられる。市は、これまで三次にわたる財政構造改革の方針を打ち出し、一定の成果を上げたが、経費の節減により確保した一般財源は投資的経費に充てたため、ぎりぎりの財政運営を続けることになり、外部的要因の影響を受けるたびに収支不足状態になってしまったのである
2 財政危機の原因分析と健全化策への活かし方について
<高知市の財政危機の原因>
市の財政危機の要因を外部要因と内部要因にわけて検討してみよう。
(1)外部要因
財政悪化の外部要因としては、①不況の長期化による市税の停滞、減少や生活保護費などの支出増、②90 年代後半以降の国の経済対策の影響による投資的経費や起債の増大、③いわゆる「三位一体の改革」の影響
による補助金、交付税の削減、などが挙げられる。しかしながら、財政危機の原因をすべて外部要因に帰することはできない。
(2)内部要因
財政危機の内部要因としては高知市財政の構造的な問題とともに、財政運営上の問題、政策上の問題がある。
(2)-1 構造的要因
もともと高知市の財政基盤は脆弱である。財政力指数は類似団体や四国の他の県庁所在都市と比べ低く、また「借金」の多さに対して「貯金」の少なさが目立っていたのである。それゆえに、国の経済対策に乗って、財政能力からいってかなり無理をした過大な投資をすれば、国の構造改革や不況の深刻化・長期化などによって当初の見通しに狂いが生じた場合には、持ちこたえられないような構造になっているといえる。また、消費的経費においても高水準の生活保護率、就学前保育における保育所の割合の多さなど、構造的な高経費の要因がある。
構造的な需要増要因に対して、住民ニーズを満たしながら社会的効率を図るための政策と取り組みが求められる。
<持続可能な高知市を実現するための柔軟な行財政運営への転換>
高知市の財政危機の発端は、1990 年代半ば以降、「本格的な少子・高齢社会に移行する2010 年頃までのできるだけ早い期間内に、大規模な社会資本整備を可能な限り終了させておく」という方針のもとで大規模な投資を続けたことにある。ヨーロッパなどで「持続可能な都市」に向けたまちづくりが盛んになっていた時期に、従来型の公共投資拡大路線を継続してきたツケは大きい。各事業は「持続可能な高知市」という視点から見直しを図ることが求められる。
総合計画や実施計画の前提としている財政収支計画が崩れ、さらに「三位一体の改革」の影響や地域経済悪化の影響を受けている以上、従来の総合計画、実施計画、あるいは都市計画マスタープランに固執するよりむし
ろ、柔軟に見直すことが必要である。合併による「新市まちづくり計画」も含め、財政の裏付けなしの長期計画は現実性がますます疑わしいものになっている。これらの計画は、計画実施にともなう財政負担が自治体リストラや市民サービスの削減、あるいは市民負担増につながることを予定しているわけではない。しかし、現実には無理に事業計画を進めれば、財政収支の悪化から市民への影響が不可避になるのであるから、再検討し、転換を図ることは当然である。その際、公共性の基準に照らして、守るべきものは何か、改善すべきは何か、断念すべきは何かを明確にすることが求められる。
また、行財政運営の転換にあたっては、政策転換に向けた理念を明確にする必要がある。すなわち、これまでのハコ物中心のハードなインフラ整備は新たな整備よりむしろ維持管理・更新に重点を移行させる必要がある。
また、これまでの住民要求対応型の行政から、住民参画・政策提案型の行政に転換することが求められる。
<財政健全化計画(平成16-18 年度)について>
第三次財政構造改革における前提条件は完全に崩れてしまった。さらに「三位一体の改革」の影響は予想以上に厳しく、新たな財政健全化計画を早急につくることは当然必要である。財政健全化計画の基本方針において、改革の理念を明確に市民に明らかにすることは特に重要である。理念なき「数字合わせ」の計画になってはならない。そのためには、財政非常事態の原因が「三位一体の改革」や不況などの外的要因のみならず、基本的に
は構造的、政策的な内的要因にあることを明確にし、構造的、政策的な転換をはからなければならない。
市の最新の財政収支見通しによれば、必要な投資可能一般財源を確保するためには、平成16 年度で約63 億円、平成17 年度で約50 億、平成18 年度で約69 億円の財源不足が生じることになる。しかも、この試算はたとえば市税については制度改革による増収及び固定資産の評価替による減収分を除いて、平成16 年度以降ほぼ横ばいという仮定が置かれており、平成15年度のような市税収の落ち込みなどがあれば、さらに厳しくなる。さらに三位一体の改革」の影響はきわめて大きいものがある。平成16 年度だけで交付税等(臨時財政対策債を含む。起債償還費への交付税措置分を含まず)が30 数億円の減となることが予想される。今後、国が地方財政計画における投資的経費(単独)等をさらに圧縮してくることから、交付税等はさらに削減されるとみなければならない。
以上のことから、平成18 年度をターゲットとすれば、財政収支の改善目標水準として、単年度一般財源ベースで90 億~100 億円をみておかねばならないであろう。「財政再建団体」を回避すべきことは言うまでもない。
では、単年度一般財源ベースで90 億~100 億円もの財政収支改善を図るためにはどうすればよいであろうか。 これだけの規模の収支ギャップを解消するには、従来型の経費節減では到底追いつかない。市民との情報共有と参加のもとで、聖域も設けず、投資的経費、人件費、事務事業などの歳出面での節減、および滞納対策、市民負担の適正化などの歳入面での対策を目標とプロセスを明確にして取り組む必要がある。同時に、中長期的視点から、歳出面での構造的な問題の改善策、歳入面での課税自主権の発揮等に早急に着手すべきである。
*既に市民負担の話は5年前に出ていました。今まさに「まったなし」の状況でなりふりかまわずやっています。
<投資的経費の削減>
国の「三位一体の改革」方針において地方財政計画における投資的経費(単独)について1990-1991 年度水準に引き下げることになっていることからみても、投資的経費の水準は少なくとも1990 年代の最低年の水準に落
とすことが求められる(平成5 年度投資補助・単独事業計203 億円)。むしろ、高知市の場合にはこれまで他の都市以上に投資を行ってきたことから、国の設定水準以上の削減が求められる。また、平成16 年度において公共事業関連の国庫補助負担金が約4500 億円削減されることや、平成14 年度から公共事業や単独事業における交付税措置率が大幅に引き下げられたことからみても、投資的経費の圧縮は不可避である。財政健全化債や平成16 年度に創設される地域再生事業債は全額後年度の財政負担になるため、平成17 年度以降には安易に発行することは許されない。また、合併特例債の発行についても過大な投資とならないよう、元利償還、投資効果、維持管理費等を考慮する必要がある。
また、公共施設の建設・管理にPFI方式を使うことは長期契約にともなうリスクが大きいことと大手資本の独占によって必ずしも地域経済の活性化につながらない現状から慎重であるべきであり、一般財源不足のなかで施設整備を進める手段として安易に導入することは避けなければならない。財政非常事態においては、過去の延長線上に策定された実施計画そのものが妥当性を失う。第二次実施計画を策定するとしても一年ごとに見直しをかけることを前提にしなければならない。投資的経費は、補助事業、単独事業を問わず、震災対策など緊急不可欠
なものを除き、凍結、中止をふくめて聖域なき見直しを図るべきである。
ただし、現在、進められている3 地区での区画整理事業は、既に進捗率が6割を超えており、見直しが困難な状況である。中でも弥右衛門地区は保留地の売却を予定しており、売却予定地を完売することに全力をあげること
が求められる。施工者は市であるので、売れない場合には市の負担となってしまう。また、今後、区画整理事業における市の単独事業分が57 億円ほど見込まれており、一般財源における負担要因になっている。
街路事業については、一定の見直しが行われつつあるが、マスタープランにこだわらず、問題解決型の対応をすべきである。その際、交通量増大を前提にせず、また直線的な街路整備に固執せず、現道を生かしたり、中
心市街地における自動車交通量を抑制する大胆な施策を検討するなど、地区ごとに市民参加の仕組みを導入するなかで検討すべきである。区画整理事業、街路事業などの公共事業においては、一層のコスト削減
の努力が必要であることは言うまでもない。
*歴史資源とビオトープの新堀川にふたをして道路を建設する道路事業は(総事業費110億円)は全く必要でない事業であることが良く理解できますね。
新堀川は「埋め殺され」ました。無駄な公共事業であることは間違いない。
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