橋本大二郎氏はなぜ敗北したのか?
2009年の衆議院選挙の高知1区で橋本大二郎さん(無所属)は福井照さん(自民党・3期)に破れました。どの調査でも「優位」であった橋本大二郎さん。わたしも当選するのだろうと思っていました。負けたのは正直意外でした。
考えられる原因はいくつかあろうと思います。私自身の独断と偏見で少し考えてみたいと思います。
1)「連合」をせず単独で小選挙区を勝利するのは難しい。
高知県内で「反自民・公明」の統一戦線が全く構築できませんでした。1区で言えば、橋本氏(無所属)+田村氏(民主)+春名氏(共産)を合わせた票数は、福井氏(自民+公明)票数の2倍以上ありました。
福井 照(55)自民・前(公明推薦)当選 44,068
橋本大二郎(62)無所属・新 39,326
田村久美子(50)民主・新(国民新推薦) 38,117
春名 直章(50)共産・元 13,072
桃田 妙子(49)幸福・新 890
橋本+田村+春名 =90724票
つまり橋本+田村連合、もしくは橋本+春名連合でも1区の選挙は勝っていました。
自公が結束しているのに、攻めるべき野党側が「ばらばら」。その状態では小選挙区では勝てないでしょう。
対照的に高知と同じ「貧乏県」である沖縄県。こちらは小選挙区は野党候補が4つの選挙区で全勝。比例も野党が議席を獲得しています。3年前の県知事選挙、2年前の参議院選挙の折、沖縄では全野党共闘が成立していました。その「成果」が沖縄では現れたのです。
沖縄の声 新政権に/衆院選 当選5氏座談会(沖縄タイムズ)
高知では民主党も小選挙区で勝てないし、公明党も共産党という組織政党ももはや小選挙区での当選は無理になったようですし。(公明党は今回の総選挙では小選挙区も候補者は全員落選。)
ですので「なんらかの連合」しないと小選挙区で勝ち抜けないのが確定したようです。
「選挙に強かった」橋本大二郎さんでしたが、単独行動では小選挙区を制することはできなかったのです。
2)既に橋本大二郎さんは「過去の人」になってしまっていた。
4期16年お勤めした高知県知事。退任したのは2007年12月。1年8ヶ月前です。「前知事」としての印象が残るのはせいぜい半年程度。「人の噂も75日」の例えもあります。
情報過多の現在では、県知事を退任された2007年12月は「遠い昔」の時代です。退任されてからとんとメディアにも顔が出ませんでしたし。退任と総選挙の間が想定外の長さになった影響も大きいでしょう。
ご本人が選択した「無所属候補」では顔入りの政党用のポスターも街頭にも貼れず、動きを市民に告知する方法も限られていました。それを承知で無所属を選択されましたが、より本人の動きを市民に伝達する方法手段を個人ブログ以外に事務所も含めて開発すべきであったと思います。
3)政策がわかりにくい印象がありました。
県知事時代のスローガン「脱官僚」「県民主導主義」は、大変わかりやすかったです。今回国政に挑戦する橋本さんの政策は「地域主導主義」「国と地方とのあり方を改める」というものであり、どの政党も同じような意味のことを言っていました。
「堂々たる日本」「堂々たる高知」のスローガンも同じです。
橋本大二郎さんは2大政党の自民党にも民主党にも所属はしないし徒党も組まない。「みんなの党」の渡辺喜実代表も応援演説に来ましたが、すぐに参加するわけでもない。つまり国政での「立ち位置」が橋本さんは不明確でした。
有権者には橋本さんの言わんとしたことは理解できるものの、「では国政の場でどう実現するのか」という疑問が常にありました。橋本さんへの期待感が大きい人ほどその疑問(というか疑念)はあったと思います。
「当選した後で明らかになる。」という事も言われていましたが、それでは説明したことにはならなかったと思います。
4)草の根や市民活動家を大事にしなかった
わたしが昨年3月頃に高知市堺町にある橋本事務所を初めて訪問したときです。当時事務所に居た見知らぬ女性に「あんたは何しに来た!橋本はお金がないんです。お金を持ってきてください!」とか訳のわからないことを言われていました。どうしてそんなことを言われたのか、こちらはよく事情はわかりません。
一昨年の12月の知事退任式で目撃して以来でしたから、どうされているのか様子を伺いに行きましたら、そういう応対です。びっくりしました。草の根の人たちや、市民活動家もこれでは橋本事務所へは寄りつけません。結集することはできません。
どうして訳のわからない人が橋本事務所に大きな顔をして居座っていたのか未だに不明です。あの発言と態度では皆引いてしまいますね。結局草の根の人たちも、市民活動家の人たちも県知事選挙のときのように大々的に結集することなく衆議院議員選挙は終わってしまいました。
また最初に「橋本大二郎事務所秘書」という名刺をいただいた人にしても、草の根や市民活動とは全く無縁の政治活動履歴の人。従来の自民党地方政治に詳しいという「政治のプロ」を標榜する人でした。
しかし今回の選挙結果を見ますと、「自民党を割る」「自民党の支持層に手を突っ込んで橋本さんへの支持を広げる」ことをその「プロの人たち」は全くしていたようにはありません。やっていれば結果は違っていたとは思いますが・・・。
県知事選挙のときはいくら橋本さんの相手候補者を推薦をしている業界団体でも必ず「割れて」一部は橋本さんを露骨に支持していました。建設業業界も医師会なども今回の選挙はすんなりと福井照さん支持できちんと固まっていましたし。橋本さんへの「支持票」は殆どなかったと思います。
個人ブログ記事「橋本大二郎事務所を訪問」
頼みの草の根グループも全盛期の結集には程遠く、自民党の組織型選挙を打ち崩す工作もまるで橋本事務所はしていないようでした。これでは組織選挙で脇を固めている自民・公明連合体を打ち崩すことは出来ませんでした。
「県知事の1期4年間の経験は、代議士2回当選分に等しい。」といわれたのは田中角栄氏。4期16年(つまり8回当選代議士と同等)の経験を積み重ねた橋本大二郎さんが当選しなかったのは、高知県にとっては「とてつもない」マイナスであると思いました。
敗因の分析は以上です。橋本大二郎さんは今後どうされるのでしょうか?
(利害損得で動かない真摯な草の根の人たちは橋本大二郎さんを忘れることはないでしょう。知事退任式で)
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