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2009.11.16

「私の行き方 考え方」を読んで

Matushitahonmm
 「わが半生の記録 私の行き方 考えかた」(松下幸之助・著・PHP文庫・1986年刊)を読みました。
 今日本経済は元気がありません。未曾有の大不況と言われ1年経過しました。うちの周りを見ても忙しくてたまらない。うはうはだとかいう会社は見当たりません。

 以前どこかで読んで、座右の言葉にしていた文言をこの著書で見つけることができました。

 時代背景は昭和初期。順調に発展していた松下電器。生産拡大のため銀行融資を要請し、認められ新工場を建設し稼動し始めたとたんに大不況。生産は半減。工場は在庫で埋まってしまう。しかも松下幸之助氏は体調を崩し入院。そのときどうしたのか?

「生産は即日半減する。しかし従業員は1人も解雇してはならぬ。その方法として、工場は半日勤務して生産は半減。従業員は日給の全額を支給して減収しないようにする。その代わり店員は休日を廃して全力を挙げてストック品をの販売に努力すること。
 
 かくして持久戦を続けて財界の推移をみよう。さすれば資金の行き詰まりもきたさずに維持が出来る。半日分の工賃の損失は、長い目で見れば一時的の損失ではない。松下電器はますます拡張線物と考えている時期に、一時とはいえせっかく採用した従業員を解雇することは、経営信念のうえにみずから動揺をきたすことになる」(一般的不況とわが社の発展 P222)

 時代背景は現代とは異なりますが、昨年以来不況ということを口実に、簡単に派遣や季節工を切り捨てた輸出型大企業(キャノン他)の経営者とは器が違うようです。

 当時の社会情勢は、昭和初期で濱口雄幸内閣の緊縮政策のおかげで不況一色でした。各省庁も文明の利器である自動車を廃止または縮小しその緊縮ぶりをもって国民の範とする傾向がありました。松下幸之助さんは、それではますます不況になり、失業者が増えると断罪されています。

 知人の資産家も世の中みんな緊縮ムードで、日々の生活にも事欠く人々が増えてきたから、堂々と家を新築するのははなはだ気が引けるから、当分新築をやめようとの相談を受けたそうです。松下さんは即座にこういいました。

「それはよくない考えかただ。この不景気こそ、君らのような資産家が建築をなすのべきだ。君らのような人が手控えしていては、第一、大工や左官の職を持つ人はなんによって生活するか。
 ただただ不景気をかこち、困窮し、はては世を恨み、いわゆる君らのような金持ちをのろうということになるのだ。
 君はこういう時代の時に家を建てたら世の非難を受けると思うが、それは真にものを理解することのない人たちの批難であるから心配はいらぬ。

 よしまたは多少の批難を受けるとも、真に世を思うならば犠牲的な精神でその批難を享受したらよいではないか。そうすることによって、多くの人に職を与えて人を喜ばし、君自身は非常に安く家を建てられるのみならず、丁重懇切なよい仕事をしてもらえることによって、一挙両得という結果を得るのだと僕は思う。」(P241)

 不況期のお金持ちの心得を松下幸之助さんは説いています。リーマン以後の不況は、なにより、品格あるお金持ちがいなくなったことに原因があるのではないか。自分さえよければ、たとえ餓死者が出ても平気。それが自由主義だという新自由主義がすべてを破壊しました。

 松下電器もパナソニックとかに社名を変え、松下幸之助さんの精神を打ち捨て、従業員を解雇し、「並みの大企業」になりました。

 やはり不況を乗り切るのには、経営者の理念と信念が必要であると強く思います。

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