短篇小説「杜子春」を読んで
芥川龍之介短編集を図書館で借りてきて読みました。「杜子春」を読んだのは、小学生以来ですので40数年ぶりでした。芥川龍之介や夏目漱石は「お子様向け小説家」のように誤解されているが(教科書に載っているから)、とんでもないです。
平易な文体で書かれていますが、なかなか奥行きがあります。
「杜子春」は親の遺産で遊び呆ける愚かな若者。やがて資産も使い果たし、行き倒れ寸前に。そこへ不思議な老人が現れ、あすにでもどこそこを掘り返せば宝があり大金持ちになると。事実そのとうりに。大金持ちになり遊ぶが、やがてまたもともホームレスに。もう1度繰り返すがもとの木阿弥に。
今度は老人のような超能力者になりたいということで、願い出る。そしたら「どんなことがあっても口をきいてはならぬぞ。」との言いつけ。
やがて地獄に行く。そこには畜生道に落ちた亡くなった両親がいました。馬の姿をしていましたが間違いなく母親。鬼たちは鉄の鞭で打ち据える。倒れても母親は庇おうとする。老人の言いつけがある。でも打ち据えられる動物に変わり果てた両親を前に黙っておるわけにはいけない。「お母さん!」と叫んでしまう。
すると場面は路上に戻っている。不思議な老人が「お前がもし黙っていたらただではすまなかった。山のほとりに農家がある。畑もある。そこへ行き暮らせば良いだろう。」と老人はいったそうです。杜子春は言いつけどうり、そこで暮らしたという。という話でした。
親子はいくつになっても、どのような立場になっても親子。特に最近そう思います。子どもたちは成長し、両親は高齢者に。でも情は変わらない。それを思い出させてくれた名作であると思います。
| 固定リンク
コメント