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2010.07.14

辛淑玉さん講演会を聴講

Shinkouenkai


 昨日は午後から,高知市と高知市教育委員会主催の「部落差別をなくする運動強調旬間」の講演会がありました。今回の講師は辛淑玉(しん すご)さんでした。
 昔関口宏の「サンデー・モーニング」とか言う番組の辛口コメンターで出演していたような記憶があります。そういえば最近姿を見ないなと思ったことでした。

 昨晩は激しく雷が鳴りました。怖いのでパソコンを消しました。それでレポートをアップするのが今日になりました。

 この講演会は高知市と取引関係のある企業関係者の,人権に関する義務講習会でもあります。午後から会場の県立美術館ホールへ行きました。

 講演はさすがに上手い。パワーポントも使いながら座ってするのかと思いきや、ワイヤレス・マイクを手に持って参加者に意見を聞きながら行うやりかた。通常この種の講演会は眠くなるものですが、辛淑玉さんの講演会は時間がすぐに来てしまった。

 同じ在日コリアンだったつかこうへさんの逝去にも触れられていました。
「在日は居場所がないのです。いくら経済的に成功しても。だから彼は死んだら日本と朝鮮との間の玄海灘に散骨してほしい。と言ったのです。」

 辛淑玉さんの生い立ちも凄いと思いました。子供の頃は家が貧しく、朝鮮学校へ行けば給食が食べられると思い行ったが、Gパンを履いていたというささいな理由でいじめにあったりして、そこにも居場所がなかったとか。

 彼女の独特な世界観は、生い立ちのなかで鍛えられたのでしょう。それを明るく,さりげなく問題提起するところが真骨頂なのでしょう。

 パワーポントの中に写真があり,参加者から選んでもらうやりかたで話を進めていきました。

 まず最初に「女性たちが変わってきている.大きな変化。母乳を飲ませられない女性が増えている。それはなぜか」という問題。

 理由は思春期からブラジャーを着用する。それで絞めつけるから、子どもができて乳を飲まそうとするときに乳首が変形して子どもが飲めない。なぜか?

 女性たちは世の男性の視線を気にして、生きているから。「女性らしさ」に縛られている。でもその「らしさ」から逸脱するとそこに差別があるのです。
 私たちは日常生活で,無意識に「らしさ」で自分を枠の中にはめている。

 次に「市営住宅」の写真で説明がありました。

 「みなさん今は市営住宅ですが、その昔は解放住宅と呼ばれていました。同和対策が進行しますと、解放住宅に同和地区以外の住民も入居することができるようになりました。
 市営住宅を観察していますと、ここは地区外の人が2割だなとか、ここは5割だなということがすぐにわかります。なぜでしょうか?」と辛淑玉さんは会場に問いかけます。

 いくつか回答がありましたが正解はありません。

「正解は市営住宅がきたなくなるのです。」

「同和地区の人達は長らく汚いからと差別されてきました。常に掃除をして綺麗にしていないと叩かれるからです。そういう強迫観念で生きてきたのです。」

「かくいう私も焼肉やキムチは金曜の晩しか食べないことに気が付きました。朝鮮人はにんにく臭いという日本人の視線をいつのまにか意識して,金曜日に食べても土日の休みで臭いは抜ける.月曜日からは普通に働ける。なんていう生活に慣らされていました。

 ソウルへ行ったとき月曜の朝から皆キムチを食べていました。自分は押し殺して日本社会で生きているのだなと思い知らされました。」

「姜 尚中(カンサンジュン)さんも、野中広務さんも、どんなに強そうに見えても不安があり、自分を押し殺しています。常に内的緊張を強いられています。なにかあったら差別されるのではないか。」と。

「宅間守、宮崎勤、畠山鈴香、光市母子殺害犯の少年、奈良の医師宅放火殺害の少年、その共通項は「親からの暴行と虐待を常に受けたきた」ということです。
 人間は自分の思いどうりに生きることはできない。幼児期からの虐待の中で人間が壊れてしまったのです。」

「わたしはたまたま理解者に恵まれ、教育を受ける機会もあり、成功することができました。同じ境遇,同じ環境で育ったのに弟はヤクザになりました。そして必死で脱会させましたが、精神が壊れ今は入院しています。」

「少数者は,マイノリティの人は、綺麗で美しく,賢くないと救済されないのです。叩かれ続けたら根性が曲がるのは当たり前です。」

「和歌山カレー事件の林真須美被告。この人は人に嫌われる個性の人です。保険金搾取では天才的な人で、豪勢な生活をしていて近所から浮いていました。
 そしてカレー事件の犯人とされましたが、何一つ物証はありませんし、本人も認めていません。あるのはあいつが犯人に違いないという口コミ証言だけ。

 林真須美被告の夫は、あいつは金にならないことで人は絶対に殺さないよと言っていました。

 林被告の娘さんに会いました。母親の記憶がないと言います。彼女は母親の存在を消さないと生きていけなかったのです。。」

「日本社会は権力者がこいつが悪いと言えば大衆は叩く社会です。多様な人間がいる社会を認めようとしない傾向が強いです。」

「障害を持っている人も生きにくい社会です。多くは薬漬けになり、常に内的緊張が強いられる生活を24時間しているからです。」

「明治生命がダウン症の子供と両親の写真を使用したCMを流していました。その子供は6年で亡くなりました。

 自分ところの生命保険は障害をもった人に生命保険にはいらさないくせに、なんと偽善的なCMであると最初に腹をたてました。」

「でも落ち着いて考えますと、たとえ保証料がすくなくても、障害を持っている人達も安心してはいれる生命保険を提案すべきであると思うようになりました。そうしなければ社会はかわらないのです。」

 なかなか考えさせられる講演会でした。

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