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2010.08.18

勝間和代VS香山リカ・対談

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 図書館で「勝間さん努力で幸せになれますか 勝間和代 香山リカ」(朝日新聞出版・2010年1月刊)を読みました。

 この数年やたらメディアに出まくりで「突出」している勝間和代氏。大変能力のある人で、番組を主催したり、はたまたレポーターになったり、講演をされたり、移動は自転車で行くとか。私生活でも3人の子供を育てておられるし、2度離婚されたり話題に事欠かない。

 香山リカ氏は、よくメディアに登場する精神科医。両者はキャラクターでは対照的。

「市場万能主義に基づき、複雑な世界を見通しよくわかりやすく変換していきながらく、そこで生まれた勝者や強者をもっと強くしていく。この流れは長期的には決して世界を、人間を幸福にするものではないということは、00年代の前半から診察室で起きていたうつ病の激増、自殺者の”高止まり”を見ても十分予測できた。

 診察室で「もうおしまいです」と泣きながら肩を震わせる人を見ながら。「なぜ、こんなやさしくてよい人が、”負け組”などと呼ばれなければならないのか」と私はいたたまれない気持ちになった。」(P13 香山リカ)

勝間「努力をすると、より簡単に幸せになれるということです。私はわりと近道を教えるつもりなんですね。人間は試行錯誤をしながら学んでいかなければなりません。

 どんなに近道を教えても絶対に試行錯誤はするんですけれども、ガイド付きの旅とガイドなしの旅だと、ガイド付きのほうが多少でも迷う確率が減るんではないかという、それぐらいのイメージなんですよ。」(P64「努力はたのしいか苦しいか」)

勝間「強制的に週40時間労働に規制すべきです。いわゆるノー残業デーの導入や、夜8時以降はオフィスを停電にさせてしまうという形で、先進企業は労働時間の規制をすでに始めています。

 結局、何が1番の問題かというと、時間が有限であるという概念が、日本企業や日本人の1人1人に非常に希薄なことです。

 エネルギーよりなによりも時間が1番の希少資源です。企業が従業員の時間を使いこなしてあげて、従業員の1人1人がちゃんと自分でポートフォリオを組んで時間を使えるようにしていかないと、結局はみんなが不幸になってしまいます。」(P97「仕事でし幸せは得られるか」)

香山「小学校の時の担任の先生が、いつもジャージーにすっぴんで、まったく仕事以外のことには興味がなくて、生涯独身です。といった雰囲気だったんです。

 当時は、「あの人は職業婦人だから」と言われてむしろ尊敬されていました。教職に身を捧げたということねね。

 女性政治家でも、かつては結婚していなくて子供もいなくて、ファッションもワインも知らないけれど、私は政治に生きていて、憲法と結婚しました、などということで社会で容認されていたように思うんです。

 でも女性の社会進出が進み、勝間さんのようにすべてを手にしているロールモデルに登場したことで、仕事以外でも手を抜かず、全てを犠牲にせずあらゆる方向から努力して、さらにフェミニンでもなければ、と社会の許容範囲が狭くなっているのではないのでしょうか。」(P124 「すっぴん独身の”職業婦人2は認められない」)

 勝間和代氏は「己の努力で人生どうにでもなる」と言い切ります。香山リカ氏は「努力できない人、最初からハンディのある人はどうなる。社会の許容範囲が狭くなるので、うつ病がどんどん増えていく」との見解。
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 議論は最後までかみあいませんでしたが、それなりに読んでいて面白かったです。「やり手の女性」のモデル=成功事例が「勝間和代」。なりきろうとして疲れる事例が多いとか。でも本人はノーマルで、自分の存在に「普遍性がある」とは言ってはいません。

 自殺者3万人。うつ病が増加している日本社会。多様性を認めようとしない、狭い向上心や自己実現マニアに陥らないようにしないと。それほど人生は単純ではあるまい。

 勝間和代氏の「時間は希少資源」という考え方には賛同できますね。

 暑い中でもなんとか読める(父がゴルフの打ち放し場で練習している合間に読めました)書籍ではありました。

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