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2010.10.08

「龍馬読本」を読んで

Iryoumadokuhonhyoushi

 「龍馬読本 生誕150周年(1985年)」(入交好保・著・龍馬生誕150年記念事業実行委員会・刊・1985年)を図書館で借りてきて読みました。

 著者の入交好保氏は、昭和3年に青年有志たちとともに高知市桂浜に坂本龍馬像を建てた人です。著書「忘れえぬ人々」は感動的な著作でした。

 参考ブログ記事 「忘れえぬ人々を読んで」


入交好保氏が「龍馬読本」を書いたときは81歳でした。迫力のある高齢者でありました。当時の「坂本龍馬生誕150年記念事業」の運動でも際立ったものでした。

 はしがきに

「かつて昭和のはじめ土佐の青少年諸君ともに桂浜に龍馬先生の銅像を建てた私は、昭和60年、坂本龍馬先生生誕150周年に当たり、この「龍馬読本」を書いて若い人々に残します。

 やがて来る21世紀に皆様が強く正しく生きるために、何らかの足しになれば幸いです。

                                   昭和60年3月   入交好保 」とありました。

 坂本龍馬の生い立ちから成長過程、雄飛する姿を読本として平易に記述されています。特筆すべきは「自由民権のルーツ龍馬」の項目です。以下少し長いですが引用させていただきます。

Ryoumadokuhonnakamihon


 引用開始

 高知県春野町出身の偉い学者に小島裕馬(1881-1966)という文学博士がいた。この人の書いた「中江兆民」という本の書き出しにこうある。

「明治の民権運動は坂本竜馬に始まる。といえば事柄はいささか奇矯に聞こえるかも知れぬが幕末維新の見逃すべからず一しゃくとして、また日本民権運動の前史として私はこのことをまず指摘しておきたいと思う。それはこういうところからである」(以下原文のまま)

 以下小島博士の説くところを要約すると、幕末の世論は、徳川幕府が倒れた後には薩摩か長州が徳川に代わって政権を握るであろうと考えていた。

「もしあの時幕府に対し、武力倒幕が行われていたとすれば、徳川家没落の後に来るものは必ずや薩・長二藩の争いであっただろう」と指摘し「このことを考えると無血革命ということの意義は実に大きい」と述べている。以下原文のままつづけると

「坂本は1面において互いに反目する薩摩と長州を結びつけ、今にも薩・長連合軍が倒幕の火ぶたを切ろうという大きな圧力を作り上げておいて他の1面では後藤象二郎を使って山内容堂を動かし、慶喜に迫って大政を奉還させ、鎌倉以来700年にわたる封建制度をば、一兵も動かさず1人も殺さずして一朝にして瓦解に導いたばかりでなく、徳川没落後起こり得べき薩・長政権の跋扈をも予め封殺してしまったのである。

 その手腕は相当大きいものがあるといわなければならぬ。ひとは江戸城明け渡しが血を流さずすんだのは勝海舟と西郷隆盛のおかげであるといって賞賛する。たしかに勝も西郷も人物としては非凡であり、それぞれが違った意味での或いは坂本より偉いところがあったかとも思われるが、その為しとげた仕事の含みからいうと、江戸城の明け渡しなどは坂本のやった無血革命とは到底比較にはならないのではないか。

 しかも坂本の功績はそればかりではない。それは徳川を倒す手段のものの中に、すでに将来の建設に対する指針も寓し、そこに維新後の民権運動の端緒を置いたという点において更にその識見が高く評価されて然るべきものが存するのである。」(以下略)

 次にご承知の数年前に亡くなった平尾道雄氏の名著「自由民権の系譜」の書き出しを紹介する。

「近代日本の憲政史を考えるものはいわゆる土佐派の自由民権思想とその運動を見落とすことなく、土佐派の自由民権思想を論ずるものは、その先駆者として、かならず坂本竜馬の名をあげる。(1867ー慶応3年)6月土佐藩船「夕顔丸」で後藤象二郎と長崎から大阪へ航海中、船中でしたためた八策が日本近代化の方向を明確に示唆したものと認められるからである」

 以下船中八策をあげてこのことを説いている。私は思う。近代日本史において土佐人が果たした大きな役割は明治維新と自由民権であろう。そしてこの2つともわが坂本竜馬が、その先駆をなしていることを思う時、限りなく栄誉と興奮をおぼえるではないか。」(P63)

 社会運動をされてこられた入交好保さんの言葉は金言ですね。

 「竜馬読本」の27Pにある歴史の登場人物と坂本竜馬との年齢差表は面白い。参考になります。

Nenreisahyou

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