「日本人を考える」を読んで
古本屋で「日本人を考える」(司馬遼太郎対談集・文春文庫・1978年刊)を購入し一気に読みました。司馬遼太郎氏のあとがきは、1971年に書かれていましたので、ちょうど40年前の対談であることが驚きでした。
専門分野の異なる人達との対談であり、まとめられています。対談者は、梅棹忠夫、犬養道子、梅原猛、向功隆、高坂正尭、陳舜臣、富士正晴、桑原武夫、貝塚茂樹、山口瞳、今西錦司らそうそうたる人達でありました。
一部だけ引用します
司馬 まあ、今の学校教育は、いまの文明を肯定したかたちで伸ばすというか、国家単位でいえば、すぐ利益に結びついていくというものですね。
松陰、洪庵、子規などとは別の文明を自分の場所から育てようとしたひとびとですね。
今西 まあ、いまの大学では、100人、200人の学生を前にしてマイクの講義でしょう。あれではどのようにえらい先生が講義しても、その影響力が薄まってしまってダメですね。やはり個人接触でないと。」
司馬 やはり塾ですね。
今西 しかしまあ、教育の無価値論も考えておかんといかんでしょう。
司馬 どういうことですか。
今西 生まれつき才能のある人間は、どこにいても伸びるんや。(笑い)だってそうでしょう。釈迦やキリストのような人は、いったいどこの大学卒業したんや。(笑い)
引用終わり「人類を救うのはアフリカ人 今西錦司氏との対談 P309)
対談は40年前ですが、今読んでも全く古びていません。それは聞き手である司馬遼太郎氏の歴史観・世界観がしっかりしているからでしょう。なるほどと思いました。
ローカルレベルですが私も8年間対談番組をラジオでしていました。対談はもう5年前に終わりましたが、ホームページの対談集を読み返しても古さは感じません。自分とは専門領域の異なる人達の話を傾聴することはとてもよいことです。世界観が広がりましたから。
40年も前でありながら古さを感じないということは、今更ながら司馬遼太郎氏に凄さを感じるばかりです。
「連合赤軍と新自由主義の総括」というテーマの参考書になりました。
どちらも狭い世界観で世界を仕切ろうとした無理がありました。異質なもの、異質な考え方、世界観を受け入れ、共存していく道の提示こそが解決策であると思います。それは「言うはやすし」でしょう。でも本気で実行する気構えが市民1人1人には必要であると思います。
| 固定リンク
コメント