「千尋と不思議の町」を読んで
「千尋と不思議の町」(千と千尋の神隠し徹底攻略ガイド)角川書店・2001年刊)を図書館にて借りてきて読みました。
1月に日本テレビの「金曜ロードショー」にて「千と千尋の神隠し」(スタジオ・ジブリ・2001年製作)を鑑賞していました。10年前の作品ですが、当然古いとも思いません。人間が殆ど登場しない架空の話なのですが、なんか存在感があります。
スタジオ・ジブリを創業以来引っ張ってきた宮崎駿氏は対談のなかでこうも言っています。
宮崎「テーマとかメッセージなんてものは「道路の左側を歩きましょう」とか、「右側歩きましょう」とかいう標語みたいなものですから、映画を作る現場にとっては何の意味もないです。
(中略)
よく、「自然を大切にというテーマで映画を作ってください」とか「ゴミ問題を扱ってゴミ怪獣が出てくるのはどうでしょう」っていう手紙がくるんですけど・・・・
最低ですね。そういう脳みその表面で思いついたようなことは、映画づくりには何の役にも立たないのです。
たとえば今回の映画で、お父さんとお母さんが豚になるっていうと、すぐ「それは風刺だ」「飽食のせいだ」とか言われるんですけど、言った人がそれで安心するだけなんです。
謎を解いたつもりになって。むしろそういう風に映画を受け取られると、僕らが作ったものを矮小化して受け取っているなと思って、本当のことを言うと嬉しくないんです。
映画作りというのはそうではなんです。自分でわかって、それは実は、思い出したくないから自分でしまっていたブラックボックスだったりすると・・・・・・。
そういう部分がないと映画なんてつまらないです。
確かに言葉で整理しないと自分が受け止めたことにならないという脅迫観念をもっている人達がいっぱいいます。その人達は観客ではないんです。
その多くは物書きですから、仕事で文章を書いて稼いでいるんでしょうから、どうでもいいです。」(P40「宮崎駿ロングインタビュー・「この映画が作れて僕は幸せでした」)
宮崎駿氏はなかなかの「こわもて」でありますね。評論家(プロの)が大嫌いであるというのもわかります。表面的な思いつきを排除していくのも、「とっても好ましい考え方」であると思いました。
またこの映画に登場する建物は実在の建物のモデルがいくつかあるというのも興味深いことでした。 古い日本の洋風建築から登場する建物はあるようです。(P46「擬洋風建物探訪記」というコーナーも面白い)
「これは建築学的には非常に正しい画です。内部の骨組みや梁などの辻褄がきちんとあうようになっている。架空の建物の絵をこれだけきちんと描ける人は、安野光雄さんと宮崎さんくらいしか知らないな。」(東京大学生産技術研究所教授・P46)
一見洋風建築に見えるが、屋根の瓦や欄間、二階のベランダの手摺や壁の造作など細かい部分は日本の伝統技術が見られるのだ・」(P46)という観点もあるようです。
両親がレトロな商店街に迷い込みますが、それは今も東京の下町に現存する一見洋風建築風の建物らしい。それが映画では存在感がありました。
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