「科学者寺田虎彦」を読んで
「科学者寺田虎彦」(宇田道隆 編・著・NHKブックス)を読みました。昭和50年(1975年)の出版ですので36年前の著作本です。
科学者であり文学者であった寺田虎彦氏。夏目漱石の門下であり、物理を東京大学で教えていたらしいという程度の知識。あるいは@災害は忘れた頃にやってくる、」でしたか、そんな格言に出てくる人。そんな印象でした。
主に、寺田虎彦氏に授業を受けて影響を受けた科学者や研究室で指導を受けた科学者、弟子である教授からの指導から見る寺田虎彦像が多くの学者から語られるいる本でした。
物理学にはまったく無縁ですので、ほとんど理解はできない私ですが、防災問題に対してだけは関心があります。地震が物理学の範疇であったことも初めて知りました。
ここで「防災科学について」という項目の中で、こう書かれた記述がありました。
「先生の論文そして随筆において、台風や地震などの災害について書かれたものはかなりある。災害が起こったとき自身調査に行かれた所見などを含め、それぞれにその時代に適応した防災対策と防災科学の推進を述べておられるが、そのうちで昭和9年9月に関西地方に大風水害を起こした室戸台風の直後に書かれた「天災と国防」は、この方面の代表的と見られる一文と思われる。
この報文においては先生は、日本は古来台風や豪雨や地震に見まわれ、そのたびに大きな被害を受けて来た国であるが、近年に文化が進むに従って、その災害が増加にあること。そして平成からそれに対する防御策が一向にはかどっていない原因は”そういう天災が極めて稀にしか起こらないので、丁度人間が前車の顛覆を忘れた頃。後者を引き出すようになるからであろう”と延べ、更に"被災者の状況を見ると古い村家が存外平気なのに、新開地の新式家屋がひどく破壊されている”ことに注意を向けられ、終わりに”日本のような国では、科学的国防の常備軍とおうべきものを設け,天然の敵から国を護るべきである”と書いておられる・」(P23 「防災科学について」)
77年前に寺田虎彦氏の指摘した現実が、全く今の防災対策に活用されていないと、いまさらながらに思いました。なんとも嘆かわしい現実であります。
南海地震が襲来すれば、海の底に沈む高知市二葉町。役所関係者の意識の低さ、「危機感のなさ」「他人事の発言」に腹を立てながらも、なんかと事態を打開するために粘り強く各方面に働きかけて行きたいと思います。
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