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2011.10.12

「吉本隆明の声と言葉」を読んで

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 「吉本隆明の声と言葉」(編集構成・糸井重里・ほぼ日刊糸井新聞・2008年刊)を購入して読みました。1500円もしました。吉本隆明氏の29の講演がCDになかに入っています。必ずしも音源は良くはありませんでした。

「猫は「移動する耳」という役割をしながら、自分の家の主人公の部屋とか、台所とか、そういうところに忍び込んだり、人の家の庭で聞き耳を立てる。そういう形で作品が展開していくわけです。」(1990年「渦巻ける漱石」)

「この主人公を描く裏には、かなり陰惨とした漱石の精神状態の危ない時期が潜んでいると考えたほうがよろしいと思います。

  中略

 明治時代中期に書かれた小説が、今でもなんとなく悪童小説して通用しちゃうという、それだけの永続性というのは、その場限りの言葉のあやみたいなことでは、たぶんダメなわけです。」(1993年「青春としての漱石)

 糸井重里氏と吉本隆明氏の対談も面白い。
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糸井「企業のほうはどんどん速くすることがサービスだと思うし、効率もいいから回転が速くなったいますね。

 本はインターネットで注文したらすぐに手に入ります。古い本だって、たやすく手に入ります。おかげでどんどん買っちゃうんです。そうするとインプットの材料だけが家の中に溜まります。自分が読めっこないもんだから、これもまたすごくストレスになっていくんですね。」

吉本「そうそう、そういうことです。古い本を自分でいちいち歩いて探したら大変ですが、今は、遅れても数日間でなんとかなります。」

糸井「その速度にあわせて仕事しなきゃならないんですね。」

吉本「自分は溜まりに溜まっていらつく。仕事が遅れるから人にもいらつかれます。自分で自分にあたってしまう場合には、極端になっていけば病院行きでた、ということになりますね。」(速度が統制するもの)

 「町の循環速度と自分の精神的な速度とが合わなければ,人はいらだちます。
 それが凶悪と言われるような犯罪が起きる真の理由です。」

 本のCDには、1968年から1996年に録音されています。1980年代後半から」90年代が多い。

 吉本隆明氏は、1924年生まれ(大正13年)なので、今年87歳。母より1つ年上です。糖尿病で足が悪く歩けないようです。介護度は2か3ですね。年齢が年齢だけに「もしも」のことがあるだろうと思い1500円出して購入しました。音源で聞く吉本隆明氏は「あいかわらず」何を言っているのかわからない部分もあります。文学論はいいんだですが、社会論はわかりません。

 1976年の品川公会堂での「ブント叛旗派解体集会」で目撃したことがありました。三上治氏と神津陽氏がなにやら対立していたようで、その後叛旗派は消滅してしまいました。変な武力闘争もなく分裂し消滅してしまいました。そのあたりは従来の「陰湿な」新旧左翼とは一風変わっていました。

 それから35年。日本の行く末、社会論、世界観をきちんと語る政党も、党派も社会運動も現れませんね。
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