「全貌 ウィキリークス」を読んで
「全貌 ウィキリークス」(マルセル・ローゼンバッハ、ホルガー・シュタルク・著・赤坂桃子・猪俣和夫・福原美穂子・翻訳・早川書房・2011年2月刊)を図書館で借りて読みました。
著者2人はドイツのシュプーゲル誌の記者。何かと謎の多い「ウィキリークス」創始者のジュリアン・アサンジ氏の密着取材からこの著作を書いたようです。
コンピューター用語やそのシステム上の解説が多く、そのあたりに疎い私には解読不能な箇所もありました。
ジュリアン・アサンジ氏は1971年オーストラリア生まれ。「新左翼と1968年世代」の両親の元、転居を繰り返し、ヒッピーなような生活を繰り返し、地域社会から浮いていたようです。転校を繰り返し、時に自宅学習をする生活をしたそうですが、物凄く知能の高い子供であったようです。
1987年にはパソコン前世代のコンピユーターを使いこなし、90年代には有名なハッカーとして登場したようです。それだけのItの能力がありながら、金儲けには執着せず、政府公電の情報公開などに心血を注いだウィキリークスという情報公開サイト、内部告発サイトをたつあげるという歴史に名を残しました。
最近ではスウェーデンで2人の女性に性的暴行を加えた容疑で逮捕されましたが、保釈されています。全世界に彼のシンパがいて、泊歩いているので、ホテルに殆ど泊まらない生活。これも生い立ちの影響かもしれません。特異な人物です。
ウィキリークスを世界に知らしめたのは「イラク戦争での民間人殺傷場面の動画の公開」です。2010年の4月であったでしょうか、米軍ヘリに乗っていた兵士が、イラク市民やローター通信の記者を銃撃し殺害した事件です。記者の背負っていたカメラを対空兵器と誤認した米軍兵士が銃撃し、民間人を殺害しました。
「しまったやっちまったぜ・まあいいか」という米軍兵士の会話記録まで公開され、全世界に衝撃を与えました。
つまり2001年の9.11以来報道管制を繰り返し、「テロとの闘い」を大宣伝していた米国政府にとっては、「言っていることと、やっていることの食い違い」が全世界に公表された恥ずべき出来事でありました。
さらに追い討ちをかけるように米国政府の公電も大量にウィキリークスにて公開され、クリントン国務長官は各国政府(アメリカの友好国)に言い訳することに終われました。
社会的背景には米英政府が、イラクに大量破壊兵器があるので自衛的に攻撃したイラク戦争が全くの嘘であり、後でそれを認めたこともありました。自由な報道の国アメリカが報道統制をしているという不信感がウィキリークスの支持へつなが寄付金も集まっていました。
しかしアメリカ政府の反撃も凄まじく、情報提供者の摘発や探索が相次ぎ、同時にウィキリークスがサーバーを置いていたアマゾン社のサーバーを圧力をかけて閉鎖させました。また銀行口座やクレジット・カード会社の口座を凍結するという兵糧攻めも行なっています。
アサンジ氏は世界への支持者に呼びかけ、ウィキリークスのミラーサーとを数百も立ち上げ反撃をしています。この著作はその途中の過程です。
やりようによってはフェイスブックやアップルの創始者以上の才覚があったと思われるアサンジ氏。今後の展開はどうなることでしょうか。
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コメント
しばやんさんのご指摘のとうりです。イラクやアフガン戦争の正当性がなにもないことが暴露されたからです。まさにアメリカ帝国存亡の聞きなのでなりふりかまわぬ攻撃ですね。
アサンジは能力がある人ですから、必ず復活するでしょうし、後継者が必ず出てくると思います。
投稿: けんちゃん | 2012.02.28 21:32
アメリカ政府がここまでウィキリークスを叩くのは、彼らが世界に広めている「民主主義」というものが、「アメリカ政府による情報統制」を前提としたものであるということなのでしょう。
ウィキリークスの活動を認めると、彼らにとって都合の良い「世論誘導」が不可能になってしまうばかりか、アメリカ政府の信頼が地に墜ちることを怖れているのかもしれませんね。
投稿: しばやん | 2012.02.28 18:49