高知の現状を土木工法の専門家に視察いただきました。
5月10日に高知県庁は「最大地震による津波浸水予測」を公表しました。3月31日に内閣府有識者検討会の示した「最大津波高」に津波襲来後の浸水深が加えたものでした。予測とはいえ高知県の沿岸部に居住している県民には大きな衝撃でした。
小さいと言われていた昭和南海地震[1946年でも、高知市二葉町を含む下知地域と潮江地区、やえ門地区、高須地域などは、地盤が沈下し、3ヶ月程度長期浸水していました。それを遥かに上回る規模の巨大地震の想定だけに、下知地域の市民は言葉もありません。
[規模が小さかった昭和の南海地震でも、高知市街地は甚大な被害がありました。長期浸水がとりわけ深刻です。地盤が沈下するのですから。)
二葉町自主防災会情報班長の西村が、フェイスブックを通じて知り合いになったOさんが、元土木の技術者[橋梁関係)の方でした。最初は二葉町を貫通している国道56号線の歩道橋を「津波避難タワーに建て替えを要望することは無理なんでしょうか」とOさんに相談しました。「可能でしょうが、もっと良い方法があります。」ということで「EPS工法があります。メーカーを紹介します。」と言われました。Oさんに発泡スチロール土木工法のJSPという企業のNさんをご紹介いただきました。事前に何度もメールでやり取りをしていました。
日常的に取引をしている企業ではありません。懸命に「南海地震が起きてしまえば、高知市は「おしまいだ」と情報を提供し訴えていました。
そしたらJSP大阪の担当部署の方から以下のメッセージが来ました。
「答申が出る日{5月10日 高知県が公表し最大津波浸水エリア)とゆうことなので役所さんの事はあまり気にしないでください。
我々にとって日本にいる限り地震津波は避けて通れないですし、いつも地震が起こるたびに何ができるか考えて冬の場合は発泡のシートを避難場所に送って、断熱に使ってもらうぐらいしか出来なくてふがいない思いをしていました。
今回は直接命にかかわる事を考えれるので、非常にやりがいがあると思います。
ただ、発泡のことはわかっていても、実質的ないい提案が出来ないと意味がないので、みんなで避難方法を考えていきたいと思っています。
特に地震・津波については我々も素人なので視察で現場状況はわかっても
地震、津波に対する知見に詳しい方にも意見を聞いて想定外にならない本当にまともなものを
作っていかなければと思います。」
ということでなんとか高知県の大変な事情ご理解いただきました。
5月16日・17日の両日高知の津波対策・液浄化対策・浸水対策・長期浸水対策のために、東京・大阪・岡山・香川から「EPS工法」(発泡スチロール土木工法)の専門家の皆様が高知へ来ていただきました。皆さん仕事をやりくりして、まさに「手弁当」で高知へ駆けつけていただきました。ありがたいことです。
まずは東京からの参加メンバーを迎えるために高知空港へ。空港近くの南国市久枝地域の津波避難困難地区に車を止めて視察しました。この地域は前面に太平洋。背後地に高知空港です。海が近いのですが、自然地形の高台はありません。また航空法の関係もあり、滑走路近くには津波避難タワーなど高い建築物は建築できないようです。
次に高知市五台山山頂へ行きました。山頂展望台からは高知市市街地が眺望できます。「高知市街地がこれほど海に隣接しているとは知りませんでした。」という来訪者の皆様の感想です。
「ウォーター・フロント」というのは、「津波フロント」でもあります。バブル経済全盛のころには日本全国各地沿岸部の都市部の再開発が注目されておりました。巨大再開発事例では、千葉の幕張。横浜のみなと未来21、大阪湾ベイエリア再開発、福岡市のシーサードももち再開発などでした。
高知市は1600年の関が原以降、この地に城下町を建設した山内一豊以来410年。干拓され低地は埋め立てられ市街地形成されてきました。水運に便利である一面、水害や高潮に弱い都市でした。海に隣接した高知市市街地は海抜0メートル地帯なのです。
この五台山展望台からの眺望では、1946年の昭和南海地震で、地盤沈下が起きて水没し、長期浸水状態になってしまった高知市下知地域や、潮江地域、高須地域などが眼下に良く見えます。
次に二葉町界隈を現地調査していただきました。二葉町が堀川という海に隣接していることの確認です。
堀川の浮き桟橋も「高密度発泡浮体工法」の産物であり、岡山の企業の方は10数年前に高知へ来られ工事に関わったと言われていました。
津波や浸水状態に、激しい流速がなければ、こうした浮き桟橋でも「緊急時津波避難施設」として活用できるのではないかとの意見も出されました。
二葉町界隈は全域海抜0メートル地域であることを、全員で歩いて意識していただきました。
広域公園である高知市青柳公園。ここには高知市水道局により建設されました耐震貯水槽が、グランドの地下に埋め込まれています。大地震がおきた時、弁が即座に閉まり、飲料水(6000人の市民の必要飲料水の3日分)が確保できるという優れものの耐震貯水槽です。
液状化対策もおそらくされておられているのでしょうが、この二葉町・稲荷町など高知市下知地域は、南海地震では地盤が1メートル、最大2メートル沈下するとされ、長期浸水すると予想されています。となると残念ながら二葉町ほか周囲の市民はこの飲料水を飲むことができません。(3日以内に水が引けば飲料水の利用は可能です。)
二葉町自主防災会としましては、4月5日の高知市防災対策部との懇談会にて、「青柳公園に津波避難タワーを建築し、手動で操作できるポンプを設置し、耐震貯水槽の飲料水を南海地震発生後にすみやかに供給できる体制を構築していただきたい。」と要望いたしました。
参考記事 「高知市災害対策部を訪問し、打ち合わせをしました 」
その後、北本町にある江陽保育園を訪ね、広瀬園長先生と田中副園長先生にお話を聞きました。
「うちの園は零歳児から127人の園児をお預かりしています。もしもの南海地震が起きた場合。地域の避難所が城東中学です。約300M離れています。127人の園児と保母が臨時も含め30人います。
江ノ口川も近いし、大きな道路を横断しなければなりません。園児の足で7分程度かかります。また近くに避難訓練をする予定です。」
建物は1階です。耐震補強はされておられ、窓ガラスも飛散防止フォルムが貼られています。家具なども固定されていました。この地域の浸水予想は何Mであるのか不明ですが、予想浸水が最大値であった場合、園児と職員の皆さんの安全な退避は、大きな課題でしょう。
高知市街地には、津波避難困難地域に、保育所や小中学校、宅老所や介護施設、病院などもあります。また地震時には救援支援活動の拠点となるべき、役所や消防署、警察署なども浸水する被害が予想されていて、より高知市。高知県は深刻です。
種崎地区津波避難センターも訪ねました。施設を見学しました。屋上から見ますとこの地域は外洋に面し、内海の浦戸湾にも面している半島です。この津波避難センター以外の高い建物はありません。
種崎地区津波防災検討会会長の黒田則男さんにもお話を聞くことが出来ました。
「先日公表された県の津波予測には驚きました。今まではこちらの津波避難センターへ逃げ込んだら安心と思っていました。こちらの避難ビルには800人が収容できます。
最大津波想定ではビルの高さが足りない可能性もでてきました。西地域には津波避難タワーの建設を住民側として行政にお願いしています。
こちらの施設にも高さを増す設備をしないといけないと行政側に申しあげました。
[種崎地区津波避難センター階段部には、高さ表示がされています。)
そして「EPS工法」(発泡スチロール土木工法)の専門家の皆様と一緒に、高知市災害対策部を訪問し、地域防災推進課地域防災推進担当係長松岡宏輔氏と主査の西本全宏氏情報交換をしました。
その場には、5月11日に防災活動の情報を交換し、共有化する自主防災組織・個人と行政や報道関係者も含めた「高知市自主防災ネットワーク(仮称)」の呼びかけ人である和田陽一氏(やえもんまちづくり推進委員会代表)も参加しました。
そしてその後同メンバーで高知県庁へ移動。高松清之危機管理部長とも意見交換し、懇談しました。
「EPS工法」は、発泡スチロール土木工法と言われ、道路工事、橋梁工事、地すべり対策、液状化対策工事、水路工事、地下飲料水タンク工事など広範な分野で実績があるようです。
正直発泡スチロールが食品用トレーや魚箱以外に広範な用途があり、建設・土木分野に広範囲使用されている現実を知りませんでした。
現在高知市内の自主防災会や高知市災害対策部は、懸命に「津波避難ビル」の指定に動いています。2012年4月26日現在83施設に過ぎません。高知市だけで13万人と言われている「津波避難困難地区」の居住者数からすれば、まだまだ足りません。
また災害弱者と言われている乳幼児、高齢者、障害者の皆様方は、おいそれと津波避難ビルや津波避難タワーの階段を登れるとは限りません。また自宅から津波避難ビルが離れている場合は、避難がとても困難です。想定では南海地震後直ちに高知市街地は地盤沈下が始まり、海抜0メートル地域は浸水と液状化が始まると言われています。
そして30分~40分後に津波の第1波が到達すると言われています。とにかく時間はありません。
高い土木分野の技術力を持っているJSP関係者の専門家にみなさまと共同して、近い将来に津波避難施設を開発できれば、津波と浸水の脅威から多数の高知県民の命が助かるのではないかと現地視察を一緒にして思いました。
((高知市桂浜の坂本龍馬記念館駐車場から、県道14号春野赤岡線を見下ろしました、外洋に面しています。)
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