文藝春秋 7月号を読む
新聞もTVも週刊誌の記事も今ひとつ物足りない。特に「原子力問題」と「増税問題」では、真底共感できる報道には出会いませんでした。
久しぶりに「文藝春秋 7月号 徹底追及平成政治24年 亡国の戦犯」(文藝春秋 2012年6月刊)を840円を出して購入しました。
492Pに及ぶ掲載内容は、そこそこ中身があります。
「巨大地震の謎に迫る」という立花隆氏の深海探査船「ちきゅう」の乗船レポートは秀作でした。東京スカーツリーの10数倍の超巨大構造物。
「これまでの地震モデルは細かな観察にもとづく、小さい領域の話ばかりだった。森で言うと1本1本の木の話をしていた。
しかし、今回の地震はドーンと森全体が動いた。何千本と言う木が一挙に倒れるようなことが起きた。これまでは「点と線の地震学」しかなかったが、今回「面の地震学:が必要だとわかった。}(P7)(「巨大地震謎に迫る・立花隆)
さて看板記事の「徹底追及平成政治24年 亡国の戦犯」の出来栄えはどうなのでしょうか? 作家でイタリア在住の塩野七生氏(代表作は「ローマ人の物語」)よ佐々木毅氏(学習院大学教授)の対談「世界史に学ぶ 日本はなぜ変革できないの」は面白い記事でした。
塩野氏によれば、イタリアはベルスコーニが退陣後は、マリオ・モンティが内閣を組織。各種の改革を大胆に実行しているとか。閣僚全員が学者であり、国会議員ではないようです。与野党が内閣を支え、財政改革の法案が次々と成立しているようです。
消費税も20%から23%に上昇。年金支給年齢も引き上げられ、国民の年収は1割減少したといいます。凄いのは、宗教法人からも税金をとったようです。
塩野「ただし、一般の国民から取るだけではない。なんと宗教法人への課税法案まで通過しました。イタリアの宗教法人といえば実質的にはローマ法王庁ですが、お祈りや貧民救済といった利潤を産まない活動に使う施設は除いて、それ以外の膨大な不動産からの家賃収入などに課税することになりました。
それこそ1千年このかた、歴代の皇帝がやろうとしても出来なかったし、ムッソリーニでさえ出来なかったことですね。マキアバェッリが聞いたら、泣いて喜ぶだろうと思ったら笑ってしまったけど、イタリア人がかくも大変な犠牲に耐えているから、さすがバチカンも反対できなかった。
というわけです。ただ、実際にはどうやって徴収されるのかはこれからの話。ないせ坊主どもの悪知恵はたるや2千年このかた・・」(P111)
なかなかの「実行力」がイタリアの現在の内閣にはありますね。日本とは大違いです。
塩野氏によれば、古代ローマの共和制度では、市民によって選ばれた執政官(コンスル)が常に2にいて、内政において最高権力を握ると同時に、有事においては軍隊を率いることになっていたとか。任期は6ヶ月限定で、ローマの政体を変更すること以外では、あらゆることに決定権があり、誰でも独裁官に従わなければならなかった。と言います。
佐々木氏は、いつも出ては消える「首相公選制」の議論も「苛立ち」の表れだと言います。時間限定で、政府に権限を集中し、瓦礫の処理や原発の処理などを徹底してやるべきであったと。
政治のリーダーは大局観を示し、「物事を単純化して、国民に示すこと」が必要であるともいいます。大命題を掲げ、問題を単純化し、具体的な政策に優先順位をつけて提示する必要がある。とも佐々木氏は言っていますね。
塩野氏は「政治と言うのは究極のインフラストラクチャーなんです。ローマだったら、「街道と水道は国がちゃんと作りますから、どう使うかは1人1人が決めてくれ」と。
わたしは今の日本にとって一番重要な命題は「日本を守る」ことだと思うんです。「日本を守る」という大目標からすべてを出発させて、優先順位をつけていくよう7にならないのでしょうか。」と言われるのは大正解であると私は思いますね。
こういう対談の企画は月刊雑誌「文藝春秋」ならではのものであると思いました。
その他「尖閣諸島という国難」(石原慎太郎)。「橋下徹市長と中国化する日本」(中野剛志・我那覇潤)「再稼動原発がテロに制圧される日」(伊藤祐靖)。「私たちはなぜ松井秀喜が好きなのか」(伊集院静)「原発事故を論語で読み解く」(安富歩)など、その他にも目にとまる、記事が多い。
840円は高くはないと思いました。こうした「硬派」の月刊雑誌も存続していただきたい。もう名前すら忘れましたが、勝間和代だとか、お仲間の藤巻なにがしとか、「内容のない」自己開発系の雑学本は読む気にもなれませんからね。
こういうのを購入すると言うのは、つくづくアナログ親父であると思いました。でも結構内容が豊富であると思いました。たまには購入するようにしましょう。一読をお薦めします。
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