「毒婦ー木嶋佳苗100日裁判傍聴記」を読んで
「毒婦ー木嶋佳苗100日裁判傍聴記」(北原みのり・著・朝日新聞出版・2012年4月刊)を新刊本として書店で購入(1260円なり)し、読みました。読み応えのある本でした。
書籍の帯には「ブスをあざける男たち 佳苗は、そんな男たちを嘲笑うように利用した。2012年4月13日死刑判決」とあり、木嶋佳苗の写真も掲載されている。
確かに,「美人とは言えない容貌」の木嶋佳苗容疑者。しかし2008年から9年の2年間に10人の男性と付き合い、合計1億1090万円のお金を提供させています。ある意味たいした才覚の女性です。
昔の日本の女性画を見ても木嶋佳苗容疑者のようなふっくら系の美人画もありますから。料理も上手で、お金をせびる文章もなかなか読ませる力があったと著者は言います。
公判を傍聴していたある全国紙の美人女性記者が『私も佳苗のようなことをしていないのに、あの女はなぜなの!」と女性特有の対抗心を露にするような異様な傍聴風景であったようです。
確かに殺害された男性は佳苗の料理に満足し、睡眠剤で眠らされ、練炭を炊かれて一酸化炭素中毒死でした。今の時代練炭なんて私でも使用しませんから、やはり特殊な殺人事例でしょうね。
筆者は冷徹に以下のように記述しています。
佳苗が男たちのことをさんざん語った日、隣に座っていた女性記者(美人)が何か苛立っていた。
「佳苗、わたしよりずっとセックスしてますよ。だいたい私なんか、今まで1度しかプロポー時されたことがないっていうの!佳苗は一体何回プロポーズされているんですか!」
どうしても納得がいかない、といった調子だった。
「いったいなんであんなブスが!ブスなのに!どうして!どうしてだと思いますか!」
ブスブス!と悔しがる美人記者を見ながら思う。もしかしたら佳苗は「惚れなかった」から、常に男たちの冷静な観察者だったから、そして決して自分の容姿を卑下することなかったから、男たちに魔法をかけられたのかもしrない。
男たちは、ただ彼女に受け入れられている、愛されている。という安心感の中、彼女の見せる虚構の世界にゆったりと浸かっていればよかっただろう。
生々しく悔しがり、嫉妬し、怒る、感情的で面倒くさい美人より、自分を全て許容する料理上手で感情を見せない不美人のほうが、男たちは夢を見やすい。」(P115[佳苗語る男たち」
(言われてみれば確かに美人ではないようですが・・)
この事件の本質を射抜いた記述ではないでしょうか。テレビなどの表現も「なぜ不美人の佳苗がつぎつぎと男たちを篭絡し、大金をせしめ、自殺にみせかけた殺人ができたのか」ばかりの報道では事の本質はわからない。
「援助交際」の権化となった北嶋佳苗。実に不思議な事件です。交際相手の男たちも、さびしかったんですね。それに佳苗はつけこんだ。男たちは喜んでお金を渡した。
一読して佳苗は女性として魅力があったと思いますね。一方騙された男たちはいずれも女性とは縁が薄かった。財産もなく、家内の監督下のある私などには到底理解不可能な世界の話でありました。
女性の視点はまた違うので読んでいて退屈しませんでした。
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