金持ちがお金を使わないからより不況になる
今週の週刊現代9月8日号は久しぶりに読み応えのある記事でした。
エコノミストの藻谷浩介氏「日本の金持ちに告ぐ」という文章です。
「カネを使わない不思議な民族」として日本人特有の大金持ち像を描いています。
「戦後に財を成した今の高齢富裕層は、贅沢に興味がなく、むしろ預金額が増えることに強い喜びと快感を覚えている。莫大な金融資産を自分が死ぬまで文字どうり「死蔵」士、。経済の活力をそいでしまっているのです。」
「彼らのような存在は、欧米発祥のマクロ経済学では想定されていません。墓場にお金は持っていけない。生きているうちに使って楽しもう」と考えるのが欧米人だからです。
実は大阪大学フェローの小野善康氏が「死ぬまでお金を使わずためこむ人」が存在することを踏まえて新たな理論を作ったのですが、輸入学問が絶対の日本の学界では異端扱いされています。
彼の理論では「不況は、消費せずに金を溜め込んでいる人間が現れることで起きる」ということが数理的に証明されている。まさに今の日本の状況です。」
藻谷氏は、こうした日本独特の金持ちの「経済観念」を全く無視した経済政策や、金融政策の無意味さも実例を挙げて説明しています。
「戦後最長の好景気と言われた小泉政権工期の2003年~2006年には、輸出増加と日銀の金融緩和の効果もあり、富裕層の多い東京23区の申告所得は合計で3兆円増加、バブル期を1・5兆円も上回りました。
しかし都内の小売店舗の売り上げは、まったく増えなかったのです。それどころか、伊勢丹と三越は経営統合し、ダイエーとマイカルは潰れ、西武やそごうも潰れた。地価も上がらなければ、銀座の飲み屋も、タクシーも混まなかった。
欧米から輸入した経済学では、こうした日本の現実を説明できないのです。」藻谷氏によると、最近は欧米でも大金持ちにそうした傾向が現れ、事態はますます深刻であるといいます。
消費税を上げても税収は増えないだろうというのが藻谷氏は言い切ります。
内税表示を義務付けたことで、企業はコストダウンを余儀なくされ、商品を値下げする。そうなると賃金を下げたり、人員削減をするので、余計に消費は冷え込みます、大金持ちは安い商品を購入して喜び、まうます貯金が増えるだけ。
今回の消費税増税は、1番お金を使う若者層と、子育て世代を直撃。お金を溜め込む人たちは消費をせず、貯金するばかりになることがより促進されるだけだということです。
これを解決するには消費意欲の高い女性の就労を進めて収入を増やすことでしょう。若者と女性を就労させ、給与所得を上げて、消費を活発にする層の活性化を図らないと経済もたちいかないし、税収もあがらないでしょうから。
消費をしない層から、消費をする層にお金を廻るしくみをこしらえることではないでしょうか。今回の藻谷氏のレポートはうなづくことが多かったです。
そういえば昔松下幸之助さんは、「不況になればお金持ちは、家を購入し、車を買い、装飾品を買わなければいけない。世の中の節約ムードに合わせて金持ちが節約しておればよけいに不況になる。物を買えば、物に関わる人たちの仕事が増え、景気は良くなる。」ということを言われていました。正確な文章は忘れましたが、確かにそういうことを幸之助さんは発言していました。
松下幸之助さんがこしらえた松下政経塾に学んだ野田総理は、働き盛りの若者や女性の雇用と消費意欲を減退させる消費税増税ではなく、大金持ちにいかにお金を使ってもらうのか。金融資産への投資へではなく、実際の消費に機嫌よくお金を使っていただくのかに腐心しなければならないと思います。それをしなければ日本経済は消費是増税により、未曾有の大不況になることでしょう。
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