« お彼岸の夜須の海 | トップページ | 海はバリヤフリーです。 »

2012.09.23

石橋湛山評論集を読んで(その1)

Ishibasitanzanhon

 「石橋湛山評論集」(松尾尊允・編・岩波文庫)を読みました。
2012年の日本をとりまく政治情勢はまさに内憂外患状態。

 日本の政治の混迷を見透かすようにロシアは北方領土の開発を露骨にしようとし、韓国は不法占拠している竹島に現職大統領が上陸、中国は尖閣諸島への挑発をやめない。

 デフレ経済が収まらないのに、消費税の増税を決めてしまうおかしさ。政権政党の民主党も野党第一党の自民党もふらふらしていて頼りない。かと思えば「異端者狩り」しかやっていない地域政党の「大阪維新の会」と称するファシスト政党が台頭の兆しがあります。

 石橋湛山は、1884年から1973年の89年の生涯においても,一次大戦、ロシア革命、3・1朝鮮独立運動、満州事変、金融恐慌、敗戦後の評論など軸にぶれがありません。

 帝国主義全盛の時代(大正時代)に、植民地をすべて放棄ー独立させ、軍備を縮小し、民生を充実して貿易で富国を目指す「小日本主義」を提唱していました。評論は先見性と徹底した自由主義の主張に貫かれています。

 それも最近一時流行した「新自由主義」のような格差を拡大する冷酷無慈悲な経済システムではなく、人間を慈しむ「経世済民」型の経済社会をつくりあげるための議論を石橋湛山はしていきました。

 明治45年(1912年)に「問題の社会化」として以下のように論じていました。

「しかし個人の解放を以って始まった総ての近代の問題は最近において格のごとき変化をなさんとしつつある。即ちもはや既にただ個人とか解放とかいっておる時代は過ぎ去って、その個人をいかに実現するか、その解放をいかに具体化するのかという積極的な問題に入って来た。

 この問題を解決するために、まず第一現れてきたものが即ちリープクネヒトの一派である。社会運動、社会政策というものの勃興である。思想の動揺ということが特に著しく近頃見えて来たということも、その原因はここにある。

 今の世がただ自由解放を叫んでいて済む時代なら、ルソーの思想でも事足るはずであるが、それでも満足しないという所以は、要求がこの具体的積極的の問題にあって、しかもその解決の方法が見当たらない故である。」(P15「問題の社会化」)

 100年前から社会問題は簡単には解決しないということなんですね。

「しからば我が現代の人心は何故にかくのごとき浅薄弱小、確信なく、力なきに至ったかと言うことである。吾輩はこれに対して直ちにこう答える。曰く、哲学がないからである。

 言い換えれば自己の立場でについての徹底せる智見が彼らは日本の立場がわからないのである。日本の現在および将来の運命を決する第1義はどこにあるのか。徹底した目安がついておらないのである。

 その時々の日和を見、その時々の他人の眼色を窺って、行動するよりほかに道はないのである。」

「下手な碁打ちが1小局部にのみ注意を奪われて、全部に目を配ることが出来ず、いたずらに奔命に疲れて、ついに時局を収拾すべからずにいたらしむるような者である。

 吾輩は切に我が国民に勧告する。宜しくまず哲学を持てよ、自己の立場に対する徹底的智見を立てよ、この徹底的の智見を以って一切の問題に対するの覚悟をせよと。

 即ち言を換えてこれをいうならば、哲学的日本を建設せよというのである。哲学は最も徹底的に自己を明らかにする者である。何をおいてもまず自己を考える。その明瞭にせられた自己から出して、新しき日本を建設する。これ実に我が目下の急務であると思う。」(P26「哲学的日本を建設すべし」 明治45年)

 100年前から日本は進歩していませんね。軽々しく日本国首相は、反日的行動を繰り返す中国や韓国に対して「戦略的互恵関係」を口走るが、いかなる哲学的思想的な背景で発言しているのか?

 その文面を起草している外務官僚の皆さん方にも哲学や思想は根付いているのか?極めて疑問でありますね。

|

« お彼岸の夜須の海 | トップページ | 海はバリヤフリーです。 »

コメント

おっしゃる通り今の政治家に哲学は感じられません。
あるのは自己利益の追求のみ。
橋下徹氏には哲学を感じるのですが、それ以上に権力を求める姿勢が強く、諸刃の剣でしょう。
哲学ではなく、徹学?
冷徹の徹でないことを祈ります。

投稿: 村中花火 | 2012.09.23 13:06

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 石橋湛山評論集を読んで(その1):

« お彼岸の夜須の海 | トップページ | 海はバリヤフリーです。 »