「巨大津波想定に向かい合う防災を考える」講演会
12月18日は「震災に強い人・地域・ネットワークづくり講演会」(主催高知県危機管理部・南海地震対策課)へ行きました。高知新聞放送会館で開催されました。300人程度の参加者がありました。
講師は片田敏孝群馬大学教授です。2011年の3月11日の東日本大震災を踏まえ、先般公表された南海トラフ巨大地震の最大想定についての解説と心構え、釜石市の取り組みと成果と反省点を述べられました。演題は「巨大津波想定に向かい合う防災を考える」です。
「高知県におきましては、黒潮町まどで最大34メートルの大津波が最悪想定されるということが公表されました。わたしが釜石とともに、地域に入っている三重県の尾鷲市でも最大24メートルの津波が伝えられ、市民各位は驚きました。」
「なかには。あきらめムードも漂い。どうせ津波で死ぬことがわかっているのだから津波や地震対策は何もしなくて良い。ということを言い出す人も現れました。」
そういうふうにとらえてはいけないと片田氏はいいます。
「最悪の想定。1000年に1度の話です。それより日常起きている交通事故のほうがはるかに発生する確率が高い。1年間に5000人の死者ですから、1000年なら500万人の死者が交通事故では出ることになります。
それだけ起きる確率は小さい。でも起きるかもしれない。いつ起きるかもしれない。高知は津波は来ます。確実に来ます。時間の問題です。」
想定に「右往左往」するのではなく、最悪の事態に備え、対策を積み重ねることがないより大事です。
片田氏は「日本の沿岸地域は過去何度も津波に襲われてきました。でも最近は津波警報が出ても避難しない住民が多く常態化していました。東北地方でもそうでした。
大人たちが逃げないのに子どもたちが逃げるはずはない。今日のような防災講演会を繰り返していましたが、来る人達はほとんど同じ。問題は来ない人たちへの啓発であることに気が付きました。
それで子どもたちへの防災教育を実施することを8年前から釜石市でしてきました。
それは「想定外を生き抜く力」をつける防災教育でした。3原則があります。
1)想定にとらわれるな。
2)最善をつくせ
釜石市では子どもたち(小学生・中学生)が実行し、自分たちだけではなく周りの高齢者や幼児、親たちも助かることができました。
また「津波てんでんこ」の意味を説明されました。
それはめいめいが必ず津波が来る前に高台へ逃げること。そのことを実践することを日頃から行い、家族同士が信頼することです。親が子供を迎えに行って、共倒れにならない先人の知恵です。決して見捨ててめいめいが逃げることではない。ことでした。
普段からの防災教育で、長い時間の揺れがあったら、必ず津波が来ることを教え込み、高台やもよりのビルへ駆け上がることを釜石の子どもたちは必ず実行する。親たちも自分の命は自分で必ず守るということを浸透させてきた成果であることです。
そして片田氏はこう言いました。
「防災は自分の命を守ることからはじまります。高知も海に向かい合って生きてきました。海の恵みが生活を豊かにしてきました。でも時に海は荒ぶれます。
その時に危機に対する「お作法」として防災対策・防災教育はあるのです。災害ごときで人を死なせないことが一義的な目的なんです。
東日本大震災の悲劇を繰り返さないために、その教訓が活きる文化の醸成が必要です。
日本列島に住む以上、地震や津波に遭遇することは人の一生に1度はあるでしょう。その場合でも地域を愛し、地域の中で海と向かい合い、リスクに向かい合い最善の減災対策を地域ぐるみで実行していくことでしょう。
和歌山県では沿岸部の住民たちが、津波避難路を土日の休みに自分たちで整備しています。行政側はコンクリートを供与しただけです。その大人たちの姿勢こそが,次代を担う子どもたちに伝わり、災害に冷静に向かい合い、想定外の災害でも生き抜く力になるのです。
和歌山県の事例ですが、地域を3段階にわけ、それぞれに対策をたてています。参考になりました。
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