「目を覚ませ日本!21世紀の龍馬よ!」を読んで
「目を覚ませ日本!21世紀の龍馬よ!](坂本龍馬財団・著・2012年刊)を読みました。副題が「台湾李登輝元総統”魂”の提言」とありました。
そもそもは坂本龍馬記念館館長の森さんが、台湾の李登輝総統の事務所にお見舞いのお電話されたことが始まりのようでした。李登輝さんは2009年に高知へ来られ、桂浜にある坂本龍馬像と、坂本龍馬記念館へ立ち寄られたそうです。その後御病気になられ静養されておられました。森館長はお見舞いのお電話をされました。
その電話がきっかけになり、台湾への李登輝元総統へお見舞いツアーが成立し、35人の人数で台湾へ2012年7月に行かました。この本は李登輝氏のメッセージと面談された35人の人達の感想文も収録されています。
22歳まで日本人であった李登輝氏。京都帝国大学を卒業され、教養もある「昔気質」の日本人が色濃い人物のようでした。それだけに最近の日本の迷走ぶりには腹を立て歯ぎしりをされておられるようでした。
「世界経済が変化している中で、日本は戦後、非常な努力をして世界第2位の経済大国になったが、その後における日本は世界的な潮流に逆らえず想定的な衰退が始まった。
かつて日本は世界のGDPの総額の16%を持っていた。アメリカは36%から40%。日本は16%持っていた。その日本が最近8%以下に落ちた。そして20何年間、可哀想なことに、デフレ対策で失敗し続けている。
わたしは2002年、既に警告している。この状態でやっていれば日本は大変なことになる。この世界秩序の崩壊の中で日本は衰退していく。なぜこういう状態が起きるのか。
日本のやるべき役割は非常に大事なのだ。これだけの実力をもった日本。それがほとんどd席なくなっている。と。」
「その衰退の原因は主に経済の衰退。経済の衰退で、1番大きな問題は何かというと、政治的対応能力が減少したこと。政治の対応能力がない。国内政治の改革が行われていない。
国家指導の力量がなくなったということ。こういう状態の中で、私がいつも言うのは。ここらあたりで日本は、福沢諭吉が「学問のススメ」の中で言ったように、「心事の棚卸し」をやるべきだ。」ということです。
いま日本が何をどうするべきか、言う人はたくさんいますが、何もできない。それは日本からも、今、坂本龍馬みたいな人が出て欲しいということです。坂本龍馬がほしいです。」(P24)
中国が尖閣に対し領有権を主張し、挑発行動を繰り返していますが、李登輝氏ははっきり言い切っておられます。
「尖閣列島は日本のものだ。それを、台湾も中国も昔から中国の領土だと出鱈目なことを言っている。
わたしに言わせると どこに歴史的根拠があるかを出しなさいよ。 地図の上に書いてあるの?ありはしないでしょう。 と。これが中国のやり方。日本人は言い切らない。尖閣諸島は日本のままだ。と大きな声で言わないのです。外務省も言わないし、沖縄県庁も言わない。」(P52)
李登輝氏は、日本のこともよく知っていますし、むろん台湾のことも中国のことも熟知されています。血を流さず無血革命で台湾の独裁政治を民主化した最大の功労者。アジアではチベット仏教の指導者であるダライ・ラマ14世や、ミュンマーの民主化運動の指導者アウンサー・スーチー氏がノーベル平和賞を授賞していますが、李登輝氏も受賞するに値する業績を残されています。
その李登輝氏が台湾民主化のモデルを、坂本龍馬の構想の船中八策や大政奉還などの影響を受けたと語られておられました。それは凄いことであると思いました。
必読本の1つであると思いました。
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コメント
筆者の1人さん コメントありがとうございました。金高堂書店で見つけ、購入し読みました。
李登輝さんは、さすがに世界的な人物、政治家ですね。スケールが違う。民主党も李登輝さんを顧問にしてアドバイスを頂いたら、あれほどの惨敗はなかったでしょう。
政治的指導者の心構えも解かれていますね。実践したひとだけに説得力がとてもあります。
ご心配されるように「知日家」の指導者が引退されると、日本のアジアの立ち位置が難しくなりますね。考えこまされました。
投稿: けんちゃん | 2012.12.26 08:05
けんちゃんさん、本を熟読してくださって本当にありがとうございました。李登輝さんの講演は間近で聴くと、本当に心に迫ってくるものがあり、病み上がりで御高齢にもかかわらず、口角泡を飛ばして一生懸命に話す言葉に、テープ起こしをしながらも何度も深く考えこまされました。李登輝さんのような日本を心から愛し、心配してくださる年代の台湾の方々がいなくなると、日台の関係はどうなるのか‥。そう考えてもいまの政治に不安が募ります。
投稿: 筆者の1人 | 2012.12.26 00:12