「脱原発論」(小林よしのり・著・小学館・2012年刊)を読みました。新刊本として1785円を出して購入しました。ファシスト漫画家の小林よしのり氏はわたしと同世代。「教科書問題」やら、「国防問題」などでは意見は異なります。「脱原発論 原発をなくせば経済成長できる」というサブタイトルも気になりましたのであえて購入し読みました。
感想は「なかなか調査もしているし、まじめに問題に取り組んでいる。」という内容で感心しました。
「4号機はダモクレスの剣」(P21)は衝撃的な内容でした。福島原発4号機は核燃料棒は1538本もあり。204本は新燃料があるという。燃料プールにかろうじて水は満たされているが、もし地震が来て倒壊すれば日本は終わる。メルトダウンし火災が起き、他の1・2・3号機も爆発炎上することだろう。
小林氏は漫画家なので、リアルな絵で表現しているので真実味が加わってきますね。
「どんな技術でも、失敗を糧にして成長していく。特に死亡事故のような痛ましい失敗があってもそこから教訓を得て、より安全な技術を作り上げていく。
原則はその通りだが、原発にはこの原則が通用しない。リスクが大きすぎて失敗が許されないからだ。
人間が制御しきれず一度失敗したら国家滅亡の危機なんて言うリスクを抱え込んでいるような技術に未来はない。淘汰されていくのは当然である。」
中略
「反原発運動を左翼陰謀論で語ってしまっているが右も左も関係ない。国家の安全保障上、危険すぎるから止めろと言っているだけだ。
国家国民の安全のためにあまりと危険だとわかってしまった以上「危険だから原発をやめろ!」と言うのは当たり前の話で、むしろ愛国者ならば脱原発を唱えるべきだろう。
たったそれだけの話なのに、「左右対立」という構図に無理尻当てはめてしかモノが見られない自称保守があまりに多い。
軍事的安全保障からも原発はあまりに危険。テロに対して無防備すぎる。
エネルギー安全保障から見ても原発廃止に大した問題はない。
国家のため公のために害なす者は、左翼ではなく「既得権益を貪る原発ムラ」の住民の方だろう!」(「既得権益者に説得力なし」P70)
なるほど自民党の候補者が「技術の失敗は、技術で克服するしかない。だから原発hが安全に稼働させるべきだ。」と言っていましたが、やはり「無理」があると言うことですね。
また小林よしのり氏は櫻井よしこ氏らに象徴される「原発ブラボー団」を厳しく批判しています。
「TPP推進と原発推進はセットでGDP至上主義の従米ポチ路線なのだ!」(P133)と切り捨てています。
「桜井氏ら原発ブラボー団は原発維持が国益だと言う。では彼らは、福島第1原発事故で故郷を追われた人々、国の基準をはるかに超える放射線量の中で暮らさざるをえない人々には「「国益のために我慢しろ!」と言うのだろうか?
中略
「原発は、常に弱者を犠牲にする様に出来ている。危険すぎて都会に置けないから過疎地に押し付ける。原発作業員は、末端の労働者ほど危険な作業に従事させられ、金で交換の聞く」「「部品」あつかいにされている。
そして事故が起きで放射能がばらまかれてしまうと、最も危険なのは子どもたちである。
「弱肉強食」を当然のものと思わない限り原発は肯定できない。この点TPPも同じである。そしてもちろん自称保守の連中は弱肉強食主義者である。
国家基本問題研究所(理事長 櫻井よしこ)の意見広告でも驚いたことに福島の罹災地の人たちに対する言及が一切ない。完全無視である!」
「弱者の生き血で街を煌煌と照らす近代主義・進歩主義を見なおしてみたらどうだ?
無理のある理想論で反動的な予言をしているわけではない。
すでに心ある企業は、エネルギー0革命を起こそうと努力を始めているではないか!
日本の伝統に埋め込むことができる近代技術しか生き残れないということなのだ!」(P144「原発ブラボー団は真の強者か?」
原子力発電所は、使用済み核燃料の処理はもっと大変であり、10万年単位で物事を考えないといけないと小林氏は指摘しています。では原子力発電所を廃炉にして日本のエネルギー事情は大丈夫なんだろうか?その点については小林よしのり氏は回答を用意していました。
小林よしのり氏は取材で太陽光発電のメガソーラー発電所を取材していました。
「発電効率が規模の大小にほとんど左右されない太陽光発電は、家の屋根やビルの屋上などの小規模で分散することにむしろ強みを発揮する。
原発のようのに大規模集中型と違い。携帯電話やパソコンのように裾野の広い小規模分散型テクノロジーは普及すればするほど、性能が上がり、価格も下がる可能性がある。太陽光発電もすでにそのプロセスに入っているという。」
小林氏は地熱発電も視察していました。「日本の地熱の資源量は世界3位で、発電の潜在力は原発23基分を有する。」また各種のバイオマス発電(資源作物バイオマス・廃棄物バイオマス・未利用バイオマス(林地残材など」の可能性も高いといいます。
「日本の電力10社の発電能力は東日本大震災の前で約2億キロワット。
自然エネルギーでは日本国内でどの程度発電できるのか?その資産を環境省が出している。
地熱と中小水力がー0・14億キロワット。太陽光が1・5億キロワット。風力は19億キロワット。日本の電力はすべて自然エネルギーでまかなえる。」
「本当にエネルギー安全保障を考える愛国者ならば、完全に国内dで自給自足できる自然エネルギーの開発を支持しなければおかしい。
いまだにエネルギーの安全保障のために原発だというのはインチキである。今や原発を稼働を必要としているのは電力会社とそこに群がる既得権益者しかいない!
膨大に抱え込んだ原発施設が動かせず不良資産となってしまったら、電力会社の経営が立ちいかなくなる理由はそれだけだ!
自然エネルギー100%を達成するまでの「つなぎ」としては、近年開発が急速に進んだシェールガスなどの新しい化石燃料を使えばいい。原発なんか動かす必要は全くない!」(P359「代替えエネルギーはいくらでもある」
小林よりのり氏はあとがきでこう書いています。
「原発問題に中庸はない。これは過激な発言でも何でもない。
事故の確率は極小でも。リスクが超極大になって、国家の崩壊につながりかねない原発という古い科学は速やかに放棄して、日本が世界に先駆けてエネルギー革命を起こそうではないか。子どもたちの未来は洋々としてある。
日本では50代以上の者たちが「原発のない好景気」に育った世代であり、30代以下の者たちは、「原発のある不景気」に育った世代である。若い世代に、もう1度「原発のない好景気」を味あわせようではないか。
本書は7月中旬に執筆を終えるが、この夏が過ぎても、そして政権が替わっても、決して脱原発の情熱が失われない事うぃ祈る。」「あとがき」
なかなかの力作でありました。精緻な調査と、漫画の作成という大変な作業をやり遂げました。単なるファシストと思っていましたが、見直しました。一読をお薦めします。
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