「セルジオ越後の宣戦布告W杯日本はこう戦え!」を読んで
「セルジオ越後の宣戦布告W杯日本はこう戦え!」(セルジオ越後+後藤新弥共著・マガジンハウス・1998年刊)を高知駅前のブック・オフで105円で購入し読みました。
セルジオ越後氏といえば、ブラジル生まれの元プロサッカー選手。16歳でブラジルのプロサッカー選手となり、日本へ来られ日本リーグの選手としても活躍、引退後は1978年より日本サッカー協会公認のサッカー教室の認定指導員として延べ50万人の指導を行ってきた人です。
辛口サッカー評論家としても有名。最近では「今の日本代表は2010年当時より後退し、力が落ちていると」指摘されています。でも深い洞察力にはいつも感心しています。それはどうしてなのかが、この本を読んでようやくわかりました。
セルジオ越後氏は、「社会観察者」なのです。サッカーを通じての技術論の狭い範囲での評論なく、社会全体からサッカーを見て行く大きな視点を持っておられます。
「98年3月にジャマイカのシモンズ監督が来日した時、背筋が凍るような気持ちがしたことがあった。風呂に行っている所に、急に踏み込まれたようなものだ。
日本代表を徹底視察に来たのかと思っていたら、彼がしたことはまず日本の社会や文化を訪ね、政治やニュースを「観劇」したことだった。代表の試合は、2試合しか見ないで帰った。」
「細かいことを今探ったって、本番も同じとは限らない。私が知りたかったのは、日本のサッカーではなく、日本という国と日本人の姿だった。日本人がどんな考え方をして、どんな風に行動するか、それをこの目でたしかめたかっただけだ。それがわかれば、岡田監督が,事に当たってどう対処するのかが分かる。思考形態を知ることのほうが、戦術自体を研究するより、ずっと意味がある。」
「つまりは、サッカーは社会の反映であり、鏡だというわけだ。それこそ私が解説者としてずっと長い間言い続けてきたことだった。」(P2「サッカーは社会の鏡」)
シモンズ監督はブラジル出身。ジャマイカでブラジル流のサッカーを選手たちに伝授して来た人。身体能力もあり、英国プレミア・リーグで活躍しているジャマイカ出身選手を帰化させて代表にしたり、したたかなことをやってきた人。本大会での結果は同じ初出場のジャマイカに日本は、1-2で敗れました。
シモンズ氏は律義で生真面目。鉄道運行時間定刻どうり。企業の優秀性もある。それゆえ自分の几帳面さを相手にも要求し、それが通らないとイライラし、失敗することもある。それはサッカーにも表れると見抜いていました。
またセルジオ越後はこんなことも言っています。
「もっとファンのみんながいろいろな、それぞれのサッカー観を語り合い、思入れを話し合ったらどうだろう。いい、悪いでもない。間違っているでもない。正しいでもない。
互いの意見や人生を尊重し、ああそうか。わたしはこうなんだ。とビール飲みながら、コーヒー飲みながら自由な雰囲気で談義したらどうだろう。議論で戦うのではなく、おしゃべりを楽しむのだ。
私自身は、いつもそう感じてきた。辛口で評論するのも、そういう話題のネタをひとつひとつ提起しかたったからである。
またそうしたサッカーの楽しみ方が定着すれば、サッカーだけでなく出過ぎた言い方かも知れないが社会も、人生も変わるかもしれない。真面目はいいことだ。でも真面目だけでは人生は窮屈だ。」(P5「さっか0は社会を映す})
全くセルジオ越後氏の考え方に賛成ですね。この場合「異論」を尊重し、冷静でいられるかどうかでしょう。すぐに激高し、相手を非難するようでは楽しい議論は出来ません。
「原発をどうするのか」「憲法をどうするのか」の議論も冷静にしないといけない。同じことであると思います。さすが日本の子供たち50万人を教えた人だけのことはあります。感心しました。
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