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2013.10.02

「日本共産党」を讀んで

Fudesaka0honmm

 「日本共産党」(筆坂秀世・著・新潮社・2006年刊)を読みました。随分前に」新書で購入していましたが、読んでいませんでした。最近になって読みました。

 といいますのも、7月の参議院選挙で共産党は久しぶりに注目を集めました。東京・大阪・京都の地方区でも議席を獲得しました。民主党等他の野党が惨敗するなか健闘していました。

 著者の筆坂秀世氏は、高卒後大手都市銀行三和銀行へ入行。18歳で共産党へ入党、25歳で党専従活動家へ。国会議員秘書を経て参議院議員になりました。共産党NO4の政策委員長になりましたが、「セクハラ疑惑」などで議員を辞職し、離党されました。

 若いころから共産党一筋の活動家であっただけに共産党内部の事情に詳しいので、一読に値します。恐らく筆坂氏については、共産党内部の「学習」では、「極悪非道なセクハラ元幹部」として、感情的な徹底批判されておると思います。

 筆坂氏は共産党に対する恨みつらみは全く書いていません。むしろ淡々と共産党の内部事情や、共産党員の生活を記述しています。

「日本共産党は、企業献金、政党助成金を受け取っていないことを大いに誇っている。政党じょせ金はともかく、企業献金を受け取らないのは立派だと思う。企業献金が多くの腐敗、汚職事件の温床になってきたことは間違いないからである。

 だかそのかわりに、一般党員は募金責めにあっている。党中央だけでも選挙募金、年末募金、夏季募金、党本部建設募金などがある。それに最近は衆議院小選挙区供託金支援基金が加わった。2005年の総選挙では、候補者を擁立した275の選挙区んもうち233選挙区で居委託金没収となった。その額は6億6900万円である。

 募金は党中央だけでない。都道府県段階でも,地区委員会段階でも、選挙のため、常任活動家の給与を支払うためなど、さまざまな名目で募金活動がおこなわれている。

   中略

 最近離党したという女性は、「政党助成金を受け取らないと体裁のいいことを言っているけれど、党員からは顔を見せればお金を出せ、暮れにはお餅やみかんを買えと言ってくる。党員からの血のにじむ献金で成り立っているだけではないですか。こんなことは自慢できることではありません」とEメールを通じて私に怒りをぶちまけた。」(P60[革命政党の実像」)

 これは党員は大変ですね。募金に加えて共産党機関紙「赤旗」の拡販もしなくてはならない。もちろん地方と国政選挙では協力支援しないといけない。大変ですね。

 「各地の支部を覗いてみるとわかるが、60代の党員など「若手」である。70代、80代が活動の中心という支部さえ珍しくはない。
 大企業の党支部にしても、私と同年代の団塊の世代が「若手」というところも少なくない。あと数年で退職する。(2006年時点での話。2013年時点では退職しています。)

 多くの大企業の党支部は、自然消滅の道を歩んでいる。退職後も居住地の支部で活動続ける党員もいるが、「退職後まで党活動をしたくない。ゆっくり趣味を楽しみながら老後を送りたい」といって離党して行く人も少なくない。心情はよく理解できる。」(P78)

 共産党も、町内会活動同様に高齢化が進行していますね。これではなかなか活力のある活動は出来ないですね。納得です。

また筆先氏は「共産党には政権担当能力は全くない」と断言しています。それは「国の安全保障問題」についての共産党の迷走ぶり、ドタバタを批判しています。

2000年のテレビ番組田原総一郎氏の「サンデー・プロジェクト」で小沢一郎氏(当時は自由党)と不破議長(共産党)の討議の中で不破氏は「迷走」しました。

 「不破氏が憲法で「国権の発動」としての戦争も「武力による威嚇又は武力の行使」も「国際紛争を解決する手段としては放棄する」とうたっていることをあげ、日本は国連の軍事行動には参加しない、と述べたのに対し、次のような討論が続く。

小沢 不破さんがそうだとはいいまっせんが、そういう議論で憲法を解釈していると、日本の防衛は日本の軍備でやるべきだという議論に発展していくんですよ。どうやって日本を守るのか。

田原 どうするのですか。

不破 われわれも自衛の権利を認めています。

田原 自衛隊は認めるわけですね。

不破 この憲法のもとでわれわれは自衛隊は認めない。

田原 もし敵が攻めてきたらどうします。

不破 そのときは自衛の行動をとります。

田原 自衛隊がなかったらだれがとりますか。

不破 必要なあらゆる手段を使います。

田原 どうやって

不破 といっても、そのときに、われわれは一編に自衛隊を解散するつもりはありませんから。そういう状態のないことを見極めながらすすみますから。(P175)

 1985年に時点の共産党は「将来の独立。民主の日本において、国民の総意で最小限の自衛措置を講ずる憲法上の措置がとられた場合には、核兵器の保有は認めず、徴兵制は取らず志願制とします。と言っていました。(P179)

 しかし最近は自民党の憲法改正案が出て「憲法9条を廃止し、自衛隊を自衛軍にする」という動きが強まると、共産党独自の「自衛隊活用論」を引っ込めて「違憲の自衛隊反対」「憲法9条を守れ」と叫んでいるだけのようにも思えますね。方針がぶれています。

 筆坂氏は言う「憲法9条の条文を素直に読めば、自衛隊が憲法違反の存在であることぐらいは大多数の国民は百も承知しているはずだ。それでも自民党政府の憲法解釈を受け入れ、あるいは黙認し、自衛隊を認知してきたのは、まさに安全保障が待ったなしの現実的な問題だからである。」(P179)

 独自の軍事論や国防論を持たないゆえに共産党は「迷走」してきましたね。そう思います。

 大江健三郎氏や故小田誠氏らも参加した「憲法9条の会」が今一つ盛り上がらないのも共産党の「ぶれた」対応と軍事論なき国防論が空疎であるからであると私は思います。

 7年前の本でしたが、面白く読ませていただきました。

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