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2013.11.01

「集団的自衛権の深層」を読んで

Syudantekizieikenhon


 10月13日に高知県立大学での「集団的自衛権と日本国憲法」と言う松竹伸幸氏の講演会へ行き聴講し、著作本も購入しました。講演内容を記述しました。重要な内容が含まれています。講演会の記述と著作の読書感想文です。

「日本が加盟している国際連合憲章第51条には、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が必要な措置をとるまでの間、加盟国は個別的・集団的自衛権を行使できる。加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならないとの記載されてはいます。

 しかし私が調査したところ集団的自衛権を行使した国はアメリカ、イギリス、旧ソ連とフランスしかありません。戦争も10くらいです。」これは重要な指摘です。

「国連憲章51条は他国から侵略行為を受けた場合は、個別自衛権は認められています。集団的自衛権のモデルは全米相互条約機構(リオ条約)です。またNATO(北太平洋条約機構)もありますが、この2つの機構は集団的自衛権を行使していません。」

「集団的自衛権行使の実例は、1968年の旧ソ連のチェコスロバキヤへの軍事侵攻と1979年のアフガニスタンへの軍事侵攻。1960年代のアメリカのベトナム戦争とグラナダ進攻と1984年のニカラグアへの進攻でした。ニカラグア進攻は米国の国際法違反と裁判所が判断を下しています。」

「集団的自衛権行使は、歴史的にはアメリカと旧ソ連の侵略戦争だったのです。安倍首相は日本の同盟国のアメリカの艦艇が自衛隊との演習中に敵性国家から攻撃を受けた。日本は反撃しなければならない。

 また北朝鮮のミサイルが日本の上空を通過して米国本土へ向かう場合は同盟国日本は迎撃しなければならないと言います。でもミサイルは最短距離で発射された場合、北極海の上を飛ぶので日本からどんどん遠くなっていきますね。この議論も虚構ですね。それにアメリカは日本に頼らなくても独自に反撃する力があります。世界1の軍事大国相手に攻撃を仕掛ける国があるとは思えません。」

 確かにそうでありますね。世界1の軍事大国のアメリカ相手に軍事攻撃を仕掛ける国は皆無でしょう。またアメリカは自力で相手に反撃する能力がある軍事大国です。日本の手助けなどまったく必要ではないでしょう。

「冷戦時代には集団的自衛権など全く言っていませんでした。今になってなぜと思います。旧ソ連と変わり台頭してきた中国ですが、経済的にはアメリカとはWINWINになっており、軍事的な衝突するとは考えにくい。安倍さんは中国に対抗するためにアメリカにおすがりするようですが、アメリカはドライに割り切ってます。アメリカは中国とは敵対しません。最近は軍事交流もしてますから。
尖閣諸島はお互いよく話し合って解決してください。とアメリカは言ってますからね。」
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 アメリカの姿勢は一貫しています。中国もそれがわかっているから中国海軍の艦艇ではなく、沿岸警備警察の艦艇で執拗に尖閣領海に侵入してきています。いわば「根競べ」のようなものですね。軍事的な衝突はないとは思えませんが、低いと思います。

 また講演で松竹氏は注目すべきことを発言しました。日本国憲法が果たしてきた「紛争の抑止力。平和的解決の威力」をわかりやすく話されました。日本国の平和主義と経済力こそが世界平和の原動力になっている実例を示しました。


「日本国憲法第9条と武器輸出禁止3原則が、世界の平和に果たした役割はとても大きいです。シエラレオネや東チモールでの治安維持。アフガニスタンでの軍閥の武装解除に果たした日本の役割はてとても大きかった。」


「武器を買い上げ、そのかわりに仕事や職業訓練を行い経済支援をすることで地域の平和が保たれる。軍事力を行使しなかった日本であるからこそできた国際平和貢献活動でした。」

 集団的自衛権行使の問題は、自民党内でもブレがあるし、肝心のアメリカともしっくり行っていないのではないかと松竹氏は著作のなかで指摘されています。


「日本は沖縄をはじめ多大の犠牲を払って米軍に基地を提供し、莫大な軍事駐留経費を負担し、アフガン戦争やイラク戦争の後方支援をして助けてきたが、その程度ではアメリカは日本のために働いてくれないという不安がある。

これだけのことをしても、アメリカは、日本が攻撃された時に助けてくれないだろうと言うのが、安倍首相や自民党の考えである。

これは日米同盟の絶対化と言うより、アメリカはその程度の国だという不信なのだろうか。もともと先の大戦において日本侵略と戦ったアメリカの理念と、それを侵略とは認めない安倍首相の価値観は、本質的に相容れないものである。

集団的自衛権をめぐる、事態の進展は、その矛盾をあらわにしていく可能性を秘めているのかもしれない。」(「集団的自衛権の深層」(松竹伸幸・著・平凡社新書・2013年刊 P43)


 松竹氏は「日本は湾岸戦争の時にお金だけ出して血を流そうと言うことをしなかった。旗印を明確にできなかったのは憲法のせいだ。だから憲法を変えよう。と自民党は言います。実は逆ですね。そうではない。軍を派兵しなかったので、世界の武装勢力から一目置かれているのです。


 日本が軍事力を行使しないで世界の経済大国になっているので、説得力があるんです。武器輸出で手を汚していないので、紛争地域の平和に貢献できるのです。それにはお金の力(経済力)が必要です。日本国憲法はまさに世界平和に多大な貢献をし、日本の国際的な価値を向上させる外交力になっているのです。」

また松竹氏は自民党の「集団的自衛権」の対象国がアメリカだけであり、「2国平和主義」にすぎないのではないかと鋭く指摘しています。

「一国平和主義と言う言葉があって、グローバル化した世界においては日本の平和だけを考えたらダメであって、世界の平和に貢献しなければならないというものだ。

 それがひいては日本の平和につながるのであって、だから自衛隊の海外での活動を拡大しなければならないという文脈で使われてきた。政府・自民党による集団的自衛権の行使と言う選択も、その流れのなかで出てきたものである、」(P179)

「しかし政府・自民党が打ち出している集団的自衛権というのは、じつはグローバル化した世界の安全保障という考え方とは無縁であるように思う。無縁と言うより、逆方向を向いていっているといった方がいいかもしれない。

 なぜなら、政府・自民党が考える集団的自衛権とは、ただただアメリカだけを守ろうというものでだからである。対象を広げる場合も、考え方の基本は、アメリカの同盟国程度のものでしかない

 安全保障という問題を、日本とアメリカの関係を基本に捉えると言う牢固とした思考方法の中に、現在の、政府・自民党の問題点が凝縮しているうように思える。それを克服しなければ、現在の世界にふさわしい安全保障体制は生まれない。」

「集団的自衛権とは同盟国を助けるものだという考え方は、冷戦期に特有のものであった。そして、そういう思考によって行使される集団的自衛権というのは、すでに詳しく紹介してきたように、実際には違法な侵略にほかならなかったのである。」

「一方、冷戦後の世界においては、どんな国であれ。武力攻撃を受けるようなことがあったら、国連安保理が関与する方向に向かっている。侵略された国は、集団的自衛権によってであれ、国連自身がのりだすのであれ、すべての国連加盟国の力で助けるのが基本方向である。

 そして、そういう場合で会っても、各国が暴走しやすい自衛権の枠組みはなるべく少なくし。出来るかぎり国連の枠組みで対処するのが望ましい。それが戦後国際政治の現実のながれであり、発展方向であろう。」(P181「日本と世界の未来のために対処を提示する」)

 なかなかの力作でした。ご一読をお奨めします。

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