「いちえふ」を読んで
「いちえふ 福島第1原子力発電所労働記1」(竜田一人・著・講談社・2014年4月刊)をようやく書店で購入し読みました。「いちえふ」は、毎週愛読している週刊「モーニング」誌(講談社・刊)に不定期に掲載され、注目していました。
作者の竜田一人氏は、大学卒業後転職しながら売れない漫画家をされていました。東日本大震災後「罹災地に役立つ仕事をしたい」という決意で、転職、福島第1原子力発電所で半年ほど作業員として働きました。会社の定める年間被ばく量に達したため退職されました。
自分の体験を漫画にしようと思いたち「いちえふ」を描いたそうです。作者は「これはフクシマの真実を暴く漫画ではない」と言われています。福島第1原発に派遣された下請け労働者の一員として、淡々と日常を描いています。でもその現実の厳しさに讀んでいて戦慄することもありました。
福島第1原子力発電所の事を「いちえふ」と現場作業員の間では呼ばれているようです。「フクイチ」とは言わないようですね。
作者は写真機などで撮影したわけではないとは思います。作業の様子、防護服を着用する様子、脱ぐ様子、放射性量を測定する様子などが詳細に。淡々と描かれていますね。
気負いこんで「告発」してやろうとかそういう気持ちは皆無なようです。「いちえふ」がどんなところか見てやろうとの好奇心と、少し罹災地貢献のための仕事が出来ればという気持ちであったからこそ、淡々とした描写が可能であったと思います。
生活している寮から、1時間余り車で「いちえふ」(福島第1原子力発電所)へ出勤。到着すると防護服や防護マスクの着用と、線量計が渡されます。僅か30分程度の作業で線量計のアラームが鳴れば、当日の作業は終わりでです。
年間被ばく量が限られているため、ベテラン作業員ほど離脱しなければいけない現実や、「いちえふ」での危険な作業でも6次下請けのために日当が8000円足らず。良否が1日1000円で食費は別ですから、過酷であるという労働の割には、現実の生活は厳しい。
作業員の多くは津波や原発被害で避難されている地元福島の人達が多いようです。家族と離れ単身で「いちえふ」の作業に従事しています。
読んでいてなかなか事態は収拾しないと思いました。
一読をお薦めします。
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