« ボーリング大会がありました | トップページ | 高知市津波浸水地区 »

2015.02.25

「社会的共通資本」を読んで

_new_r


 「社会的共通資本」(宇沢弘文・著・岩波新書・2000年刊)を読みました。書店で新書で購入しました。最近格差社会の批判者としてフランスの経済学者ピケティ氏が目立っておりますが、日本にもきちんとしたことを発言していた経済学者がいました。著者の宇沢弘文氏は2014年にご逝去されていますが、幅広い知識と、わかり易い表現で書いています。

「社会的共通資本は、1つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、豊かな経済生活を営み、すぐれた 文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置を意味する。」

「社会的共通資本は自然環境、社会的インフラストラクチャー、制度資本の3つの大きな範疇にわけて考えることができる。大気、森林、河川、水、土壌などの自然環境、道路、交通機関、上下水道、電力、ガスなどの社会的インフラストラクチャ―、そして教育、医療、司法、金融制度などの制度資本が社会的共通資本の重要な構成要素である。都市や農村でも、様々な社会的共通資本がつくられているということもできる。」(P2)

[効率的ではない」とかいう狭い経済的な観点から「日本は農業をすべてやめ,海外から安い農産物を購入したほうが良いとか言うもっともらしい暴論が時折見られますが、筆者は日本の農業を「社会的共通資本」としてとらえています。

 つまり水田がヒートアイランド現象を抑制し、洪水調整機能も担っていること。また多様な生物の多様性も維持してきました。その社会的な効用を無視し、新古典派経済学のように「工業化に特化し、農業を辞める」のは暴論と宇沢氏は言います。

 大学生であればきちんと読書ノートをこしらえ、精読しますが、なにかとせわしい初老のおっさんはななめ読みするのが精一杯でした。「社会的共通資本」と言う考え方で「農業と農村」「都市を考える」「学校教育を考える」「医療を考える」「金融制度を考える」「地球環境を考える」とありました。

 四国88か所開所1200年という事でしたので、空海についての記述に興味を持ちました。
Mannouike

「日本のコモンズ(共有地)の制度についても数多くの研究がされている。灌漑溜池、森林の入会制、漁業組合の制度などである。とくに灌漑溜池については、空海による満濃池の大修築と溜池灌漑の管理に関するコモンズの制度が、たんに歴史的な意味だけでなく、持続可能な農の営みというすぐれて現代的な意味を持つものとして注目されている。」

「空海は804年、31歳の時、入唐留学の僧に選ばれ、2年間、長安に留学した。空海は、中国の東晋時代の高僧法顕の書物を通じて、スリランカの溜池灌漑に関する技術を学んだのである。

 法顕は、399年、インドに仏典の勉強に行くが、当時のインドにはすでに仏教はほとんどなくなっていた。法顕は、そこで、当時仏教の中心であったスリランカへ行き、20年近く経ってから故国へ帰った。法顕は、スリランカで、仏教だけでなく、広く学問、技術を学んだ。とくに溜池灌漑を中心としたスリランカの農業について詳しい研究を残している。

 スリランカは1世紀から3世紀にかけて、シンハリ文明として、世界で最高水準の推理文明を誇っていた。それは溜池灌漑の土木技術を中心としたものであった。」

「満濃池は周囲20キロメーター、水面面積140ヘクタール、灌漑面積4600ヘクタールの日本最大の灌漑溜池である。8世紀の初め、創築されたが、あまりに巨大な為、。間もなく壊れてしまった。821年、空海は勅命を受けて、総監督として満濃池の修築にあたった。

 そのとき空海は、法顕から学んだスリランカの溜池灌漑の土木技術を使ったのである。空海による満濃池の大修築は、日本の土木史をかざる歴史的な工事として今に残っている。空海はまた、溜池灌漑の管理に関するコモンズの制度も導入して、日本の農業の生産性の飛躍的発展の基礎を築いた。」(P87「農業と農村 コモンズの考え方)

 満濃池の歴史 http://www.town.manno.lg.jp/manno_pond/pond_history.html

 満濃池の歴史を辿っても、空海が唐からの技術を活用して満濃池をこしらえたとありますが、その元祖がスリランカにあったとは書いていません。驚きました。

 公園を活用したモンスターと言う大規模なロック野外コンサートも夏に開催されますね。

 http://www.monsterbash.jp/(モンスター)

Img_05


|

« ボーリング大会がありました | トップページ | 高知市津波浸水地区 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「社会的共通資本」を読んで:

« ボーリング大会がありました | トップページ | 高知市津波浸水地区 »