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2015.02.10

復興<災害>を読んで


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 「復興<災害>―阪神・淡路大震災と東日本大震災」(塩崎賢明・著・岩波新書・2014年12月刊)を読みました。実は、1月17日に神戸市長田区鷹取東地区の20年」慰霊祭に行く前に新刊本で購入していました。一応行く前に積読はしていたものの、震災から20年経過した長田の現実に打ちのめされ、ようやく読書ノートが書けるようになりました。

震災から20年が経過していても、借金の返済をされている人たちや、長年続けてきたご商売をやむなく廃業されている商店主も多いと聞きました。鉄人28号(作者の横山光輝氏が神戸の出身)の巨大な像のある新長田駅前から鷹取東地区を歩きました。思いは複雑でした。

 住宅は新しくなってはいますが、ところどころに空地もありました。3階建てが多いですが、住民の方に聞きますと、区画整理事業で減歩され道路に土地を提供したので敷地が狭くなり3階建てにされた家屋が目立ちます。
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 たしかに長田には、震災遺構はありません。JR新長田駅前は高層マンションが林立し、駅前商店街の商業ビルも立派でした。しかし活気があるか、発展しているのかと言われますと、(高知とは比較できない大都市神戸市ではありますが)どこか違和感を感じていました。
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「筆者が「復興災害」という言葉を初めて使ったのは、阪神・淡路大震災から10年が過ぎた2006年のことである。大震災の被災状況調査や避難所、仮設住宅、復興公営住宅、区画整理事業や再開発と言う復興まちづくりに関わるなかで、いつまでも孤独死がなくならず、まちづくりで苦闘する人たちを見て、これは災害の後の復興政策や事業が間違っているのではないかと思うようになった。」

「震災で一命をとりとめたのにもかかわらず、復興途上で亡くなったり、健康を害して、苦しんだりする人々が大勢いる。その被害は個人の責任だけに帰することはできないと思えた。この復興による災厄は「復興災害」と呼ぶ以外にはあるまい。これは自然の猛威ではなく、社会の仕組みによって引き起こされる人災であり、本来防ぐことが可能な災害である。」

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「実は、現在の防災・減災対策の中で、復興施策はほとんど位置づけられていない。命さえ助かればあとは自分で、という形になっているといっても過言ではない、しかしそれでは多くの被災者は生きて行けず、生活再建はできない。そこに復興災害が発生する根本原因がある。

 復興の事業の多くは公共施策として行われるが、その内容は貧弱で、被災者の実情に合っていないことが多い。」(P3)

 筆者は震災後20年が経過しても、阪神・淡路大震災の被災地では「復興災害」にさいなまれている人たちが存在していると指摘されています。それが2011年の東日本大震災での復興事業に活かされているとは言い難い現実があるとも言われています。

 日々いつ起きるかもしれない南海トラフ巨大地震の恐怖で毎日日にち海抜0メートル地帯に住んでいる私たち高知市下知地域住民の想いや、考え方は、高知県庁や高知市役所の言う「減災対策」にはまず活用されないし、意見の聴取をすることもありませんでした。
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 いつ開催され、だれが委員であるのかも不明な県・市による「南海地震長期浸水対策検討委員会」なども該当地域住民抜きで「勝手に」審議され対策が検討されているようです。そして検討会の意見がまとまってから(住民の意見は全く聞くことなく)、住民側にやおら事後報告するとされています。呆れますね。そしてその検討案を押し付けてくるのですから。

  http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/010201/choukishinsui.html

 南海トラフ巨大地震が起きる前からこの有様で、極めて貧弱な事前対策しかなされていません。実際に甚大な被害がでたならば、高知市低地に住む13万人の市民の避難、生活再建は極めて難しいいばらの道であることは想像が出来ます。

 著作の中で新長田駅南地区の再開発事業の記述がありました。

「東日本大震災の被災者らが、阪神・淡路大震災の復興に学ぼうと神戸を訪れ、予想に反して衝撃を受けるのが、新長田の再開発事業である。そこでは震災後20年を迎えても事業は完了せず(現時点のめどは2017年とされている)、それどころか出来上がった再開発ビルの中はシャッターだらけで、多くの商店主が日々苦しんでいる。巨大再開発と言う復興施策がもたらした「復興災害」がいまなお進行中なのである。」

「神戸市長田区の新長田駅南地区再開発事業(面積20ヘクタール)は、阪神・淡路大震災の復興都市計画事業のなかでも最大のものであり、他の事業が完了する中で今も大きな困難をかかえている。

 新長田地区は。ケミカルシューズの工場や卸売店舗が多く、商店街が縦横に張り付いた住宅・商業・工業の混合地域であった。建物の多くは2階建て以下の木造で、無数の路地で構成された神戸の代表的な下町である。震災では市街地大火によって壊滅状態となった。

 従前の世帯数は1600世帯、人口4600人で、権利者数は2162人であった。

 新長田の再開発事業は、いわゆる第2種再開発事業で、管理処分方式をとっており、神戸市が地区内のすべての土地を買収し、44棟のビルを建設する計画である(総事業費2710億円)。2014年6月に37棟が完成し、1棟が建設中、6棟が着工予定である。」

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「再開発ビルの分譲住宅の価格は、688万円(27・24平方メートル)から、4675万円(124・23平方メートル)で、ほとんどの場合、従前権利の評価額より分譲住宅の価格の方が高い。

 追加的な資金を持たない人は、わずかな補償額を手に転出するか、受け皿住宅に入るしかなく、震災前の住民の45%は地区外に出たという(日本経済新聞 2009年1月13日)。筆者らの初期の調査でも、分譲住宅の入居者の76%は地区外から来た新住民で、従前の住民は24%であった。」(P42「新長田駅南地区再開発」)

 商業者や事業者には復興には大変な困難が伴いました。

「一般に、市街地再開発事業では、従前の居住者・権利者が地区に留まることは難しく、大半が転出することが多い。商業者・中小零細事業者の営業を確保し発展させることは、当事者にとって死活的な問題であると同時に、地域の活性化という点からもきわめて重要な問題がある。

 しかし、従前の商店・事業所が営業を再開するのは大きな壁がある。主なものは以下の3点である。

第1に、従前資産の評価に比べ権利床価格が高いために、入居できないことである。

第2は、共益費、管理費などのランニングコストである。床の買い取り価格に加えて、巨大なビルを維持するための共益費、管理費など、以前はなかった負担が新たに増える。

第3は、再開発によって生み出される商業床が過大な事である。神戸阪神間ではすでに商業施設が過集積しており、大規模な商業床は競争を激化させ、営業にとって困難をもたらす。

 商業床の大部分を「新長田まちづくり株式会社」に賃貸契約しているため、形式上は契約済みになっているのであろうが、各ビルの1階部分では賑わってる店舗もあるものの、2階や地下ではシャッターが閉まったままの区画が目立つ。」(P439)

 確かに2015年1月17日に地元のチョ・ホンリさんに案内していただき、新長田駅周辺の商店街である新長田1番街商店街、大正街商店街、六間道商店街、西神戸センター街などを歩きましたが、著作で指摘されているような現実を見ました。
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 http://futaba-bousai.cocolog-nifty.com/blog/2015/01/post-39d2.html

 確かに大阪近辺は梅田駅周辺も大規模な再開発され、商業集積が進みました。また超高層ビルの商業施設であるあべのハルカスなども開業しています。同じ神戸市の三宮周辺との競合もあるでしょう。

 職住・商工混合の下町の風情は失われ、巨大な高層ビル群と、商業ビルには活気のない現状を見ると、神戸市の大規模な長田の再開発事業は完全に失敗していると思いました。

 やはり当事者である住民不在の再開発計画であったことが失敗の大きな原因であったと思います。神戸市都市計画部局の思い上がりと市民軽視の開発手法が破たんの原因でしょうね。
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 また現在東日本大震災の復興事業も、地元の意向が無視する形で進展しているようですね。                                   

「多くの市町村では、震災前よりも高い防潮堤を建設し、道路や鉄道敷を盛り上げて堤防替り(2線堤という)とし、浸水を防ぐ計画になっている。また、今回津波で浸水した市街地を大規模に盛土する計画も多い。しかし、それらの計画に対する疑問も少なくない。
 高い防潮堤については、景観上の問題や、海との関係の段絶、津波避難がかえって遅れるといった点や、海岸の環境破壊なども指摘されている。

 城壁で囲まれたようなまち、海の見えないまちになって、将来の街の発展があるのかといった危惧がすでに住民から出されている。また、数百キロメートルにわたって三陸沿岸を巨大防潮堤が覆う事業は、海岸地区の自然を著しく破壊するという指摘もなされている。本来であれば、十分な環境アセスメントがされなくてはならない大事業である。十分な検討もないままに、予算がかくほされたからといって巨大事業が展開され、人々の生活が戻らない街になってしまっては、本当の意味で復興とは言えない。」(P130「住宅復興とまちづくり」)

 東日本大震災後の復興事業でもまたしても阪神・淡路大震災の「復興災害」の教訓が生かされていないように思います。巨大なコンクリート護岸の背後の街には誰もすまないような現実になるのではないでしょうか。

 また筆者は原子力発電所の稼働をさせないことが、重要な防災対策であると言い切っています。
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「原発に「世界最高水準」の安全性を求めるといった議論があるが、ほとんど無意味と思われる。一体、何をもって「世界最高」というのか。世界第2位と比べてどれほど安全になるのか。地震や活火山が多く、狭い国土に55基の原発(もんじゅも含む)が存在する日本は、世界的に見てもけた違いに危険な状態にある。」

「大地震の回数[最近100年間発生した死者1000人以上に地震)と原発の個数を、国土面積あたりで比較してみれば、日本の(地震×原発)指数は、38・09で、世界のどの国よりも数百倍ないし無限大の危険性を抱えている。」

「仮に原発が1基になったとしても、指数は0・69で、第2位のパキスタンの7・7倍あり、世界1危険であることに変りはない。狭い国土で地震が多いこの国では、国土を安全で強靭にするには原発をゼロにするしかないのである。」(P185「大災害時代の幕開け」)
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 塩崎賢明氏は「次なる震災復興の備え」として住宅復興の観点から提起をされています。

①避難所生活の改善

②複線的な総合プログラムの作成

*応急仮設住宅の質の向上

*自力仮設の認容

*みなし仮設の制度改善

*家賃補助制度の導入

*被災者生活再建支援金制度の改善

③住宅再建・生活再建と整合性のある災害復興まちづくり制度

④防災・復興省の創設

 「それらの提案事項を「阪神・淡路大震災の経験と東日本大震災の復興の現実から真摯に学び、既存の制度や悪しき慣習にとらわれず、1人でも多くの命を救い  中略

 大胆に法律・制度や仕組みを改革することが、一刻の猶予もなく求められている。」と言われています。

 南海トラフ巨大地震の恐怖に毎日苛まれています。既に私たち海抜0メートルの高知市の下知住民は被災者になっていると思います。既に地域の地価は暴落し、誰も買い手がつかない状態になっているからです。よほど資産がないと地域外への移転もままならないのです。

 南海トラフ巨大地震は近づいて来ています。なんとか困難な地域に住んでいますが、生きのびたいと思っています。本気で活動をしなければいけないと思いました。


 

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