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2015.04.03

「地方消滅の罠」を読んで

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 「地方消滅の罠 増田レポートと人口減少社会の正体」(山本裕介・著・筑摩書房2014年刊)をようやく読み終えました。タイトルに魅かれて購読し読み始めましたが、結構専門的で、学窓肌の文体であり読むのが正直辛かったです。

 それに「増田レポート」を全面批判していますが、そもそも増田レポートを知らないし、読んだこともないので、そんなものかとの感想ですね。

 筆者の批判している増田寛也氏ですが、1951年生まれの現在63歳。東大法学部卒で中央省庁の官僚をされていました。1995年から3期岩手県知事をされておられ、ました。2007年には、総務大臣もされておられました。知事時代に「がんばらない宣言岩手」を言われていました。

 最近は21世紀臨調(新しい日本をつくる国民会議)のなかで、地方自治のありかたで「増田レポート」を発表。その内容を筆者が詳細に批判されておられると思いました。

 山本裕介氏は、地方自治に「選択と集中」の経済原理主義を導入すべきでないということを言われています。では「選択と集中」は誰がやるのか?増田レポートでは「国がやること」になっており、地方自治をないがしろにしていると批判しています。

 「もっとも各地域の事情は様々であり、人口も当然ながらその事情によって増えたり、減ったりする。いまや住宅地も市町村境を越えてつくられるから、全体としてはバランスが取れていても、市町村間にはアンバランスもあわわれる。

 産業を多く持ち就業地を多く抱えながら、人口が伸びない都市。逆に産業も何もないのに、住宅政策だけで人口が伸びて行く地域。それを単純に結果としての住民票の数だけで評価することになれば、それは実態にそぐわないだろう。

 そこで結局、全体のバランスをとるためにも広域合併ということになるのかもしれないが、広域合併すればますます住民と行政の距離が離れ、自治は機能しなくなり、人口減少問題に取り組むための細やかな施策形成の可能性が失われることになる。」

「こうしてみると、例の平成の大合併は、財政をとるか、(カネを取るか、、自治を取るか(心をとるか)の二者択一を迫るものであったわけだ。

 そして素直に国の意向に従って財政の方をとったところが、結局人口減少が止まらなくなり、あらためて地域政策をやり直そうにも地方自治の手掛かりが失われて手の着け様がないない事態に陥っているわけだ。」(「数の論理が地域を破壊する」P232)

山本裕介氏は以下の事を声を大にして言われています。

 [地方消滅・自治体消滅・人口減少」に本当に必要な対処とは、「行政サービスとして最低限の生活インフラは今後もしっかりと維持して行きましょう。そのためのスキームはこうです」という戦略づくりでなければならないはずだ。」

 中略

「残せるはずの学校のいくつかが統廃合され、地域を支えるのに必要な店や病院がなくなりつつある。地域の暮らしを支える仕組みが、日々目に見えて細りつつある。だが現行のルールに従っていればそうなるのは当然であり、ルールに忠実であればあるだけ、必然的に生じてくる結果なのだ。」(P234)

 お人よしの日本人の「国民性が問題」であると指摘します。

 「そしてどうも、そうなる理由をたどれば、この日本という国に暮らす人々は、きわめて従順な国民性を持っていて、上で決定したルールに対してはどんなものであれ従うようなのだ。

 それだけ政府を、国を信頼しているのだというべきだろう。だがだからこそこんな地方消滅が予測されるような事態になったのであり、この失敗を反省して、今度こそ生活インフラの維持を全体としてどう長期的に安定的に確保していくのか、その新たなルールの確立を急がなければならない。」(P234)

 都市部の生活に余裕のある市民の多くはこういう考え方でいるらしい。

「あなたたちは存続するに値しない地域だから、早く解消しなさい。あなたたちはこれだけのコストがかかるが、もう支払いたくない。あなたたちは少数だkら自分たちだけで支払えないでしょう。

 もう以前どうりには暮らせない。わたしたちは豊かにくらすけど。」(P235)

 実際には目先のコストだけで社会は出来ているわけはない。大都市部では確かに見かけの収入は高いかもしれませんが、食料も水も地方の地域なしでは自力で供給できません。「お互い様」の感覚はもつべきでしょう。

「農家の所得は低い。でもそれでも私たちが日々食べていけるのは、農家の人々が生産してくれているからなのだ。またこれは裏を返せば、農家は農家で日々生産できるのは、都市の人々が毎日働き、内需を拡大し、外貨を稼ぎ、経済活動という形で財を増やして再分配してくれているからだ。

 その再配分で暮らしのインフラが整っているので、安心して農業生産もできるのである。両者の関係はバランスが取れており、どちらも相手を必要としていてここに何の矛盾も対立もない。そしてここにある経済格差など気にせず、それぞれがそれぞれに納得して暮らしていればよいはずなのにーそしてそれがつい最近までそれが常識であったはずなのにーなぜかこの分業にカネ勘定の損得が入り込み、目に見える人口や経済活動のみが実態でSiminsanka5ehashigodan_4


あるかのように勘違いしてしまって、妙な感情論が渦巻いている。」(P236)

 日本社会全体が、人口減少状態になり「縮小均衡」が強いられる状態になりました。そのなかで「コンパクト・シティ」という都市論が話題を呼んでいます。コンパクト。シティの理念は「循環」「持続」「協働」「自立」であります。

 「持続可能であるためには、循環が起きなければならない。循環は協働で生じる。行政だけでできるものではない。そして協働は、市民の自立があってはじめて可能なものだ。」

 中略

「社会は持続しなければならない。持続のためには様々な循環が必要だ。そして循環が成り立つには、そこに様々な主体の協働が必要であり、その協働の基礎には自立がある。

 そして自立のためには各自がコンパクトでなければならない。農村は農村で、都市は都市で。それぞれの地域が小さく自立していることで、協働が生じ、。循環が必要となり、持続可能な縮小社会は実現する。」(P205[コンパクト・シティの正しい理解」)

 やはりどのような地域社会であっても、「住民自治」が必要であるということですね。「住民自治」がしっかりあるところは、まず地域社会は消滅することはないからです。

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