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2015.05.03

「日本のいちばん長い夏」を読んで

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 「日本のいちばん長い夏」(半藤一利・編・文芸春秋・2007年刊)をようやく読みました。4月に入って読み始めましたが、おりしも統一地方選挙が始まり(県議・市議に地域代表が出馬していました。)、また仕事の上で大きな山場があり、なかなか読み進めませんでした。

 ようやく一段落したので読みました。おりしも大型連休前後は、安倍首相が「宗主国・アメリカ」を訪問。安倍内閣が国民不在で強引に推し進めている「戦争法案」の説明と、従属国としての心得をオバマ米国大統領に伝達しに訪問しています。全くの愚か者です。日本国を戦争の継続をやめ、命がけの決断によって実行した人物について書かれてありました。

こうした優れた人物が敗戦時にも日本国におられたということで、救いの気持ちになれました。

 敗戦―無条件降伏のその瞬間、それぞれどこにいて何をしておられたのか。半藤一利氏が1963年に企画した座談会には、30人が出席され語られています。前線にいたもの。捕虜収容所にいた者、外国にいたもの。刑務所にいた者などそれぞれです。

当時これだけ広大な地域に、それぞれの人達がいて、日本帝国の無残な敗戦の日をどういう気持ちで迎えたのかというだけでこの本への興味が尽きませんでした。また政府の高官、軍人、捕虜、政治犯、文化人、などの異なる立場からのコメントには納得できることが多かったです。
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 戦局が絶望的になり、毎日日にち都市が空襲に晒され、沖縄が占領され、広島・長崎に原爆が落とされても、ソ連に講話の仲介に望みを託したり、全く軍事力がないのに本土決戦を勇ましく言い続ける軍部の幹部たち。このままでは本当に日本国は滅亡するだろう。

 潔くポツダム宣言を受諾し、戦闘行為を中止し、無条件降伏する。その決断をしたのは誰なのか。敗戦後の日本の平和国家の基礎をこしらえたのは誰なのかに私は興味がありました。

 その人物は、鈴木貫太郎首相(海軍出身)と陸軍大臣阿南惟幾(あなん これちか)の存在でした。

 作家の志賀直哉が鈴木貫太郎についての随筆を書いていたそうです。

「正面衝突なら、命を投げ出せば誰にでも出来る。鈴木さんはそれを望み、遂にそれを成し遂けた人だ。鈴木さんが、その場合少しでも和平を二歩はせれば、軍は一層反動的になる。

 鈴木さんは他には真意を秘して、結局、終戦という港にこのボロ船を漕ぎつけた。吾々は今にも沈みそうなボロボロ船に乗っていたのだ。軍はそれで沖へ出せと言う。鈴木さんは舳だけを沖に向けて置き、不意に終戦と言う港に船を入れていった。」と書いています。

 そして、終戦で鈴木さんの果たした大任は日本海海戦の東郷さんよりも国民から感謝されていいと思う、」と。(P162)

 志賀直哉が絶賛されてますね。終戦に命をかけた鈴木貫太郎首相。今の安倍晋三首相のなんとも愚かで、薄っぺらな事でしょうか。日本国をアメリカに売り飛ばそうとしてますからね。戦争法案ばかりこしらえて先人の偉業を振り返らない大ばか者です。

 阿南陸相は「クーデターを起こして戦争を続行するのだという下からの突き上げに対し、それは認めなかった。「聖断は下ったのである。不服のものは自分の屍を超えていけ」と言って、結局そこでクーデター計画は止められることになったわけです。」(P156)

半藤「阿南さんは天皇を守ると言う一点だけ。あとは一切考えませんでしたから。天皇を守れなかったらば抗戦すると。そういう意味では阿南さんは一途でした。」

松本「それに、天皇が決断を下したのだから、それに反するやつは俺が許さないという姿勢をとりました。迫水さんが天皇に判断してもらうしかなかったと発言していますが、むしろ天皇に判断させたことによって、あの終戦がまさに完成したのだと思います。」(P158)

 大日本帝国憲法下においても天皇は立憲君主でした。政治に口を出す、まして敗戦の受諾を自らの口で述べ、ラジオのマイクの前で国民に話すことは、異例中の異例でした。でもその行為がなければ、8月15日の時点で戦争は終結せず、」無意味な本土決戦での戦闘行為でより多数の国民が亡くなったことでしょう。

 玉音放送の言葉「耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍ぶ」は、おそらく陸海軍軍人に対する呼びかけであったと思います。天皇の軍隊だからこそ、天皇みずからが降伏を受け入れ、武装解除せよと言っているのですから。

 阿南陸相は、日本帝国が連合国のポツダム戦争を正式に受諾した日に割腹自殺されました。敗戦の責任を一身に負う見事な最後でした。これこそ国士と呼ばれる人物でしょう。

 鈴木首相、阿南陸軍大臣、昭和天皇の連携プレーで、日本国は戦争を終わらせました。3人の人達が命がけで終わらせた戦争。作り上げた70年続いた平和国家日本。その日本の伝統を軽薄な安倍内閣によって、再び「戦争国家」にしようとしています。

 歴史を正しく勉強しない軽薄なリーダーに国を任せてはいけません。つくづくこの書籍を読んでそう思いました。
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