テロリストの心情
文学的な教養のない私は、断片的な情報でしか知りません。かつて歌人の石川啄木が、テロロストの心情を詠んだ詩がありました
ココアのひと匙 石川啄木
われは知る、テロリストの
かなしき心を
言葉とおこなひとを分ちがたき
ただひとつの心を、
奪はれたる言葉のかはりに
おこなひをもて語らんとする心を、
われとわがからだを敵に擲げつくる心を
しかして、そは真面目にして熱心なる人の常に有つかなしみなり
はてしなき議論の後の
冷めたるココアのひと匙を啜りて、
そのうすにがき舌触りに
われは知る、テロリストの
かなしき、かなしき心を。
この詩が公表されたのが1911年頃だとのこと。前年の大逆事件や、ハルピン駅で朝鮮総督府長官伊藤博文を暗殺した実行犯安重来の処刑のニュースから、石川啄木が詠んだともされています。
大逆事件は天皇暗殺の準備段階での予防検束であり、全く実行犯グループとは関係のなかった社会思想家幸徳秋水も連座して処刑されました。
日本が日露戦争後、アジアとの共存共栄の精神を捨て、中国での辛亥革命にも冷淡で、以後朝鮮国の併合と、中国への侵略戦争に走っていく分岐点となる出来事でした。
国内外を息苦しい圧政政治が覆いました。思想統制を国民に強要する特高警察の暗躍や、軍部の暴走で、日本国の多様性や自由闊達さは喪失し、批判精神はなくなりました。その結果は燦燦たる敗北を喫した二次大戦へ転がっていく転換点でもありました。決して安倍政権の言う「栄光の歴史」なんぞではなく、惨めな歴史そのものでした。
フランスのテロをどう考えたらいいのでしょうか?
フランス・パリの繁華街での同時多発無差別テロ。ISの犯行であると言われています。シリアを拠点とするイスラム過激派組織への空爆への報復であるとか。
私はテロというものは、権力者を暗殺するものであると思い込んでいました。しかし今回のパリのテロは週末の夜、一般市民が勤務を終えて楽しんでいた集客装置で突然銃が乱射され、爆弾が破裂し、129人が死亡しました。
サッカー・スタジアムやコンサート会場、レストランなどでした。無差別テロでありました。人々が都市部で集まる楽しい場所が襲撃され、燦燦たる修羅場になりました。これはテロと言われるものでしょうか。
襲撃されたフランスの市民は権力者ではありません。直接イスラム国を攻撃したり、攻撃を命令する権力者でもなんでもない人たちです。なぜ勤労者をテロリストは攻撃し、自らも殺害され、自爆したのでしょうか?
実行犯とされた人たちも、多くは移民ですが、フランス国籍やベルギー国籍を持っている20代の青年たちです。欧州で育ちながら、何故欧州の市民社会を破壊し、自らの自爆しなければいけなかったのでしょうか?
有志連合とされるアメリカやフランス、トルコや、最近ではロシアによるIS支配地区への空爆も、多数のシリアの市民が犠牲になっていると言われています。
憎悪が憎悪を生み、より多くの人達が犠牲になるテロや報復軍事行動が行われることでしょう。これでは問題は永遠に解決しません。憎しみの連鎖は、より多くの報復を生むだけです。
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