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2016.12.04

「売る力」を読んで

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 「売る力 心をつかむ仕事術」(鈴木敏文・著・文藝春秋・2013年刊)」を古本屋で購入して読みました。2013年と言えば、まだまだ全盛期の鈴木敏文氏の時代でしたね。

 2016年2月に「なんだかよくわからない」社内の争いに嫌気がさしたのか、セブン&アイ・ホールディングスの役職を退任されました。今の心境はいかに。

成功した人に共通する「武勇伝」の連続ですが、ライターが上手いのか嫌味はさほど感じません。本人によれば、レジ打ちも現場での販売も未経験ですが、お客の立場に立って一貫して販売戦略を考え、実行し」、成功した人でした。

 前人未到の道を突き進み、成功事例を豊富に作り上げた人なんでしょう。コンビニエンス・ストアという「本部だけがぼろ儲けするシステム」「果てしなく店主や店オーナーは収奪され続ける奴隷経済システム」の生みの親でもあります。悪徳商人と言ってもいいでしょうね。

 「ごほうび消費やメリハリ消費 イベント消費こそチャンス」

 「現在の消費者は消費を正当化する理由を求めている」(P73)

 このあたりは「つかみ」のお話でした。

 鈴木氏は「私が提案して反対された13のプラン」(P82)を説明されています。いずれも後日すべて実現されたものです。提案当初は関係者各位から猛烈に反対され田プランでした。

1)トーハンの弘報課時代、20代でPR誌の「新刊ニュース」の抜本的なリニューアールを提案し、上司や役員に反対された。

2)30歳の時に転職したヨーカ堂では管理部門を担当し、資金調達のため株式上場を上層部に進言し、社内外の顧問弁護士やメインバンクからも反対された。

3)スーパーのような大型店と小型店とは共存共栄が可能であることを示すため、日本初めての本格的コンビニエンス・ストアチェーンであるセブン・イレブンの創業を提案し、会社の幹部、業界関係者、学者・・・・とあらゆる方面から反対された。

4)多くの品目を扱うコンビニ経営を成り立たせるため、大口配送が業界の常識だった時代に、小口配送を求め、問屋から猛反発された。

5)コンビニは正月も営業する以上、新鮮なパンを提供できるよう、製パンメーカーに正月中も製造を求め、猛反発された。

6)セブンイレブンの店舗への納品車両台数は創業当初、1日70台にも上ったので(現在は9台)、これを減らすため、牛乳メーカーに他社製品も混載する日本発の共同配送を提案し、これも猛反発された。

7)コンビニで販売する日本型のファーストフードが必要と考えて、弁当やおにぎりの販売を提案し、そういうのは家でつくるのがぞ常識だからと売れるわけがないと」反対された。

8)ヨーカ堂が三越を抜いて経常利益日本1になった翌年度の1981年度中間決算で創業以来のの減益に陥った。売り手市場から買い手市場への転換に対応するため「豊富な品ぞろえ」から、「売れ筋商品の絞り込みと死に筋商品の排除による在庫削減」へと根本的な政策転換を唱えたところ、「在庫を減らすと売り上げが落ちる」と反対された。

9)消費税が3%から5%へ引き上げられた1997年の翌年、不況突破企画として「消費税分還元セール」を発案した際、普段の売り出しで10%、20%引きでも必ずしも売れるわけではないのに、5%では魅力を感じてもらえない。と営業幹部の大半から反対された。

10)セブン―イレブンの店舗で顧客にいつでも焼きたてのおいしいパンを提供できるよう、製造工場を出来るだけ店舗の近くに配置換えし、製造から配送まですべてを組み直す提案に対し、製パンメーカーから拒否の意向が示された。

11)セブンイレブンの店舗にATMを設置するため。自前の銀行(現セブン銀行)を設立する案に対し、素人が銀行を始めても必ず失敗する。と金融業界を中心に否定論の嵐が巻き起こり、メインバンクからも頭取が直々に来られて、反対された。

12)低価格優先ではなく、質を優先するPB商品を開発すること。それを、グループのどの業種でも同じ価格で販売することに、社内から反対の声があがった。

13)ワンランク上のPB商品、セブンゴールドの開発を提案すると、価格を高くすると売れないのではないかと消極的な声が聞かれた。( P86.)

 まさに鈴木節の真骨頂ですね。

「実現する方法がなければ、自分たちで考えたらいい」

「お客さまのためにはうそ、お客様の立場でが正しい」

「変化に対応すれば市場飽和はありえない。」(P202)

「目の前の石垣を1つい1つ積んでいかなければ、いくら先を読んでも仕方ない。」

「売る力は挑戦と努力で高まる」

 実践家ならではの言葉で最後のページを締めくくっています。

「仕事の現場にいる人たちは、けっしてサボったり遊んだりしているわけではないでしょう。人それぞれに一生懸命で必死でやっていることでしょう。それでもうまくいかないときは、いますぐに自分の目の前の状況を洗い出し、考え方を1度すべて白紙にして戻し、原点に立ち返って考えることです。」

「そしてすべてお客様の立場で考えて、毎日真剣勝負で、1歩踏み込んで挑戦し努力を重ねることです。

 自分に言い訳するくらいなら、懸命にやったほうがいい。失敗したらこれはやむを得ないと覚悟しながら、恐れることなくやるだけのことはやったほうがいい。自分の能力いっぱいの力を尽くす。もし転んだら反省してまた挑戦すればいいのです。

 真剣勝負で本気の人には必ず、チャンスがめぐってきます。」(P243)

 今年は騒動があっただけに書き出しした言葉を「神格化」することはなく、いいものはいいという観点で読んでみました。13の無理難題も、結果すべて実行し、成果を上げたものばかりです。

 提案力と実行力はたいしたものであると感心しました。自分などはまだまだ工夫も実行力も足りないと思いました。反省します。

 

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