認知症対策に演劇の効用
高知新聞2020年3月16日(月)の夕刊のコラム「老いと介護の舞台にて」(菅原直樹・劇団(オイボックス主宰)は秀逸でした。
「認知症の妻 演技で好転」という見出しがすべてを表しています。
劇団オイボックスの看板俳優の岡田忠雄さん(93歳)は同じ年の奥さんを10年前から在宅介護をされています。認知症の奥さんとは、介護が始まった当初は喧嘩をされていたとか。
5年前に転機がありました。「老いと演劇のワークショップ」に参加してから、苦しかった介護に大好きな演技が役に立つことを知ったことです。
コラムの中で具体的な事例を菅原さんは述べています。
「ある日、自宅で奥さんが「家に帰ります。」と外に出ようとした。これまでだったら「家はここじゃが」とけんかになっていたが、岡田さんは「そしたら暖かい服を着ようか」と演じる。
奥さんの言動を受け入れた上で、時間稼ぎをする。
「今、道路が混んどんじゃって、ミノル兄さんから、もう少し待っとって電話があった」。
認知症を患っても昔の記憶は残っているので、お兄さんの名前を出して安心感を与える。「そしたら部屋で待っていようか」「うん」。奥さんは岡田さんと共に部屋へ戻っていった。
介護に演技を取り入れることで岡田さん夫婦に再び平穏が訪れた。」
私も家内と2人で認知症の母(94歳)の介護を始めて9年になります。母がアルツハイマー型認知症と認定されたのは2008年。12年前でした。
初期の頃は、私もおろおろするばかりで、怒っていました。几帳面でいただいたご祝儀や香典をすべてノートに記述していた母が、記帳ができなくなり、記憶が飛んで行くようになりました。
2014年の10月に、当時のケアマネジャーさんのお誘いで高知市の主催する「認知症重度化防止塾」を受講しました。
http://dokodemo.cocolog-nifty.com/blog/2014/11/post-0122.html
その後母の認知症も進行し、現在は要介護度3になりました。在宅介護のぎりぎりのところで踏ん張っています。
トイレの感覚がなくなり、24時間オムツとパットをしています。認知症の初期の頃は5分おきにトイレに行っていましたが、いつしかトイレに行くことも忘れ、尿失禁と便失禁を繰り返すようになりました。
トイレでうまく用足しができるのは、「2回に1度」で半分の確立です。トイレの用足しは「人間の尊厳」の1つですが、家族としての願いは、母が「自分の意思でトイレで用足しが出来る・」ことです。
母は内臓も丈夫で内臓疾患はありません。歯も欠けてはいますが28本あります。循環器も問題ありません。健康そのものです。
母と付き合って分かったことは「認知症は100人100様である。」ということです。1つとして同じ症状ではありません。個性があります。
2年前に父が他界しましたが、母は悲しみに暮れることがありません。それは私に「父の面影が」あり、私のことを息子であり、父の代替と思っているのではないかと思います。
母は認知症ですが、「けだもの」になったわけではありません。母親としてのしぐさが残っています。私がだらしのない服装をすると訂正しようとします。
朝の儀式は、母にホットコーヒーを入れてもらうことです。若いころ少しの期間、喫茶店を経営したことがありました。上手にコーヒーをたてます。なかにはできない作業もありますが、できない箇所をサポートすれば、あとはできます。
母の認知症と毎日日にち付き合っていますと、私も気が長くなりました。言葉もゆっくり話します。言葉がわからないと、ジェスチャーで伝えます。上手く伝わると私も嬉しいです。
最近は「お困り」の高齢者の人を見ると「さっと」体が反応し、サポートをすることが張著なくできる人になりました。それは毎日両親に鍛えられてきたからです。認知症の母に指導されてきたからであると思います。
ですので母には父(99歳で他界)を超え、100歳まで生存していただきたいと思います。あと6年はあります。わたしも成長しないといけないと思いました。
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