「優しいライオン やなせたかし先生からの贈り物」を読んで
近くの下知図書館で「優しいライオン やなせたかし先生からの贈り物」(小手鞠ルイ・著・講談社・2015年刊)を読みました。
2025年4月から、やませたかしさんと暢さん夫婦をモデルにした連ぞkジュテレビ小説「あんぱん」を放映時はBSと総合で毎朝2回視聴しています。それで啓発されたのか、珍しくこのともろ図書館で本を借り、それもやなせたかしさん関連が多くなりました。
今回の小手鞠るいさんも、やなせたかしさんが「アンパンマン」で大ブレークする前に「詩とメルヘン」で多大な影響を受けた人のようです。「あんぱん」の脚本家の中園マリさんも小学生時代から、やなせたかしさんと文通していたといます。
大ブレークする前から、作家活動や詩人、脚本家などとして活躍されている多くの女性たちに、やなせたかしさんが影響を与えていたことがあらためて理解することが出来ました。
小手鞠さんも、やなせたかしさんの詩を引用し、影響をうけたこと、ご自身の人生の節目で、こうだった、ああだったたとしつこく人生体験を書かれています。
とても読みやすい文章でした。漫画家だけでなく、詩人として文学者としてのやなせたかしさんが小手鞠るいさんには大きな存在であり、対話の相手でもありました。
引用されたやなせたかしさんの詩でとても印象の残った作品がありました。
母とのわかれ
ぼくらはある日
母と別れた
ぼくらは身体が弱いから
よくなるまで
医者をしている伯父の家に
あずかってもらう
と母にいわれた
「おじさんのいうことをよくきいて
はやくよくなるのよ
お母さんはすぐに迎えにきますからね。」
母はそういった
母は正装して
白いパラソルをさしていた
秋のはじめのころだったかなあ
ぼくと弟は
素直に信じた
そして母をおくっていった
母のパラソルは
蝶のように
麦畑の中を遠ざかっていった
母は何度かふりかえった
ぼくらはそのたびに
手をふった
「あなたのお母さんは
わるいひとや
こんなかわいい子供をすてて
再婚するなんて」
しかし
ぼくらは信じた
母を信じた
本当のことがうすうす
わかりかけてきた頃になっても
ぼくらはず-っと信じていた
そして早く丈夫になろうと
冷水まさつをして
風邪を引いた
「おとうとものがたり」所収
小出鞠さんは「やなせ先生のすべての詩に宿る『悲しみ』の原点が、この詩にあるように、私には思えてならない。
先生の「人間なんてさみしいね」も「マチガイだったらよかったね」もここから生まれてきたのではないだろうか。」(P24「第1章 あこがれよ なかよくしよう-裏町ぐらしの下積み時代」)
この詩の情景は「あんぱん」でも強く印象に残っています。あでやかな着物を着たお母さんが白いパラソルを差して、くるくる回しながら後ろをふるいかえることもなく、さっそう遠ざかっていきました。脚本家も意識したのでしょう。
この小手鞠さんの著作は2015年に書かれています。やなせたかしさんは2013年に94歳でご逝去されています。私等は「あんぱん」のドラマで印象を受けました。
確かにやなせ隆さんの「原点」の1つなんでしょう。そう思いました。なるほどと思いました。
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