
図書館で「マルクス・リバイバル・キーワードと新解釈』(マルチェロ・ムスト・著・斎藤幸平・監訳、佐々木隆治・監訳・2025年刊・地平社)をようやく読み切りました。2週間の貸し出し期限では読み切れず、リクエストががないことを図書館で確認し3回貸し出しを延長してようやく読みました。
驚いたのは590ページもある書籍。編著者は1976年生まれの社会学教授。50歳。
監訳者は39歳と52歳の大学教授。私の大学入学当時も「初期マルクス」の研究が日本で盛んでした。もう53年も前のことです。
マルクスの初期の著作と言えば「へ―ゲル法哲学批判」「ドイツ・イデオロギー」「フォイエル・バッハ論」「経済学・哲学草稿」「哲学の貧困」「フランスの内乱」「共産党宣言」などでした。

マルクスの巨大な概念構築のために、大陸の哲学や社会思想の読みこなし、後年イギリスへ渡ってから、当時の産業先進国のイギリスの経済学を丹念に分析し、資本論研究につながっていきました。
その程度のことは、学生時代に「現代の理論社」等の雑誌などで読んでいました。しかし当時の日本の社会は「連合赤軍事件」(1972年2月)、早稲田大学での川口大三郎さんのリンチ殺人事件(1072年11月)のあとの新左翼セクト同士の際現のない内ゲバ殺人の連鎖が無限に継続する暗黒の時代が続きました。
http://dokodemo.cocolog-nifty.com/blog/cat21222778/index.html (連合赤軍と新自由主義の総括)
田舎育ちの「早熟な政治少年」は、連合赤軍や内ゲバ殺人の巨大な渦の外周をぐるぐる回されて「50年間も」暗闇のトンネルに閉じ込められてうじうじしていました。転機は2024年に「重信房子のいた時代:(油井りょう子・著・絶版)と「彼は早稲田で死んだ」( 樋田毅・著・文藝春秋刊)を精読して、50年の呪縛から解放されました。

http://dokodemo.cocolog-nifty.com/blog/2024/06/post-b83a12.html (「重信房子がいた時代」を読んで)
http://dokodemo.cocolog-nifty.com/blog/2024/06/post-a3dfc5.html (「彼は早稲田で死んだ」を読んで)
自分が50年暗いトンネルの中にいた時代に生まれた若い学者(子供世代の知識人たち)が「マルクス・リバイバル」なる新しい概念でのマルクス像を提示していました。
マルクスの概念に従い22の項目別に記述があります。
「資本主義」「共産主義」「民主主義」「プロレタリアート」「階級闘争」「政治組織」「革命」「労働」「資本と時間制」「エコロジー」「ジェンダー平等」「ナショナリズム」「移住」「植民地主義」「国家」「グローバル化」「戦争と国際関係」「宗教」「教育」「芸術」「テクノロジーと科学」「マルクス主義」でした。従来型のマルクス研究ではとりあげないテーマで学識者がコメントをしています。
マルクスの著作をもとに、現代社会を各著者なりに「アップデート」して書いてありました。わからん項目が大半でしたが、読みごたえがありました。
私は真面目にマルクスの著作(資本論など)を読み込んでいませんので、的外れな感想ですが、これはと思う部位を書きました。学生時代は「連合赤軍」と「内ゲバ殺人」の悪影響を強く受けた人間です。ほとんどの人達が無関心な問題でしょうが、50年間もうじうじと悩んでいましたから猶更です。22項のうち「政治組織」の問題が最も関心がありました。
「政治組織」(ピーター・ヒューディス)(P175)
「マルクスの組織概念の基礎は、早くも1843年にはすでに見ることができる。」(P175)
「レーニンはマルクス主義の歴史の中で立場を確立したが、彼の組織概念(中略)は、とりわけ大衆に代わって権力を独占する一党独裁主義国家を推し進めて点で、きわめて自滅的なものであった。(中略)

労働者階級ではなく、労働者階級の名において支配すると訴える知的エリートに指導された単一の政党による権力の独占が、ソ連やその他のスターリン主義国家において、歴史のおける最も抑圧的な体制を準備した。」(P195)
「カール・マルクスは、生涯を通して革命組織に積極的に関与し、そこに参画しながら彼がどのような寄与をしたのかは、彼の数多の仕事の中でも最も議論されてこなかった問題の一つである。」(P175)
「一世紀が経ってみて、理論と実践の切り離しがどれだけの存在がもたらしたかは、いまや明らかである。いまこそ、マルクスの「政治的な」貢献、つまりは政治組織への貢献を再検討するときである。」(P196)
マルクスの生存中に「プロレタリアートの党は、職業革命家たちに小さな集合からなされなければならないというブランキの見解を認めませんでした。
しかしマルクスの没後には、マルクスの概念とは別物の党組織論が台頭し、大衆に代わり権力を独占する一党独裁国家を推し進めた点ではレーニンの間違い、スターリンの犯罪性は明らかです。マルクスの組織論概念とは別物でした。
わたしが覚えているマルクスの概念は「1人の自由な発展が万人の発展となりうる新しい共同体(組織)」でした。
一党独裁的な政党やセクトなどが、いくらマルクスの考え方の素晴らしさ、ユニークさを説いても、実現すべき党組織が個人の尊厳を限りなく無視する独裁政党故に何の説得力もありません。世界の多くで「いわゆる左翼政党」が退潮していますが。組織論がまちがっているから大衆は、見抜いて支持をしないと思われます。多くの既成左翼は気がついていないようですね。


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