「暗黒土佐」ー高橋玄監督がブログで指摘
社会派映画「ポチの告白が、3月13日に高知市あたご劇場で上映されたことは、ブログ記事でレポートさせていただきました。
その高橋玄監督は、高知での出来事をご自身のブログ「乱暴者の世界」で書かれていました。
44歳と私より1回り以上も若い映画人。「過激派体験」も全然ないのに、とっても過激でワイルドな文章です。一読下さい。
高橋玄監督の映画作品や、行動については、あまりに本質をついているためか、日本では報道されることはほとんどありません。ですので、高知の上映会についてのこの一文をブログから全文引用させていただきます。でひご一読ください。
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引用開始
行きも朝9時の飛行機だったが
帰路は、それより早い7時30分の便で高知から舞い戻る。
昨日13日は、
高知市愛宕町の「あたご劇場」で『ポチの告白』が3回上映された。
どの回も8割がたの動員で、
今回、上映を主催してくれた小夏の映画会・田辺さんや
高知白バイ事件という日本史に残る官製犯罪の被害者・片岡さんの支援会のみなさんが
奔走してくれて成功した。
映画の作り手にとって
映画が、このように現実の感情や運動とリンクすることは
最高の評価であるから嬉しい。
上映の合間、2回の舞台スピーチには
飛び入りで、これまた最高最強のゲストが駆けつけてくれた。
(4天王揃い踏み。左から仙波敏郎さん。寺澤有さん。高橋玄さん。主催者の田辺浩三さん。マイクで話されているのが仙波敏郎さんです。舞台挨拶の様子です。2010年3月13日高知市あたご劇場)
わが陣営、寺澤有は、いつものように温和な語り口ながら
完全警察否定で司会を務めてくれたが、共演者が凄い。
まず、現職警官裏金告発の仙波敏郎氏。
この人の凄まじい半生は、
講談社から昨年出版された『現職警官「裏金」内部告発』に詳しいので
未読の人は必ず読むべし。
すでに3刷になっている、ベストセラーでもある。
日本の全警察官を「ポチ」と断定する私だが(事実だから)、
唯一、この仙波敏郎だけは例外、というか、
まさに現代日本に稀少の正真正銘の「義」の実践者なのである。
その仙波さんは、警官として40年以上、
日本の警察機構の「全員」が手を染めている「裏金」犯罪への加担を
ただひとり拒否し続けた人物で、
それゆえ、この人の解説には誰をも黙らせる圧倒的な力がある。
『ポチの告白』を観た観客の少なからずが
「いくらなんでも、これはフィクションだろう」
「警察を敵視する、ゆがんだ高橋や寺澤の倒錯戦術」といった
実に「甘ったれた」感想を抱くようなのだが、
この日も、仙波さんは上映後のスピーチで・・・
「この映画に描かれていることは、すべて事実で、現実は映画以上にひどいのです。
監督や寺澤さんのお人柄なのか、警察の実態を非常に上品に映画にされている。
日本の警察官、現職25万人、退職OB20万人のすべて・・・私を除いて全員が犯罪者です。
昨年まで40年以上、愛媛県警現職警官をまっとうした私だから言える」
・・・と、カタギの客にはメガトン級のパンチ。
実際、彼の告発内容は真実だからこそ
警察は、彼の著書にも発言に対しても名誉毀損を訴えられない。
格は違うけれども、私が日本映画界でやっていることと同じなので
私と仙波さんは気が合うし仲がいい。
私が学んだ芦原空手の同門先輩でもある。
そのうえ、仙波さんは、かなりの男前で話が巧い。
プロの司会者にだって、ここまで人に伝わる話術を持つ人材はなかなかいない。
まだ仙波さんを体験したことがない人は
まず著書を読んで、そのあと講演を聞きに行けばわかる。
仙波さんが本物の義人であることは
彼が講演活動で、カネを受け取らないことにも明らかだ。
彼の支持者たちが恐縮して「無理やり」交通費を持たせるくらいだ。
警察内部告発者というだけでなく、
こんな日本人を、私は仙波さんの他には一人しか知らない(それが私の育ての親父だ)。
おれだって、ついつい貰っちゃうもんなあ、講演料とか。
こんなエピソードを仙波さん自身から聞いた。
DNA鑑定による再審で有名になった足利事件の冤罪被害者・菅家さんに
現職時代の仙波さんが「警察官として」謝罪したことがあった。
すると菅家さんは「仙波さんだけには謝って欲しくない」と言ったという。
仙波さんも「やはり、おれが裏金告発をしたといっても現職警官だからなのか?」と思っていたのだが
実は後年、菅家さんはべつの人に
「日本の全警察官のなかで仙波さんだけが本物の警察官だからだ」と語ったというのである。
だから仙波さんには、なんと85名の弁護団がついている。
こういう人物が『ポチの告白』を絶賛してくれるだけで
映画屋としては光栄だ。
映画は、そこで描いた分野の現実の住人から「ウソだ」と言われたら、もう価値はないからだ。
(寺沢氏と高橋監督の舞台挨拶。2010年3月13日。高知市あたご劇場)
さらに、白バイ事件被害者の当事者・片岡晴彦氏。
今回、高知県警や、私に突っかかってきた高知新聞社が
もっとも忌避したかったことは
『ポチの告白』が、高知の暗黒史の頂点たる高知白バイ事件を市民に追認させ刺激することであった。
この前回のブログでは
上映前だったので、戦略として私もバランス感覚を装って書いたのだが
私が偽新聞記者に共鳴するような「ねんねの坊や」だと思ったか、高知新聞。
高知新聞は、少なくとも高知白バイ事件に関しては
完全に高知ポチ=高知県警に食い扶持を保障して貰うことと引き換えに
ジャーナリストとしての魂も実務も売り渡した「乞食」であることが明白である。
おれに偉そうに言及した、
高知新聞社・社会部副部長記者の石井君よ。
憶測も豚ソクもねえよ。
君の言動それ自体が、警察のイヌだということを自ら露呈していることに気がつかねえのか?
石井君の弁によれば
私のブログで高知新聞社記者たちが「映画に期待していたのに、失望した」と言っているらしいが
諸君らなどに失望されるなら、自分の正しさの証明になるので気分が良い。
だいたいが、私を取材した石井君自身、
『ポチの告白』も観ていなければ、私についての基礎情報すら調べてもいない。
「高橋程度の経歴など調べる道理もない」というならば、
私のブログだけには、ずいぶんと過剰反応したものだ。
普通、それだけ自分の神経を逆なでした相手なら、「ググッて」データくらいは取るもんじゃないの?
仮にも25年間映画屋をやっている私に「デビューはいつですか?」などと質問するレヴェルで
社会部副部長になれるのが高知新聞なのかね。
つまり、高知新聞社・社会部副部長たる石井君は
「自尊心が傷つけられたことと、その反撃だけに腐心して、相対的な判断などどうでもいい」とする人格だということである。
もしくは、高知県警のスパイであることを否定したくてか?
取材と称した「警察のための情報収集」であることを粉飾するためにか?
ここまで言われて黙ってる法もねえよな、石井副部長。
堂々と高知新聞紙面を使って反論するなり、名誉毀損訴訟を起こすがいいぜ。
君の言うとおり、幼稚で浅学で言葉が汚くて上から目線ですまんね。
でも、ジャーナリズムを騙る乞食よりはマシだぜ。
おれに面と向かって吼えたのだから
遠慮なく君の自称・新聞記者とやらの息の根を止めさせてもらう(あ、もちろん社会的かつ合法的にな)。
あの場で「このことはホンマに言わんといて下さい」と寺澤君に懇願した内容でも公開するか?
この問題については、後日に詳細を譲る。
石井君よ、今夜は震えて眠れ(小説「犯人に告ぐ」より)。
おれは巳年生まれで執念深いんでな。
とにかく「高知白バイ事件」の被害者・片岡さんの半生も
なんというのか、人々に官製犯罪の殲滅を主張することが
彼が神から与えられた宿命であるかというほどのドラマに満ちている。
事件と片岡さんについては
KSB瀬戸内海放送記者・山下洋平氏が著した『あの時、バスは止まっていた/高知「白バイ事件衝突死」の闇』を
必読のこと(意外にもソフトバンク・クリエイティヴからの出版)。
その片岡さんも『ポチの告白』を観て「涙が出た」と言ってくれた。
映画の主人公である悪徳刑事とは立場は違うのだが
「警察、検察、裁判所、報道・・・みんなでひとりの人生を抹殺したんだ」というメッセージは
まさに片岡さん自身に反映されるからだろう。
彼の存在のリアリティは、当日劇場にいた観客の全員に伝わったはずだ(高知県警の偵察係はべつとして)。
さらに、片岡さんの再審請求を担当する弁護士・生田暉雄さんも登壇スピーチ。
大阪高等裁判所判事を22年務めた人である。
最高裁判所の裏金、日本の司法制度の違法性を公表している生田さんの証言は
タレント弁護士とやらの本村健太郎による
「この映画はデタラメだ。裁判官が警察の脅迫で判決を変えるなどあり得ない」なる『ポチの告白』批判を
あっさりと無効にする。
これについては、生田さんの著書『裁判が日本を変える!』(日本評論社刊)を必読のこと。
仙波さん同様、生田弁護士の告発が事実無根であるなら
法務省は生田さんを名誉毀損で訴えて然るべきだが、
法務省はこの3年間、彼を無視しているだけである。
こんなメンツが一堂に会して、なおかつ観客が大入りなのだから
高知県警も気が気でないだろう。
用もないのに、あたご劇場の前を何度もパトカーが通り過ぎる。
暇なんだな(笑)。
で、やっとここからが本題なのだが(今日は長いよ)
私は今回の訪問で、高知がまさに「暗黒土佐」になり下がったのだと痛感した。
どういうことか。
上映が終わって
高知白バイ事件被害者・片岡さん支援者の人たちと打ち上げ会場に向かうタクシーに乗ったときのこと。
支援者がタクシー運転手に
「白バイ事件は知っちゅう?(土佐弁)」と水を向けると
運転手は「ああ、運転手業界で知らない人はいないでしょう。国家権力を相手するのも難しいね」と言う。
しかし、「あの片岡さんゆうのは、まだ刑務所やが?」と続く。
つまり、誰もが知っている事件でありながら
「地元のメディアが報道をしていない」のである。
先の高知新聞社が強弁するように
「白バイ事件を隠蔽する意図などない」と言うならば
被害当事者の片岡さんの「その後」を克明に報じてこそ真である。
悪いが、こんな南国の片田舎で、
これほど凶悪な官製犯罪事件もまたとないのであるから
土佐9割が購読するという高知新聞が
この問題を書き続けないならば、逆説的に「県警の情報操作」に尻尾を振って従うポチだということである。
また、タクシー運転手も
この問題で共闘すれば、県警の意趣返しで
可罰的違法性(厳密には違法だが、社会通念上、取り締まる猶予を生じる軽微な罪)を超える
駐停車禁止で仕事を奪われることを知っているから、
白バイ事件を知っていながら沈黙する。
当の片岡さんは、プロの運転手だったわけで
最も身近に支援すべき運転手業界が、県警の横暴を恐れて「くわばら、くわばら」と下を向く。
この現状を「暗黒化」と言わずになんと言うのだ?
上映後の打ち上げには、地元の不良青年たちも参席した。
馬鹿にする意味ではないけど、この2010年、ソリの入ったパーマ・リーゼントは
たぶん、東京のスラム・足立区でもお目にかかれない。
こういう若者を見ていると、土佐にも希望があると思える。
みんな、イタズラ小僧だろうけど、眼がきれいだからだ。
公平に見たところ、
高知白バイ事件では、これを巡って様々な立場の人間の思惑が交錯しているようだ。
しかし、片岡さん自身と彼の家族、
そして「まだ社会的な立場を確立しない若者」こそが、
現在の暗黒土佐に南国の陽を取り戻す原動力になる。
リーゼント君、とにかくさ「大人になったがために、生き辛くなる世の中」なんだよ、いまの日本は。
だから、おまえには一生、そのリーゼントを貫いて欲しいぜよ。
・・・あ、ごめん、「大人」で高知新聞社・社会部副部長の石井君、
君が主役なのに話がそれちゃって。
君とのやり取りは後日、ここで公表するね。
まさか「そんなことは言っていない」とは言わないでな。
新聞記者なら、おれがICレコーダーくらい持ってないとは、思ってないよね?
石井君、おれが君を信用するのは君の先輩・Y氏同様、君が高知新聞社を辞めて他社に移ったときだ。
以上引用終り。
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「暗黒土佐」という表現も凄い。
高橋玄監督のブログに登場する高知新聞社会部副部長とのやり取りについては、当日の上映前に、両者の応酬があったようです。その経緯を書かれている監督のブログ記事です。
上映前に高知新聞社会部とバトルをしていたようですね。そして上映会後の後日談も書かれています。
こちらは「食後のデザート」というものでしょうか。
高橋玄監督の行動や映画、ブログは「メディア・リテラシー」の生きた見本というところでしょう。
公正・中立なはずの権力機構や報道機関がそうでないとしたら。
戦前の日本や、1989年頃までの共産国ではまさにそうでした。
今の中国もまさにこの事態。Googleは中国から撤退して正解でした。
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